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60.水族館デート!⑧

「ねぇみんな気付いてた?もう5時過ぎているみたい」

『えっ!?』

 紗弥の言葉を聞いてわたし達は一斉にケータイや腕時計で時間を確認した。

「嘘!早っ!」

「もうそんなに経っていたんだ……」

 それもそのはず。だってゲーセンでたっぷり1時間も使ったのだから。それからみんなで本屋やら雑貨屋やらいろいろ見て回ったんだからそれくらいの時間が経っていてもおかしくはない。紗弥に言われるまで気付かなかったわたしが言える立場じゃないけど。

「わたし、6時から予定入ってるからそろそろ抜けていい?」

「あ、俺もそろそろ帰んねぇとヤバいかも」

 紗弥に続き加賀美くんも帰るようだ。だったらもう解散にするべきだろう。残ったわたし達3人で見て回るにも桐崎くんが男子1人だから気まずそうだし。

「よし、これで解散にしよっか!2人抜けちゃうんだったらみんな帰ろ!」

「そうだね。3人残ってもつまらないしバスとかの時間もあるしね」

 麻由も賛成してくれたことだし本日これで解散!……本当はもうちょっとみんなといたいけどそれはわたしのわがままだから口にしない。

「それじゃあわたしは先に帰るね!ばいばい!」

『ばいばい!』

 紗弥はわたし達に手を振って走り去っていった。

「俺ももうバス来るから帰るよ!またね」

『ばいばい!』

 加賀美くんも走り去っていった。

「さて、俺らも帰るか」

「そうだね、行こう麻由」

「あ、うち買い忘れてたものあったんだ~。だから先帰ってていいよ~」

 突然麻由はわざとらしく言った。しかも棒読みで。

「そういうわけだから桐崎くん、乃愛がまたナンパされないように乃愛のことバス停まで連れて行ってくれない?バス停までは一緒でしょ?」

「あぁ、別にいいけど池波さんは?」

「うちは迎えに来てもらうから大丈夫!というわけでばいば~い!」

 麻由はニコニコしながらどこかへ去っていった。

「俺らも行こうか?」

「そ、そうだね」

 わたしは桐崎くんの隣に移動して2人で近くのバス停に向かって歩き始めた。


 ***


「さ、寒い!」

 外に出ると雪は降っていないものの風が強くて肌に突き刺さる。

「そりゃ寒いだろ。そんな薄着だししかもスカート短いし」

 そう言って桐崎くんはバッグから手袋を取り出した。

「ほら、使いなよ」

「大丈夫だよ!少しくらいなら!」

「嘘つけ」

 桐崎くんはふとわたしの手に触れた。

「!?」

 その瞬間ドキッと胸が高鳴った。

「こんなに冷たいくせに無理すんな」

「そ、それはわたしが冷え性だからであって別に寒いというわけでは……」

「いいからはい、使いなさい」

 さり気なく命令口調の桐崎くん。そんなにわたしが心配なんですか、なんてね。

「は、はい……」

 渋々桐崎くんから手袋を受け取る。使う気はないが。

「なんではめないの?ちゃんとはめなよ」

「は、はい……」

 逆らえない雰囲気。わたしは桐崎くんの手袋にゆっくりと手を通した。

「2回目だね。桐崎くんから手袋貸してもらうの」

「そう言えばそうだな……。なんか半ば強引に押しつけたけどな」

「そんなことないよ。桐崎くんがわたしのこと心配してくれているんだなぁって思ったら嬉しかったよ」

「っ!」

 桐崎くんの顔が突然真っ赤に染まった。そして自分の言ったことに気付いた。わたしはとんでもなく恥ずかしくて理不尽なことを言ってしまったと。でもそれがあの時のわたしの本音。桐崎くんに心配されたことがすごく嬉しかった。

「あれ?もしかして照れてる?」

 わたしは強がって『友達』として聞いてみた。

「て、照れてねぇし!なに言ってんの乃愛さん!?」

「嘘だぁ!絶対照れてる!可愛いなぁー」

「照れてねぇし可愛くもねぇよ!つか、んなこと言われても嬉しくねぇから!」

 そう言って桐崎くんはわたしの頭を軽く叩いた。加賀美くんの頭を叩くようなノリで叩かれたのにドキッとした。

「……乃愛さん」

 桐崎くんが突然真剣な顔でわたしを見た。声もさっきより少し低め。

「休み明けに大事な話があるんだ」

「えっ?今じゃダメなの?」

「今はまだ話す時じゃないんだ。というか今はまだ話せない」

「そ、そうなんだ……」

 大事な話ってなんだろう。それに今はまだ話せないって一体どんなことなんだろうか。

「だから休み明け、いつでもいいから2人で話せる時間をくれない?」

「……うん、分かった」

 そして即座にわたしもある1つの決断をした。

「わたしも今は言えないけど桐崎くんに話しておきたいことがあったの。だから、いいよ」

「ありがとう」

 するとわたしが乗ろうとしているバスが到着した。

「乃愛さん、これに乗るの?」

「うん。桐崎くんは?」

「俺はこれじゃないんだ」

「そっか……。それじゃあ次会うのは休み明けだね」

「あぁ。またな」

「ばいばい」

 お互い手を振ってわたしはバスに乗り込んだ。ドアが閉まりバスが動き出した。わたしは見えなくなるまで桐崎くんを見ていた。桐崎くんもまたわたしのことを見ていた。

 言ってしまったからにはもう戻れない。けれどそれでもいい。それでもいいからわたしは桐崎くんにわたしの素直な気持ちを伝えるって決めたの。振られるのは分かり切っているし気まずくなることだって分かっている。ただ一言桐崎くんに好きって言えればそれだけで十分。わたしはもう逃げないよ、桐崎くん。


これで水族館デート編は終了です!ぶっちゃけ水族館での出来事よりショッピングモールでの出来事の方が多かったり(笑)


今後の乃愛、桐崎くん、加賀美くんの動きや3人の関係に注目です!


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