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57.水族館デート!⑤

「キリ。ちょっといいか?」

 ちょうどみんながご飯を食べ終えた時、加賀美くんは桐崎くんに声をかけた。

「あぁ。なんだ?」

「話すのは場所変えてから。というわけで俺達ちょっと席外すね!なんかあったら連絡して」

「あ、うん。分かった」

 あんな笑顔で言われちゃ分かったとしか言えない。多分わたし達3人は同じことを思っただろう。

「ほら!行こうキリ!」

「わかったから引っ張んなって!」

 とか言いつつも満更でもない顔で桐崎くんは加賀美くんに連れられどこかへ行ってしまった。

「あの2人、実はデキてるんじゃない?」

「うちもそう思う!桐崎くんに彼女がいるなんて嘘じゃない!?彼女じゃなくて彼氏とか!しかもそれがヒロくん!」

「やっぱりBLなの!?」

「ちょっとやめてよ!そんなこと言うの!」

 この2人っていわゆる腐女子だったの!?笑顔でそんなこと言わないでよ!桐崎くんはそんなんじゃないってば!……ただ加賀美くんと仲が良すぎるだけであって。

「冗談だって。本気にしないの」

 紗弥は笑っているが、わたしは上手く笑えない。

「だって……」

「あの2人、いつも一緒にいるから疑うのも無理ないでしょ?」

 確かにいつも一緒にいるけどだからってデキてると思うのはなんかちがくない!?偏見だよ偏見!……わたしが言える立場じゃないけどさ。

「そう言えばずっと聞こうと思っていたんだけどさ、乃愛って桐崎くんのどこが好きなの?」

 麻由がなにやら真剣な顔で聞いてくるからなにかと思ったらそんなこと!?

「ちょっ!えっ!?それ今聞いちゃう!?」

「うん!聞いちゃう!」

 語尾にハートマークがつく勢いで言う麻由。

「あ、わたしも知りたいなぁそれ」

 更には紗弥まで興味津々な様子。これは言わなきゃいけない雰囲気なんでしょうか……。

「ほら、早く早く~!ヒロくん達戻ってきちゃうよー?」

 こんな、目をキラキラさせて興味津々な顔をする2人に桐崎くんのこと好きな理由を言うなんて、恥ずかしすぎます。けどただいま言わざるを得ない状況。

「や、優しいところです、はい……」

「……それだけ!?優しくしてくれれば誰でもいいの!?」

 紗弥は驚いた顔でわたしに言った。なにもそこまで驚くことないのに……。別に優しくしてくれれば誰でもいいわけじゃないもん!

「ちがっ……!そういうわけじゃないって!優しさが重なって、すごく心配してくれて、話す機会はあまりないけど話すとすごく楽しくて、一緒にいるとなぜか安心して……気付いたら好きになっていたの。好きって気付いたきっかけがこの前の停電の時だったの……」

