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75.事情聴取です!

「さぁ、ドーンと話してもらうわよ!」

 昼休みになった途端、お弁当を持って音楽室に連れてこられたわたし達。朝の続きらしい……。

「えー……もう大体話したからいいじゃん!」

「まだいろいろ聞きたいことがあるの!」

 聞きたいことって桐崎くんに対してだけじゃないの?わたし、関係なくない?なんてこと思っちゃひどいか。

「じゃあ質問してくれたらちゃんと答えることにすればいいか?」

「さすが桐崎くん!分かってるー♪」

 ほら!やっぱり桐崎くんだけじゃん!わたしは関係ないって!もっと言えば加賀美くんと麻由も連れてきた意味でしょ!紗弥が直接桐崎くんと話して聞けば良かったのに!

「それじゃあ早速……なんで楠木美嘉って子とキスもどきなんてしたの!?その理由を話してもらおうじゃないの!」

 いきなりそこぶっこんでくるかフツー!?確かにさっき微妙なところで終わっちゃったけどさ!

「あー……。それはその……美嘉のストーカーが俺達のあとをついてきたみたいで追い払うために見せつけようかってなってさ……。さすがにキスしてるように見せれば逃げるかなーなんて思ってキスもどきを……」

「つまり……寸止め?」

「寸止めというか間に花びらを挟んだだけ」

「あー……そういうこと」

 まさかそれがわたしのアドリブから生まれたアイデアとは夢にも思わないだろうね。

「で、うちらはそれをたまたま目撃したってわけね」

「紛らわしい……。あの時、本当に怒ったんだから!どんだけ乃愛を傷つけたと――」

「まぁまぁ!確かにあの時は少しいや、かなり傷ついたけど今はこうなってるわけだし……」

 これ以上2人が口を開けば愚痴が始まると思って無理矢理話を押さえ込もうとした。けどそれはある意味逆効果だったらしい。

「あの時は悪かったって本当に思ってるよ……。だからもう乃愛さんのこと傷つけない。ちゃんと大切にする」

 桐崎くんはわたしの頭を撫でながら言った。それだけでわたしは恥ずかしくなり顔が赤くなった。紗弥と麻由はそんなわたし達を見て騒ぎ出した。

「きゃーっ!桐崎くんイケメン!」

「今5人しかいないからってよくもまぁそんな大胆なことが出来ますね!」

「お前さぁ……昼間っからいちゃつくなよ!」

 加賀美くんはそんなわたし達を見て桐崎くんを蹴った。

「痛っ!少しは手加減しろよ……」

「リア充にはこれくらいでも手加減した方だ!」

「うわっ!差別すんなし!」

「ヒロくん、一応ご飯中だから暴れないで……」

 ほっとくと止まらないような気がしたのか、麻由が2人を止めにかかった。にしても桐崎くんは一体なにがしたいんだ……。みんながいる前なのにこんなこと言うなんて……。

「愛されてるねー乃愛」

「えっ?あっ、えっと……」

「顔真っ赤にしちゃって可愛いなぁ!」

 次の標的はわたしか。桐崎くんは未だに加賀美くんと言い合ってるけどね。

「そろそろ桐崎くんに聞きたいことあるから話戻していい?」

「まだあんの!?」

「もちろん!それじゃあ質問。なんで告る前に事情を話さなかったの?」

 一瞬ドキッとした。だって告白したあとに美嘉ちゃんとの事情を教えてもらったのはわたしが一時忘れていたからだもん。

「いや、ちゃんと事情を話してから告るつもりだったよ!?」

「じゃあなんでよ!」

「あっ、それはわたしが悪いの……」

 だから正直に話してしまう。桐崎くんが悪いことはないもん。

「えっ?なんで?」

「だからあのね……」

「話があると呼び出したのは俺だけど乃愛さんも俺に話があったみたいなんだ。本当なら事情を話してから告白するつもりだったけど、乃愛さんが聞いてほしいことがあるって言ってたから乃愛さんの話を先に聞こうと思ったんだ」

 正しく言うと桐崎くんと会うのは今日の放課後のはずだった。でも昨日運良く桐崎くんがわたしと加賀美くんが話していた公園に入ってきたから言ってしまった。言おうと決心したちょうどその時に桐崎くんを見つけてしまって言いたくて言いたくて仕方がなかったんだもん。

「そしたら乃愛さんに先に言われちゃったから告ったあとに事情を話したんだ」

「つまり、悪いのはわたしです……」

「まぁ……それなら仕方ないね」

「っておい!俺と乃愛さんで扱いが違うのはなんでだ!?」

「だって乃愛だもん。それに乃愛から言ったのならそれは称賛に値するよ?この男子苦手な乃愛が好きな人ができて誰にも言わず自分から告白したんだもん。だから事情を話すのが告ったあとだった理由は乃愛が原因なら乃愛のことは責めない」

