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7.寝顔を見ちゃいました!

 放課後、臨時の委員会があったので部活に行くのが遅くなった。しかも今日は学校の会館での練習なのにその必要なものを部室に忘れてしまった。

 これはもう真田くんにガミガミ言われ、頭を叩かれること間違いなし。でも急げばまだ頭を叩かれることはないはず!

 部室の前に立ち、ドアを勢いよく開ける。

「っ……!」

 そこでわたしが見た光景。桐崎くんが机に突っ伏して寝息を立てていた。

 思わず息を飲む。桐崎くんはいつもかけてるメガネを外していた……。ドキッとした。桐崎くんのメガネを外した姿は新鮮で……ドキドキする。なんだろう……。ドキドキするのにこの寝顔をずっと見ていたいと思うこの気持ちは。

 すやすやと眠っている桐崎くんを起こさないように静かに目的のものを探す。

「あれ?確かこの辺に置いたはずなのに……」

 いくら探しても見つからない。確かにいつもここに置いてるはずなのに。これは本格的にまずい……。真田くんにガミガミ言われ、頭を叩かれるだけじゃなく雑用にされてしまう。

「はぁ……。もうどうしよう……」

 更に周辺を探す。そしてロッカーの上に乗っていたいろいろなものを床に落とした。

「ん……」

「わっ!ヤバい……」

 桐崎くんが起きちゃったかも。

 ゆっくり後ろを振り返ると桐崎くんはまだ眠っていた。少しホッとした。

 ……ってあれ?

 わたしは桐崎くんの腕の下にあるノートに目をやった。

 これはまさか……?

 少し桐崎くんに近づいてみる。予想的中。それはわたしが必死になって探していたものだった。

 どうしよう。眠っている桐崎くんを無理やり起こしてまでノートを取るわけにはいかないし。でも持って行かないと真田くんが……。

 仕方ない。桐崎くんが目を覚ますまで待っていよう。近くにあった椅子に座って桐崎くんが起きるのを待った。


 それから少しして桐崎くんが目を覚ました。

「ん……。あ、あれ?」

 桐崎くんがメガネをかけていない姿でわたしを見る。しかもメガネをかけていないせいか少し顔を近づけて。再びドキッとした。

 決してす、好きだからとかじゃない!多分こんな近くで男子の顔を見たからだ!うん、絶対そうだ。そう思ってドキドキする気持ちを無理やり抑えた。

「お、おはよ。桐崎くん」

「き、如月さん……?」

 桐崎くんは少し顔を話してメガネをかけた。……うん。いつもの桐崎くんだ。

「あっご、ごめん!今顔がすごく近くに……」

「だ、大丈夫!気にしないで……ね」

 とか言ってるけど気にしてるのはわたし。気にしないなんてもう無理!忘れたくても忘れられないよ!顔があんなに近くにあったんだから……。

「き、如月さんはどうしてここに?今日は別の場所のはずだけど……」

「持って行かなきゃいけないものを部室に忘れたの。それを取りにきたんだけど……」

「あっ、もしかしてこれ?」

 桐崎くんは自分の腕の下にあったノートを手に取ってわたしに見せた。

「うん。それ。桐崎くんが気持ちよさそうに寝てたから起きるまで待ってたの」

「うわぁ……ごめん。なんか如月さんに迷惑かけてばっかだな、俺」

「だ、大丈夫だから!とりあえず会館に行こ?真田くんに怒られるし……」

「しまった。真田のことすっかり忘れてた……」

「……眠ってたしね」

「うん……」

『……』

 沈黙が発生。ダメだ。耐えられない。

「あ、あのさ」

 沈黙を破ったのは桐崎くんだった。

「な、なに?」

「そのノートってなにが書いてあるの?」

「部誌だから活動内容とか。あと今までのシナリオとか」

「今までのシナリオ……。如月さん、それ見せてもらってもいい?」

「別に構わないよ。桐崎くんは部員だし」

 桐崎くんにノートを渡すと桐崎くんはすぐノートを開いた。そしてパラパラとページをめくり、シナリオのページで手を止めた。

「シナリオってこんな感じなんだ……。俺のなんてまだまだだな……」

 桐崎くんは呟くように言った。

「これ……真田が書いてたのとかある?」

「あるよ。えっと……これ。結構シリアスな内容だった。わたしは何気に気に入ってるかな」

「……!こんなの書いてたのか。すごいな真田は」

「桐崎くんはどうなの?」

「全然ダメ。ネタが浮かばない。これはもう真田に任せようかな……」

 諦めかけた目をして桐崎くんは言った。桐崎くんのこんな顔を見るのは初めて。

「桐崎くん……」

「さっ、そろそろ行こっか。真田に説教されたくないし」

「そ、そうだね……」

 今行っても説教されることに変わりはないけどね。なんか、桐崎くんの調子が少し変。いつもの桐崎くんとなにかが違う。なにが違うんだろう……。


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