51.予定を立てましょう!
「でさー、いつ行く?水族館」
「冬休みでしょ?年末年始はやってないからね。冬休み始まってすぐか終わるギリギリだよね」
とりあえず水族館に行くことはもう決定したので日にちやら時間やらを決めるために5時間目の授業後の休み時間に5人で集まった。もちろん教室でやると怪しまれるので少し寒いけど廊下で話していた。……廊下もなんだかんだでじろじろ見られるけど。
「でも加賀美くんの部活の予定にもよるんじゃない?」
わたしは加賀美くんの方を見て言った。
「そうだよ加賀美。冬休み中の部活はどうなんだよ」
続いて桐崎くんも加賀美くんの方を見て言った。
「あー……今度の土日なら休みだよ、確か」
『今度の土日?』
日にちを確認すると今度の土日は25日、26日だった。
「クリスマスとその次の日かー。クリスマスは絶対人多いじゃん。特にカップルとか……」
「でも次の日は日曜日だから家族連れとかで人多そう……」
結論から言うとどちらも人が多いと予想できる。でもこれは年末前の話であって年始後ではない!
「じゃあ来月は?」
「来月は……今のところ部活の予定はないよ」
「じゃあ冬休み終わるギリギリでいいんじゃない?」
『そ、それは……』
麻由と桐崎くんは渋い顔をし、口をそろえて言った。
「え、なんか予定入ってる?」
「予定は入ってないんだけど~……」
「多分宿題終わんなくて焦ってる時期……」
「ちょっと2人ともー!」
わたしも人のこと言えないけど、せっかくみんなで水族館行く予定なんだからそれまでには終わらせるように努力しようよ。だから始まる前から宿題終わってない前提で話すのはやめて……。
『というわけで来月は無理!』
麻由と桐崎くんはそう宣言した。そう言うのがもし1人だったら反対しただろうけど2人だから誰も反対出来ない。さすがにこの2人を置いていったら男子1人女子2人というとんでもない組み合わせになってしまう。どんな関係なんだよってね。
「じゃあ25日か26日のどちらかだね……」
「カップルが多い日と家族連れが多い日だったらどっちがいい?」
『うーん……』
わたしを除く4人は真剣な顔をした。ここはみんな迷うところ。質問したわたしでさえすぐに答えることは難しい。どちらにしろ人が多いのは確実なのだから。
「……家族連れが多い日よりカップルが多い日に行った方が目立たないと思うのはわたしだけかな?」
『えっ!?』
紗弥の言葉にわたし達は耳を疑った。家族連れの中行くのは勇気がいるけどカップルの中行くのはもっと勇気がいると思うのは多分わたしだけじゃないだろう。だからこんなにも驚いてしまったのかな。
「だって家族連れの中に高校生の男女のグループがいると考えてみなよ。明らかに浮いてない?」
『あっ……』
それもそうかも。何気に高校生のグループって目立つ。男女混合だと尚更。
「それに比べカップルが多い中、わたし達がそこにいてもさほど不自然ではないでしょ?ダブルデート+αみたいな感じで」
+α……。つまりわたしと紗弥と麻由の誰かは“おまけ”として見られるのか。なんか、それはそれですごく悲しいなぁ。
「でもリア充が多い中行くのは気が引けねぇ?いちゃつくなら別んとこ行けよって見ててイライラする!」
「ヒロくん、すぐ隣にリア充がいるよ……?」
麻由がそう言うと加賀美くんは隣にいた桐崎くんをちらっと見た。
「あっ……悪いキリ!すっかり忘れてた!」
「……おい!忘れんなよ!」
桐崎くんはワンテンポ遅れて言った。
「えー……じゃあ目立ちそうだけど26日行くー?」
紗弥がそれた話を修正して話を続けた。
「わたしは正直家族連れの中行く勇気はないかな……」
「うちも~……。ヒロくんが言うみたいにリア充が多い中行くのは気が引けるけど変に目立つよりはましかも」
「俺はみんなに任せる」
「じゃあ26日がいいってのは俺だけ!?」
『そうみたい』
これで4対1。多数決だったら25日に決定しているけどどうなるのかな。
「そっか、じゃあ25日でいいよ」
「本当?」
「あぁ。リア充は冷やかせばいいんだし!」
「だから隣……」
「あ、今のはわざとだから」
「加賀美!」
桐崎くんは加賀美くんを叩いた。でも本気で叩いたわけではないだろう。
「でもいいの桐崎くん。クリスマスなのに彼女と過ごさなくて?」
クリスマスは友達と過ごすより恋人と過ごすのが一般的のような気がする。今の世の中は。
「……そ、それなら大丈夫。冬休み入ってすぐに実家の方に行くみたいだし。冬休み中は彼女と会わないよ」
「うわ、もったいねぇ。つか可哀想……。リア充のくせに……」
「さっきからリア充リア充うるさいよお前は!」
桐崎くんは加賀美くんを叩こうとした。が、あっさりかわされた。桐崎くんの言うように加賀美くんはさっきから桐崎くんをからかうようにリア充って何度も言ってるような……。いや、実際何度も言っている。
「じゃあ日にちは25日のクリスマスで。時間は……10時に現地でいい?」
騒いでいる2人を放置して紗弥はわたしと麻由に確認を取った。
「いいよ。別の場所で待ち合わせしてから行ったら面倒だし時間もかかるしね」
「それじゃあ決まり。……話聞いてた?桐崎くんと加賀美くんは」
『えっ?いや、その……』
「やっぱり……。一度しか言わないよ?25日の10時に現地集合ね」
『了解』
こんな感じで予定は決まり、あとは当日を待つだけ。たった数日待つだけなのに、このたった数日でさえ長く感じる。早く当日になってほしい。みんなで過ごす今年のクリスマスは幸せな日になるといいな……。