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66.加賀美くんの話とは?

 冬休みが終わり、再び学校が始まった。

「あけおめ~」

「あけおめ!」

 クラスではいろんなところから新年のあいさつが聞こえる。

「危なかった~!遅刻するかと思った……」

 麻由は遅刻ギリギリで教室に入ってきた。

「おはよう麻由。本当ギリギリだね……」

「いや~宿題が終わらなくて。ここ最近ずっと徹夜」

「それで?宿題は?」

「終わってません!」

「おいっ!」

 やっぱりみんなで水族館に行くのは冬休み始まったばかりの頃で正解だと改めて思った。麻由がこんな感じで来れなくなってたら大変だもん。いろいろと……。

「おはよう」

 麻由と話していると加賀美くんに声をかけられた。

「あ、おはよう加賀美くん」

「おはようヒロくん!あれ?桐崎くんは?」

「キリなら多分ギリギリに――」

 加賀美くんがそこまで言ったとき教室の後ろのドアが開いた。

「危ねぇ危ねぇ……。遅刻するとこだった」

 そこにいたのはただいま話題になっていた桐崎くん。

「新年早々遅刻ギリギリかよお前!なにやってんだよ!」

 加賀美くんはいつものようなノリで桐崎くんの腕を叩いた。

「いてぇな加賀美……。いや、宿題終わんなくて徹夜してたら寝坊した」

 あれ?どこかで聞いたようなセリフ……。わたしと加賀美くんはほぼ同時に麻由を見た。

「えっ?なに?うち、なんかやった?」

「いや、確か池波さんも宿題終わってないんだよなって思って……」

「うん、そうだよ……ってなんで知ってるの!?」

「さっきの2人の会話聞こえたから」

「あ、そういうこと……」

「そうそう、乃愛さん」

 加賀美くんはわたしに近寄って耳元で言った。

「終礼終わったあと少し時間ズラして行くから待ってて?」

 わたしはこくりと首を縦に振った。そしてちょうどその時担任が来て朝のHRが始まった。


 ***


 終礼が終わって下校時間になった。

「乃愛ー麻由ーどっかでお昼食べていかない?」

 紗弥がわたし達にそう提案した。

「そうだね~!」

「あ、ごめん。わたし用事あるんだ。今日は遠慮しとくよ」

「そっか、残念……」

 本当は紗弥と麻由と一緒にお昼食べに行きたい。でも約束は約束。行くしかない。話があるならちゃんと聞くしかない。それがどんな内容であれ……。

「じゃあまた明日ね!」

「うん!バイバイ!」

 紗弥と麻由は一緒に教室から出て行った。わたしはと言うと荷物を整理してから加賀美くんに指定された公園に向かった。



 公園には確かに誰もいなかった。学校の方からはいろんな人の声がするけどこっち方面に来る人はいなかった。

「ごめん乃愛さん。待った?」

 少し遅れて加賀美くんがやってきた。

「大丈夫だよ。わたしもついさっき来たから」

「そっか。よかった」

 急いで来たのか、加賀美くんは息が上がっていた。

「それで話なんだけどさ」

「うん。なに?」

 すると加賀美くんは深呼吸をした。そして――。


「乃愛さんが好きだ。俺と付き合ってほしい」


 はっきりした口調で加賀美くんは言った。

「……えっ?」

 もしかしてわたし、加賀美くんに告白されたの?いや、待てよ。好きというのは友達としての好きであってそういうことじゃないのでは?いやいや、だったら付き合ってほしいなんて言わないか。最早わたしの頭の中はパンク状態。

「……一応俺、真剣に告白したつもりなんだけどな」

「あ、あのわたし……!その……」

 なんて言えばいいのだろう。まさか加賀美くんがわたしに対して恋愛感情を抱いていたとは思わなかったからどう答えればいいのか分からない。でも1つだけ、言えることがある。

