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71.貴方が好きです!

 これは……夢?桐崎くんがわたしに好きと言ってくれるなんてすごく幸せな夢だよ。だからこれは夢なの?

「う、そ……」

「嘘じゃない。俺、嘘つくの苦手なんだ」

 桐崎くんの目を見ると確かに嘘をついているようには見えない。ということは現実だよね?わたしは夢を見ているわけじゃないんだよね?

「本当に……?」

「もちろん。これが俺の本気だ」

 わたしは思わず頭を伏せた。だってずっと期待していたんだもん。桐崎くんは気付いたらわたしのそばにいてくれていつも優しかった。心配性でわたしを落ち着かせるために頭を撫でてくれた。あんまり優しくしてくれるからもしかしたら桐崎くんもわたしのこと……ってずっと期待していたの。でもそれは勘違いって気付いた時にはすごく悲しかった。だから、だから……。桐崎くんに好きって言われたのがすごく嬉しかった。

「……はい」

「えっ?」

「返事だよ……。さっきも言ったけどわたし、桐崎くんが好き……!」

「いいの?俺で?」

「桐崎くん“で”じゃない。わたしは桐崎くん“が”いいの……!」

 そう言った途端、涙がポロポロと流れてきた。

「乃愛さん!?」

「わたし、ずっと怖くて言えなかったの……。言ってもし振られたら関係が壊れるんじゃないかと思って言えなくて……。だから、よかった……」

「……それは俺も同じだよ」

 桐崎くんはわたしのそばに来て頭を撫でてくれた。

「今までの関係が壊れてしまうなら言わないでおこうと思ったんだ。今のままでもそばにいられるならそれでいいと思った。でも、無理だったよ……。やっぱり好きって気持ちは抑えられなかったんだ」

 そうだったんだ……。桐崎くんもわたしと同じことを思っていたなんて思いもしなかった。桐崎くんはもう片方の手で自分の両目を覆った。

「涙なんて最後に流したのいつだろう……」

「えっ?」

 まさか桐崎くんも泣いてるの?声もわたしの頭を撫でる手も震えている。

「乃愛さん。俺達、彼氏彼女ってことでいいんだよな?」

「……うん!」

 桐崎くんはわたしの頭をグッと自分の方に引き寄せた。

「きゃっ!」

「嬉しいよ。乃愛さんと付き合えると思ってなかったからすごく嬉しい」

 ドキッ。なんでそんな嬉しいことを言うの?それもこんなに近い距離で。わたしも桐崎くんと付き合えると思っていなかったからすごく嬉しいの。だって桐崎くんには彼女さんが――はっ!そうだよ。桐崎くんには……。

「……ねぇ桐崎くん。美嘉ちゃんは?」

「っ!」

 桐崎くんの動きが止まった。そうだよ。桐崎くんには美嘉ちゃんがいるんだ。それなのにわたしが好きって……付き合ってくださいなんて……。

「……あー、まずはちゃんと説明しなきゃね。ちょっと座って話そうか」

「うん……」

 わたし達は近くにあったベンチに座った。

「乃愛さんには全て話すよ。いや、話すつもりだったんだ」

「うん……」

「結論から言うと、俺と美嘉は付き合ってない。美嘉はただの再従妹なんだ」

「えっ?」

 思考回路一時停止。桐崎くんと美嘉ちゃんが付き合ってない?それに2人は……。

「は、再従妹ぉぉぉ!?桐崎くんと美嘉ちゃんが!?」

「そ、そんなに驚くことか?」

「そうだよ!だって付き合ってるって言ったじゃん!それに……初詣の日、キスしてたし……」

「っ!」

 桐崎くんの息を呑む音が聞こえた。言ってから後悔した。わたし自身も思い出したくないことなのについ言ってしまった。

「……俺と美嘉はキスしてないよ」

「嘘!だってわたしちゃんと見――」

 わたしの言葉はそこで途切れた。桐崎くんの顔が近づいてきて、唇にひんやりとしたなにかが触れた。突然のことに驚きを隠せず、わたしは固まってしまった。

「これだよ」

 桐崎くんがわたしから離れてわたしに見せたのは大きめの花びら。

「あっ……」

 その花びらを見た瞬間、わたしの脳裏にはあることが浮かんだ。それは確か演劇部の合宿最終日のこと……。

「思い出した?合宿の最終日、乃愛さんが考えたアドリブの演技のキスもどき。美嘉にしたのはこれだよ」

「な、なんでわざわざそんなことを……?」

「それについては分かりづらいから最初から説明しなきゃいけない。長くなるけどいい?」

「うん」

 そして桐崎くんは話し始めた。

「実は美嘉はストーカー被害にあっていてその対策のために俺に彼氏役をしてほしいと頼んできたんだ」

「彼氏役?」

「あぁ。彼氏がいたら執拗に近づいてこないだろうと考えたらしい。実際俺が彼氏役をしてからは執拗に近づいてはこなかったんだ。でもあの日、乃愛さん達に会った日、俺がちょっと離れた時に声をかけられたらしいんだ。俺が戻ってからも何気に後をついてきていたんだ。それでそいつを追い払うために“見せつけよう”と決めたんだ。その時、合宿の時に乃愛さんがやったあれを思い出したから提案したんだ」

