52.優柔不断なんです!
冬休みが始まり、いよいよ明日は紗弥達と一緒に水族館へ。あー、もうなに着ていくか迷う!あまり派手過ぎるのは嫌だけど地味過ぎるのも嫌だし……。だって『友達』としてとは言え、桐崎くんに会えるんだもん。せっかくだし少しはオシャレしたいの。少しくらい桐崎くんに可愛いって思われたいの!そしていくつかの服を取り出してベッドの上に並べた。
「うー……。ワンピースもいいけどミニスカートも捨てがたい。でも歩き回るならショートパンツの方いいかな……」
取り出して並べてはしまい、並べてはしまいを繰り返すこと数回、なんとか候補が決まった。
「うぅ……。ショートパンツかミニスカート……」
ダメだ、これは選べない。究極の選択をしいられているようだ。ショート丈というのは決まってるけどパンツかスカートか……。
「こうなったら……!」
ケータイを取り出し、麻由に電話をかけた。
《どうしたの乃愛ー?》
「あの……ちょっと相談が……」
《あ、もしかして『明日なに着ていこうか決まんないよー!』とかじゃないよね?》
うぅっ……。なんだこの子、エスパーか!なんですぐ分かるの!?
《あれ?もしかして当たり?》
「……」
最早なにも言えなかった。
《やっぱりね!優柔不断な乃愛のことだから服とか絶対悩んで聞いてくると思ったんだ!で、なにで迷ったの?》
「ボトムズをショートパンツにするかミニスカートにするか……」
しばしの静寂。
《……えっ?それだけ?》
「うん、それだけ」
《ちょ……!子どもじゃないんだからそれくらいで悩まないでよ!》
それくらいってなに!?わたしからしたらそれくらいのことじゃないよ!?もう重要!まさに究極の選択!
「それくらいって言わないで!結構真面目に聞いてるの!だって……桐崎くんに会うんだよ?しかも私服で……」
《そっか、うちや紗弥からすればどうでもいいことかもしれないけど乃愛からしたら重要だもんね。しかも私服姿で桐崎くんと会う機会なんてないもんね》
「うん……」
たとえ桐崎くんに彼女がいたとしても、好きな人には可愛いって思われたい。学校で見るいつものわたしじゃなく、プライベートでのちょっと違ったわたしを見てほしい。恋する女の子だもん……。少しくらい、これくらいのわがままなら許されるよね?
《乃愛はもう女の子全開だからミニスカートがいいと思う!見た目大人っぽいからショートパンツでもいいけど、せっかく桐崎くんに会うんだから可愛い格好したいよね!だったら断然ミニスカートがいいと思う!》
「本当?」
《本当。紗弥にも聞いてみたら?絶対同じようなこと言うから》
「分かった。紗弥にも聞いてみる」
一旦麻由との会話を中断し、紗弥にも電話した。
《はい、もしもし》
「あ、紗弥?あのさ、ちょっと相談が……」
《なに?》
「明日何着ていこうかすごく迷ってて……」
《やっぱり、そんなことだろうと思ったよ》
なんで紗弥まで分かるの?2人ともエスパー?いや、ただわたしがわかりやすいだけなのかもしれない。
《それで?何で迷ったの?》
「ボトムズをショートパンツにするかミニスカートにす――」
《ミニスカートだね、うん、断然ミニスカート》
紗弥はわたしが全て言い終わる前に即答した。
《ミニスカートと黒のニーハイで絶対領域!これ重要!》
あれ?紗弥さんなんかテンション上がってません?声色変わりましたけど……。
「ぜっ、絶対領域……?」
《うん!そこは重要!絶対領域は萌えのポイント!》
いやいやちょっと待ってください紗弥さん……。わたしは萌えというものを求めていないけど!ただショートパンツかミニスカートについて聞きたかっただけであってそこまでは……。
「あ、ありがとう紗弥……。参考になったよ……?」
《なぜさりげなく疑問形?まぁいいけどさ。とにかく楽しみだね、明日》
「うん!」
《空気読んで2人にしてあげようか?》
紗弥は明るい声で言った。
「ううん。そんなことしなくていいよ。桐崎くんに彼女がいるなら『友達』として接するから。そう決めたの。だから……いいの。告白もしない」
《そっか……。それで乃愛が後悔しないならいいと思うよ。分かった、じゃあ明日は変に気を遣ったりしないでいつも通りにするから》
「ありがとう紗弥」
《それじゃあまた明日ね。遅れないでねー!》
「了解!また明日ね」
紗弥との電話を終えたわたしは再び麻由に電話をかけた。
《お~そ~い~!なにをそんなに長く話してたの!?》
ワンコールで電話に出た麻由は早速文句を言い出した。遅いって言われても……わたしと紗弥は5分も話してないよ?
《それで、紗弥はなんて言ってた?》
「『ミニスカートだね、うん、断然ミニスカート。ミニスカートと黒のニーハイで絶対領域!これ重要!』って言われた」
《絶対領域とか……紗弥っぽい!》
麻由は無理矢理笑いをこらえているような声で言った。
「もう即答だったよ?言い終わる前に言われたんだから」
《紗弥だから仕方ないよ。それにあの質問なら即答間違いなしだよ。紗弥の場合。かなり二次元好きだし、萌えのポイントとか知ってるし……》
「そうだねー。絶対領域は萌えのポイントだって言われたし」
《紗弥っぽい~!》
わたしも二次元好きだけど紗弥には敵わないな。……萌えのポイントとか全然わかんないし。
《あ、話ずれた……。まぁとにかくやっぱり紗弥もうちと同じでしょ?理由は違うけどやっぱり乃愛にはミニスカートが似合うってことだよ!》
「2人が言うならそうなのかな……?」
《そうだよ!だから明日はミニスカートに黒のニーハイね!》
麻由は笑いながら語尾にハートマークがつくくらいの勢いで言った。
「うん、そうする!ありがと麻由。それじゃ明日ね!」
《また明日~!》
そして二度目の麻由との電話を終わらせた。
わたしに似合うのはミニスカートかぁ……。だったらもう決まり。明日はこれにする!
わたしは明日着る服をきれいにたたんで椅子の上に置き、他の服はたたんで元の場所にしまった。
「あぁー!楽しみだなぁ!」
ベッドの中に入ってからも頭の中は明日のことでいっぱいだった。みんなの私服早く見たいなぁ。会いたいなぁ。どうしよう!楽しみすぎて寝れないかも!明日はきっと素敵な1日になる。そうなってほしい!
次回から水族館デート編!恋愛要素多めで頑張ります(笑)