「ごめんなさい……。わ、わたし、好きな人がいるの……」

「うん。知ってるよ。キリでしょ?」

「えっ!?」

 なんで加賀美くんが知ってるの!?わたしが桐崎くんのこと好きって教えたのは紗弥や麻由、遥奈や雪帆の他に緋華くらいなのに……。

「見てれば分かるよ。気付いたら2人の仲はすごく良くなってるしキリと一緒にいる時の乃愛さんはいつも笑顔だし。それに、キリに彼女が出来たって時、すごく悲しそうな顔をして泣いてたから」

 そっか……。加賀美くんは気付いてたんだ。わたしが桐崎くんのこと好きって。行動だけで分かるなんて加賀美くんはすごいね。もしかしたらわたしがわかりやすいだけかもしれないけど。

「だったらなんで……?」

 なんで告白したの?そうストレートに聞くのは勇気がなくて言葉を濁した。でも加賀美くんにはちゃんと伝わっていた。

「振られると分かっていても伝えたかったんだ。乃愛さんが好きだって気持ちを抑えられなくて」

 加賀美くんのその気持ちがわたしには理解出来た。わたしだって桐崎くんに彼女がいても好きって想いは抑えられなくてやっぱり伝えなきゃって思ったから。

「まぁそんなんだから振られたけど乃愛さんへの気持ちはそうすぐには消えないんだ。それでもいいなら今まで通り『友達』でいてくれるかな?」

「うん。もちろんだよ」

 わたしは加賀美くんと今まで通り接していたい。だから、加賀美くんがそれを望むなら拒否したりはしない。

「ありがとう乃愛さん。……あ、最後に1ついいかな?」

「うん。なに?」

「俺のこと、友達として好き?」

 加賀美くんはなんてことを聞くのだろう。こんな当たり前の質問するなんて。愚問だよ加賀美くん……。

「うん。好きだよ。じゃなきゃ一緒に出かけたりしないよ?」

「そっか。ありがとう」

 そう言って加賀美くんはわたしの頭をポンポンした。桐崎くんの頭ポンポンとは少し違う。でも嫌な感じはしなかった。

「……キリにこんなことされた時、どうだった?」

「ど、どうって……!やっぱり安心したかな……。それに嬉しかった」

「そっか……」

「それと、こんなこと言ったらおかしいと思うかもしれないけど……」

「なに?」

「わたし、女の子でよかったなぁって思ったの」

 すると加賀美くんは一瞬ぽかんとした顔をしてから微笑んだ。

「そんなにキリが好きなんだね。しないの?告白」

「い、一応言うつもりなの……。振られるのは分かってるけどね」

 ……あっ。加賀美くんもこんな感じだったのかな?好きな人には好きな人がいるから振られるのは分かってるけど言いたいって思ったのかな。

「そんな乃愛さんに1ついいこと教えてあげる」

「へっ?」

「キリはね、確かに優しいけど誰にでも優しいわけじゃないんだよ?頭ポンポンしたりかなり心配するのは本当に大切と思う人や特別だと思う人だけだからね?」

「……?」

 わたしは加賀美くんがなにを言いたいのか分からなかった。桐崎くんが優しいのは分かっているけどなんでそんなことを言うのだろうか。

「だからつまり……乃愛さんはキリにとって大切な人ってことだよ」

 わたしが桐崎くんにとって大切な人……。でも大切にもいろいろある。『友達』としてなのか『女子』としてなのか。

「乃愛さんはキリに嫌われてるわけじゃない。むしろ好かれてるよ。だから大丈夫。きっと大丈夫だから自信持って。な?」

 この言い方、もしかして励まされてる?背中押してもらってる?やっぱり優しいんだね加賀美くん。断られたのにわたしの恋を後押ししてくれるなんて優しいよ。

「ありがとう加賀美くん……」

 わたしの目から涙がポロポロとこぼれた。

「泣くなよ乃愛さん。笑ってて。俺、乃愛さんの笑顔が好きなんだ」

 その言葉を聞いてわたしはグッと涙を拭い、そっと微笑んだ。