 改めて言うと恥ずかしい。けど、理由なんて後付けに過ぎない。気付いたら好きになっていた、ただそれだけだもん。優しさに惹かれたのは事実だけど。

「そうなんだ!キャーッ!乃愛ったら顔真っ赤にしてもう乙女モード全開!可愛いよ~!」

 麻由は大きめの声で言ってわたしに抱きついた。一瞬席が近くだった人達にちら見された。絶対聞かれていたな、うん。

「乃愛って中身重視なんだね」

「うん。どんなにかっこよくても性格に問題がある人は嫌。あとさっきの人達みたいにチャラチャラしてる人も。あれ?前に言わなかったっけ?」

「言ってない言ってない。けどやっぱりそうなんだね。だって桐崎くんって顔フツーじゃん」

 紗弥の何気ない一言が刺さった。いつにも増してストレートにぶっ込んできましたね紗弥さん……。

「あ、でもメガネ外した時はフツーにかっこいいと思ったよ?というかきれいな顔しているんだなぁって思った」

「うちもうちも!フツーに見たらヒロくんがうちのクラスで1番かっこいいけど、メガネ外した時はヒロくんと同じくらいだよね!」

 ……メガネ効果恐るべし。でも2人の言うことは分かる気がする。メガネ外した姿を見た時は一瞬ドキッとしたもん。

「あの人コンタクトにしちゃえばいいのに。もったいない」

「そうだね!かっこよくてそれでいていい人なんて滅多にいないし。ヒロくんはかっこいいしいい人だけど結構毒舌だし裏表はっきりしてるからね……」

「あのさ麻由、さっきから思ったんだけど、なんでそんなに桐崎くんと加賀美くんを比べるの?というか、さっきから加賀美くんのことばっかりじゃない?」

「あっ……」

 紗弥の言うとおりかもしれない。いや、間違いなくそうだ。麻由はさっきから加賀美くんの名前を出している。

「それに、この企画に加賀美くん達誘ったのは麻由だったよね?」

 いつの間にか標的が麻由に変わっていた。麻由の表情が段々変わっていく。そしてわたしは紗弥が次に麻由になにを言うのかおおよその検討はついた。それはおそらく――。


「麻由、加賀美くんが好きでしょ?」


 紗弥がそう言った瞬間麻由の動きが止まった。表情も固まった。

「……えへ、おかしいなぁ。なんで分かっちゃったの?いつも通りにしていたはずなのに……」

 麻由は無理やり笑顔を作って言った。

「やっぱりね。加賀美くんを誘った時点で不思議に思っていたのよ。なんで男子を誘ったんだろうって。最初は乃愛のために桐崎くんも一緒に行かせるつもりだったのかなって思ったけど。今日になって分かったよ。さっきから桐崎くんの話しているのに何故かヒロくんヒロくんって加賀美くんの名前を出すんだもん」

「乃愛のためって言うのは本当だよ?桐崎くんを誘えればあと1人は誰でもよかった。でも、うちはヒロくんと一緒にいたかったから……。だからあの時チャンスだと思ったの。それにヒロくんと桐崎くんは仲が良いからどちらかを誘ったら自然ともう1人も誘えると思ったの」

 麻由が顔を赤くしている。そんなに加賀美くんと一緒にいたかったんだね。わたしも分かるよ、その気持ち。桐崎くんに彼女がいるって分かっていても好きなことに変わりはないし、一緒にいたいと思っているもん。

「あらら、これで恋する乙女が2人になっちゃったよ」

『なっ……!』

 突然なにを言い出すかと思えばこの子は、紗弥は一体なにがしたいんだ。

「だったらわたしは退散しようか?そしたら2対2でちょうどいいと思うけど」

『ダメ!それは絶対ダメ!』

「ちょっと、2人してなんでそんなこと……」

「だって元々わたし達3人の予定だったんだよ?」

「うちがあの2人を誘ったから5人になったけどさ……。最初は3人だったのに1人欠けちゃうなんてダメだよ」

「でもさ、せっかくのチャンスだよ?いいの?」

『いいの!』

 紗弥は一歩も引くつもりがないようだが、それを言ったらわたしと麻由も引くつもりはない。だってわたし達は……。

『恋より友達が1番!そうでしょ?』

 それはわたしがまだ桐崎くんを好きになる前、1年の時に3人で言った言葉。たとえ3人の中の誰かが男子に恋しても友情は大事。恋愛は二の次。3人でそう決めたんだもん。

「……後悔してもしらないからね」

 紗弥が少しいじけながら言った。その言葉を聞いてわたしと麻由は笑顔になった。

『やったぁ!紗弥大好きぃっ!』

 そしてわたし達2人は紗弥に抱きついた。

「えぇい!くっつくな!暑苦しい!」

 紗弥はそう言ったけど満更でもない顔をしている。そんな素直じゃない紗弥もわたしは好きだよ。


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