「あ、もし桐崎くんが本当は言わないつもりだった、なんてことだったら紗弥はマジ切れだったかもね。紗弥の逆鱗に触れたら大変なことになるからよかったね」

 麻由の言うことは正しい。紗弥の逆鱗に触れたら怒りがおさまるまで近づけないほど恐ろしく大変なことになる。……だから紗弥には逆らえない。

 そんな時、廊下で男子の騒ぎ声が聞こえた。

「桐崎どこだー!」

「加賀美から話は聞いた!詳しいこと教えろよー!」

 その言葉を聞いた瞬間、わたし達の視線は桐崎くんに向かった。

「お呼びらしいですよ?桐崎くん」

「加賀美……お前なぁ……」

「ごめん、ついうっかり!」

 加賀美は満面の笑みで言った。うっかり感0。

「なんでお前はこうすぐ……!あー、もういい……。とりあえずあいつら黙らせてくる……」

「いってらー!」

 加賀美はニコニコしながら桐崎くんに手を振った。

「お前もくるんだよ!」

「えー!なんで!?」

「原因がお前だからだ!」

 桐崎くんは加賀美の腕を掴んで無理矢理連れていった。

「あーもうめんどくせぇ!」

 加賀美は諦めたようにすたすたと歩きだし、音楽室を出てからドアを閉めた。

「いたー!桐崎!」

「詳しいこと聞くまで帰さねぇからな!」

 廊下での声が中まで聞こえるってどんだけ騒いでいるの……。これだから男子は……。

「まぁ3人になったわけだし、男子がいた前では言いづらかった話でもしようか」

 と紗弥が仕切り直した。

「えっ!?まだ続くの!?」

『もちろん』

 すると紗弥と麻由はニコニコと怪しげな笑みを浮かべて言った。

『次はキスだね!』

 ……キス?唇と唇のキスのことだよね?それをわたしと桐崎くんが……?

「ちょっ……えっ!?無理無理!早すぎでしょ!」

「なに言ってんの乃愛!高校生なんだから早くないって!」

「そ、そうは言っても……」

「それに分かってる?乃愛が無理と言っても桐崎くんはしたいと思ってるかもしれないじゃん」

「えぇっ!?」

 そんなこと全く考えていなかった……。だって付き合い始めたのは昨日だもん。それなのにもうキスのこと考えるのはいくらなんでも早い気が……。

「あのね、桐崎くんは17、8歳の男子高校生だよ?付き合ってるんだからそれなりのことはしたいって思ってるはずだよ?男子は理性より本能が上回ってるんだから」

「り、理性より本能……?」

 なんとなく分かるような気がするようでしないような。マンガや小説でも確かに男子は理性より本能の方が強い。どうして男子ってそうなの……!?

「そうだよ。だから覚悟はしておきなさい」

「そんなぁ……。やだよ!絶対しないもん!」

『それはおかしいだろ!』

 2人してつっこまなくてもいいのに……。

「付き合うってことは手繋いだりハグしたりキスしたりなんてフツーなんだからそんなこと言わないの!」

「それと、あまりそんなこと言うと桐崎くん悲しむよ?乃愛に拒絶されたと思って」

「そ、そこまでなる……?」

「なるよ。桐崎くんは乃愛のこと大切にするって言ってたからきっと乃愛が嫌がることはしないと思う。でも桐崎くんだって男だよ?したいことだってあるじゃない。最初は我慢してても後々辛くなるはず」

「そ、それは……」

 なにも言えなかった。心のどこかで分かっていたもん。昨日の電話での桐崎くんの態度や発言がいつにもまして積極的だったから。

「まぁまだ先の話だと思うけどね!大丈夫、キスしたかしてないかについては聞かないから」

「で、でも……!」

「もし、本当に怖いなら桐崎くんに言うべきだね。急に身体に触れられるのは怖いとか。じゃないと流されて大変なことになるから」

「うん……」

「でも桐崎くんはそんなことするようには見えないから大丈夫かな!」

 ……いや、そこまで大丈夫ってわけではないよ?隙を見つけてわたしの頭を撫でるつもりだから。あ、もう撫でられたか。

「とにかくおめでとう。付き合えてよかったね」

「今まで散々辛い想いしてたけど報われたね乃愛!」

「……うん!」

 2人に祝福されたのが素直に嬉しかった。わたしはこの想いを、この恋を大事にするって決めたの。

「でもさー、桐崎くんって一体いつから好きだったんだろうね。なんとなく乃愛に気があるのかなぁなんて思ってはいたけどそれ以上にはならないと思ってたから驚き……」

「うちもー。だってあの桐崎くんだよ?二次元好きな人だよ?乃愛のこと好きって素振りはあまり見せなかったし……」

「でもあの時はあれ?って思わなかった?5人で出かけた時」

「あぁー、あの乃愛がナンパされた時のこと?」

 随分と好き勝手言ってくれるじゃないかお2人さん……。ぶっちゃけナンパされた時のことは忘れたいのに……。

「そうそう。真っ先に助けに行ったじゃん。それもすごく必死な顔で。あれはなにかあるなと思ったけど……」

「桐崎くんってわかりやすいようなわかりにくいような反応するよね……。どっちかはっきりしてほしいわ!」

 麻由が言ったと同時に予鈴が鳴った。ちなみに予鈴が鳴っても廊下にいる男子は騒がしいしここには桐崎くんと加賀美くんの荷物が置きっぱなし。

「これ、持ってく?」

 麻由が指をさしながら言った。

「いいじゃん。ほっとけば?」

 紗弥は冷たく言い放った。扱いが雑すぎる……。

「ほら、教室戻ろ?2人ほっといて」

「そ、そうだね……」

 桐崎くん達の荷物を見て後ろ髪を引かれる思いでわたし達は音楽室をあとにした。


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