「て、提案……?」

「あぁ。さすがにキスしてると思ったらなんとなく居づらいだろ?だからそれを狙ってやったつもりだった。けどそれを見たのはそいつだけじゃなかった」

「わたし達……」

「そう。まさか乃愛さん達が俺らを見かけて追いかけてくるとは思わなかった。人の気配は感じたけど美嘉につきまとってるストーカーだと思ってたんだ……」

「そうだったんだ……」

「乃愛さんがその場から走り去った時の顔を見て自分を責めたよ。好きな女を傷つけて悲しませたのに追いかけることが出来なくて。……いや、追いかけるつもりだったが美嘉に止められ振り払うことができなかったんだ。最初は振り払ってでも追いかけようと思った。でも林原さんに言われたんだ。『……桐崎くん、乃愛を悲しませるようなことしたって分かってるの?』って」

 まさか紗弥がそんなことを桐崎くんに言っていたなんて……。知らなかった。紗弥はなにも言わなかったから。

「それを聞いた時、まず先に美嘉に本当のことを言おうと思った。やっぱり乃愛さんが好きなんだって。“恋人ごっこ”はもうやめようって。もちろん最初は反対された。でも彼氏役をやるにあたってある条件があったからそれを出したらなんとか了承してくれたんだ」

「条件?」

「あぁ。もし俺が本当に好きになった人が出来たら彼氏のフリはしなくていいっていう条件。まぁぶっちゃけ彼氏役を頼まれた時、既に好きだったけどね。乃愛さんのこと」

「っ!」

 な、な、な……なんてことをさらっと言ったんだこの人は!危なく聞き逃すところだった。というか彼はこんな人だったの!?

「これが俺と美嘉が付き合っていた理由とか経過、その他いろいろ。要は俺と美嘉は再従兄妹同士で付き合ってるわけでもなく、キスもしていない。つまり潔白ってわけ」

 そうは言ってもね桐崎くん。わたしの勘が正しければきっと美嘉ちゃんは桐崎くんのこと、再従兄としてじゃなく1人の異性として好きだと思うよ。桐崎くんに彼氏役を頼んだ1つの理由は再従兄だからっていうことかもしれない。だけど、本当は桐崎くんと一緒にいられるための口実だと思う。もし本当に再従兄だからって理由だけで桐崎くんに彼氏役を頼んだのなら桐崎くんが彼氏役をやめる時に反対しないはずだもん。反対したってことはやっぱりそういう感情があるからじゃないのかな?……なんて思ってはみても本人に確かめられないからそれが事実かは分からないけど。

「そっか……。ねぇ、本当にわたしでいいの?」

「あぁ。俺は乃愛さんが好きだから乃愛さん“が”いいんだ。乃愛さんとならきっといつまでも笑っていられる」

「わたしも、そう思う。桐崎くんがそばにいてくれたらきっと楽しい」

 お互い目を合わせて笑った。

「そういうわけで、これからもよろしくな。乃愛さん」

「こちらこそよろしくね。桐崎くん」

 こうしてわたしは辛くて楽しい片想いを終え、桐崎くんと付き合うことになった。

「さーて、送るよ乃愛さん」

 そう言って桐崎くんは立ち上がった。

「え、でも……」

「遠慮しなくていいから。本当に嫌なら自粛するけど……」

「嫌じゃないよ!」

 つい声が大きくなってしまった。

「あっ……」

 気付いた時にはもう遅い。あー、穴があったら入りたい気分……。

「それじゃあ送るから。行こうか?」

 桐崎くんは優しく微笑んでわたしに手を差し出した。

「……うん!」

 わたしも微笑んで桐崎くんの手を取り、重ねた。桐崎くんはわたしの手を握ってくれた。その手はとても温かくて安心できた。寒さなんて忘れてしまうほどに。


ついに両想いになった乃愛と桐崎くん!

わぁーおめでとー!(笑)

ここまでが長かった……!だからいつまでも仲良く過ごしてほしい!


2人の恋は今始まったばかりです!

これからもよろしくお願いします。


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