「……うん」

「話聞いてくれてありがとう。それじゃあ俺行くから」

「うん……。バイバイ」

「また明日ね。乃愛さん」

 加賀美くんは公園から出て行った。ごめんね加賀美くん。でもありがとう。背中を押してくれて。


 ***


 公園を出て少ししたところで俺はしゃがみ込んだ。やっぱり振られたか……。いや当然の結果だな。乃愛さんがキリのこと好きなのはわかっていたし。

 その時後ろに人の気配を感じた。それは俺が乃愛さんと話している時から近くにいた。

「……いつまで隠れてるつもりだよ。キリ」

「隠れてるつもりはないさ」

 振り向くとそこにはやっぱりキリがいた。

「まさか、加賀美が今日あんなところで乃愛さんに告白するとは思わなかったよ……」

 やっぱり見ていたんだなこいつ。まぁ乃愛さんと話している最中に俺と目が合ったし当然か。

「で……付き合うのか?」

「……聞くかそれ?」

「だって聞こえちまったんだよ……。乃愛さんが『うん。好きだよ。じゃなきゃ一緒に出かけたりしないよ?』って言ったのが……」

 ……はっ?そこ聞いてたのかよ?それじゃあ誤解するのも無理ねぇな。そんな不安そうな顔のキリを見て嫌がらせしたくなったのは言うまでもない。

「あー……聞こえたのか……。悪いなキリ。俺からはなにも言わない」

「そう、か……。やっぱり俺じゃ無理なのか……」

「なに言ってんだ?まだわかんねぇよ。俺、返事もらってないから」

「……はぁ?」

 不思議そんな顔で俺を見るキリ。その顔が面白くてつい笑ってしまった。

「なに笑ってんだよ加賀美!」

「あー悪い悪い。なんか面白い顔してたからつい」

「お前な……」

 なぁキリ。俺はお前に嘘をついた。本当は返事もらったんだ。そしてもちろん振られた。好きな人がいるからって。

「悪いって。笑ったお詫びに1つ教えるよ」

 だから乃愛さんの背中を押してやったんだ。お前らは間違いなく両想い。すれ違ったりして後悔させないために思わせぶりなことを乃愛さんに言って告白させる後押しをしたんだ。

「乃愛さん、好きなやついるんだ。でもその人には彼女がいる。もうとっくに別れてるのけどさ。その好きなやつってのが乃愛さんと出かけたことのあるやつで乃愛さんのことを大切だと思ってる」

 好きな人の幸せは俺の幸せ。乃愛さんが笑顔だったら俺も笑顔になれる。

「乃愛さんの好きなやつは、告っちまえば両想い間違いなしのやつなんだよ」

 乃愛さんには幸せになってほしい。いつも笑顔でいてほしい。でも俺じゃ乃愛さんを幸せにすることも笑顔にすることも出来ない。だから――。

「多分乃愛さんのことだから振られるの覚悟で告白する気だぜ?」

 俺の代わりに乃愛さんを幸せにしてやれ。いつも笑顔にしてやれ、キリ。

「……悪い加賀美。急用が出来たから帰る」

 そう言ってキリは走って行った。まだ乃愛さんが残っているだろう公園へ。

 キリ、やっぱり俺、お前には敵わねぇよ。だからなキリ。乃愛さんのこと絶対泣かすなよ。もし泣かせたりしたらもう容赦しないからな。


遂に桐崎くんが本気を出します!気持ちがコントロール出来ない。それが恋というものではないでしょうか?とか言ってみたり(笑)


そしてモテるはずなのに振られてしまった加賀美くん。どんなにモテる人に好きと言われても乃愛は桐崎くん一筋なんです。一途な気持ちは大事です。

さぁ、加賀美くんが親友のことを好きだと知らなかった麻由がこのことを知ったらどんな反応をするでしょうか。今後、男子同士の友情だけでなく女子同士の友情にも注目せねばいけませんね……。女の嫉妬は恐ろしいですから(泣)


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