61.初詣に行きましょう!
水族館デートが終わって数日が経ち、年を越した。ケータイは夜0時から鳴りっぱなし。寝ようとすると次々にメールが来て全然寝れなかった。おかげで新年早々寝不足。
「うー……。ね、眠い……」
重たい身体を無理矢理起こす。ふとケータイに目をやるとランプが点滅していた。
「あ、またメール……」
もう大体の友達からはメール来たはずだけど。一瞬桐崎くんだったらいいなと思ってメールを確認する。それを見てわたしは嬉しくなった。
〔明けましておめでとう!去年はいろいろとお世話になりました。こんな俺だけど今年もよろしく!〕
そう書かれたメールの送信者は桐崎くん。一斉送信だったからこれを受け取ったのはわたしだけじゃないって分かっている。でも男子からあけおめメールをもらうのは初めてで、それにまさか桐崎くんが一斉送信だとしてもわたしにメールを送ってくれるなんて思ってもいなかったからすごく嬉しい!だから早速わたしも桐崎くんにメールをした。
〔あけおめです!こちらこそいろいろお世話になりました。いろいろと迷惑かけるかもしれないけど今年もよろしくね!〕
メール送信完了。わたしはケータイをベッドの上に放り投げ、更に自分もベッドの上に倒れ込んだ。まさか新年からこんなに嬉しい気持ちになれるなんて思わなかった。誰かを好きになるだけでこんなにも明るい気持ちになれるなんて!恋の力は強いんだね!
そんなことを思いながら時計を見て時間を確認する。
「ヤバい!紗弥達と初詣行く約束していたんだった!」
急いでベッドから飛び上がり身支度を始めた。新年早々大慌て……。こんなんで今年は大丈夫なのかな?
***
乃愛さんから届いたメールを見て思わず顔が綻んでしまった。乃愛さんらしいすごく可愛らしい絵文字や顔文字を使っていたから。その時、ケータイの着信音が鳴った。
「はい」
《もしもしはーくん?あけましておめでとう!》
電話は美嘉からだった。いつものように明るい声で美嘉は新年の挨拶をした。
「あけましておめでとう」
《ねぇねぇ!今日予定ある?》
「いや、今のところ予定はないけど」
《本当!?じゃあ一緒に初詣行こうよ!》
「は、初詣……?」
美嘉の突然の誘いに俺は驚いた。正直初詣なんて数年前から行ってなかったからな。久々に行くのも悪くないのかななんて思ったりした。
「別にいいけど。どうせ予定ないんだし」
《やった♪じゃあ11時に待ち合わせね!》
「……どこで?」
《え、えっとー……》
「あー分かった。じゃあ俺、11時には美嘉の家に着くようにするから」
《ホント!?ありがとうはーくん!それじゃあまたあとでね》
そう言って美嘉は電話を切った。いくら休み中とは言え美嘉を1人で出歩かせるのは危ない。それにまだ俺は美嘉の彼氏なんだ。家が近いんだし迎えに行くのも当然だろう。それに、美嘉には言わなきゃいけないことが山ほどあるのだから。
***
「やっぱり人多いね~!」
わたし達は県内で一番有名な神社に初詣に来た。有名な神社だけに参拝者が多かった。
「そうだね。さっき高校の同級生だけでなく中学の同級生も見かけちゃったし……」
高校の同級生なら会っても構わないんだけど中学の同級生だけには会いたくなかった。見かけたくもなかった。
「うわー……新年早々嫌なことあったわー……」
「仕方ないじゃない。初詣だしここの神社は有名どこだし参拝者が多いのは当たり前だもん。そりゃ誰かに会うって」
「桐崎くんに会ったらテンション上がるんじゃない?」
「なっ……!」
麻由が突然そんなことを言うのでわたしは顔が熱くなるのを感じた。寒いはずなのに顔だけ熱い。
「そういえばあの日、どこまで桐崎くんと一緒だったの?バス停まで?」
麻由が言うあの日は多分みんなで水族館に行った日のことだろう。いや、それ以外は考えられないか。
「バス停までだよ。それで桐崎くんに……」
そこまで言ってハッと気付いた。散々考えた挙げ句、わたしは桐崎くんに告白することを紗弥や麻由には伝えないでもし付き合うことになったら言おうということにした。ここで言ってしまったらわたしが2人に内緒で桐崎くんに告白しようとしていることがバレてしまう。だから言うのはやめておこう。
「桐崎くんに、なに?」
でも一度途中まで言ってしまったのだから紗弥も麻由も当然気になる。ここはなんと誤魔化すべき?
「えっと……あ、また手袋貸してもらったの。手冷たかったから」
「うわー優しい!乃愛は冷え性だからよかったね!」
「キャーッ!性格イケメン!桐崎くんもやるねぇ~!」
2人は面白そうにとにかく騒いだ。騒がれるのはなんとなく嫌だが、まずなんとか乗り切っただけよかった。
「乃愛は告白とかしないの?」
ドキーッ。まさに1人で考え、1人で実行しようと思っていたことを紗弥にずばり当てられてしまった。
「し、しないよ……。今の関係がちょうどいいと思うんだ。わたし達」
「でも……」
「あ、もしだよもし!もし奇跡的にわたしと桐崎くんが付き合うことになったらちゃんと報告するから安心して」
「そっか……」
「よし、おみくじ引こうよ!」
『うん』
麻由に言われ3人でおみくじを引いた。
「ありゃー……。末吉だった……。紗弥は?」
「わたしは中吉。なんか微妙。で、乃愛はどうだったの?」
「聞いて驚け!わたしは大吉だったのだ!めっちゃ嬉しい!」
「よかったじゃん!その調子で桐崎くんに告――」
「絶対しないよ!?麻由が加賀美くんにするなら考えようかな」
「ええっ!?そんなあり!?」
「ありだよ」
わたしが笑いながら言うと麻由は顔を赤くした。なんだかさっきのわたしみたい。
「まぁするもしないも乃愛の自由だし。いいんじゃない?」
「うん。でもいつかは言うつもりだよ」
「やっぱり言うつもりなんだね。頑張れ!」
「ありがとう」
実は休み明けに言うつもりだった、なんて口が裂けても言えない。いくら紗弥と麻由でも言うわけにはいかないの。
「あ、れ……?あそこにいるのって……」
麻由が指さした先には見覚えのある顔。人混みの中でもわたしはすぐ見つけることが出来て、それでいて誰なのかすぐ分かった。
「桐崎くん……」
「ホントだ!ねぇ、行ってみようよ!」
麻由はわたしの手を引っ張って桐崎くんの元へ行こうとする。
「ちょっと待って。桐崎くんの隣にいる“女の子”って……」
『“女の子”?』
紗弥の言葉を聞いてわたしと麻由は立ち止まり再び桐崎くんを見た。桐崎くんの隣にはあの子がいた。恐らく桐崎くんの彼女であろうあの子が……。
「美嘉、ちゃん……」




