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46.告白直前です!

 告白を決意してから数日が経ち、気付けば冬休みの3日前。ようやく気持ちの整理が出来たわたしは遂に今日、桐崎くんに告白します。

 振られるのは怖い。関係が崩れるのも怖い。でもわたしはもう、自分の気持ちを抑えられないほど桐崎くんのことが好きになっていたみたい。だから伝えたことで結果がどうなってもわたしは後悔しない。


 ***


 部室へ行くと桐崎くんはまだいなかった。あれ、おかしいな?確か桐崎くんは当番じゃないから掃除はないはずなのに掃除をして遅くなったわたしより遅いなんて……。もしかして今日は休み?いや、それは違うはず。だって帰りのホームルームが終わったあと桐崎くんに部活行く?って聞いたら行くって言ってたもん。じゃあなんで……?急用でも出来て来れなくなっちゃったのかな?それは……ちょっと嫌だなぁ。

「あれ?桐崎は?」

 真田くんはわたしに聞いた。

「わかんない。一応来るみたいだけどまだ来てないよね?なんかあったのかな?」

「掃除じゃねぇのか?」

「桐崎くんは今週掃除当番じゃないよ?わたしはそうだけど」

「そうか、珍しく全員そろうと思ったが仕方ない。桐崎はまだいないけど始めるぞ。今日の活動は――」

「悪い!遅れた!」

 その声と同時にドアがバタンと音を立てて開いた。そこには急いできたのか、息が上がっている桐崎くんがいた。

「どうして遅れた?理由を述べよ!30字以内で!」

「さ、30字以内!?」

 真田くんは茶化すように言った。でも桐崎くんはどうすればいいかと迷っているように見えた。

「そ、それは……あとで言う」

 珍しく歯切れが悪いなぁ。部員の前では言えないことなのかな?

「じゃあ簡単なミーティングが終わったら桐崎は俺と如月と別室に移動だから」

「……あぁ」

 って何故わたしまで!?……副部長だからか。もし桐崎くんが言いたくないことだったら無理に聞くのはよくないと思うんだけどなぁ……。

 そう思ってはいても口に出すことは出来ず、結局3人で別室へ移動することに。



 そしてわたし達3人は別室へやってきた。別室に入るなりなにやら妙な雰囲気に……。

「はい遅れた理由は?」

「そ、それはその……」

「まぁなんとなく予想は出来てる。お前が渡り廊下にいたのは見たし。つか見えたし」

「っ!……本当なのか?」

「あぁ。だからなんとなく検討はついているよ」

「えっ、なに?どういうこと?」

 2人は話を進めているがわたしはいまいち理解が出来ない。もう2人で話を進めないでよ!話についていけない!

「如月、お前意外と鈍いんだな……」

「なっ……!」

「桐崎はおそらく――」

 そこまで言って真田くんは言葉を切った。なんだろう。なんだかすごく嫌な予感がする。

「……あぁ。告白されたんだ」

「えっ……?」

 一瞬目の前が真っ暗になった。桐崎くんが、ついさっき告白、された、の……?

「相手は?2年か?」

「いや、1つ下の楠木美嘉って人。チアリーディング部らしい」

 1つ下のチアリーディング部の子。そんな子が桐崎くんとどういう関係なんだろう。学年も違ければ部活も違う。接点がまるでないのに一体どうして……?

「それで?その様子だとあれだろ?」

「真田にはお見通しか……」

 えっ、やだよ……。聞きたくない。桐崎くんが誰かと付き合うなんて、わたしは聞きたくないよ!今すぐにでもこの場から逃げ出したい。そう思ってはいるのにわたしの足は動かない。

「付き合うことにしたんだ。……俺も少しは気になっていたからさ、彼女のこと」

 ドクンと胸になにかが突き刺さった。そんな……。やっと告白する決心したのに……。こんなのないよ……。

 わたしはこぼれそうになる涙を抑えるのに必死だった。

「……そうか。桐崎、自分の本当に大切なものを見失うな。失ってから気付いたらもう遅いからな」

「っ!」

 真田くんは意味有り気な言葉を残して別室から去った。わたしと桐崎くんだけが残った。そう言えば数日前にも似たような状況になったっけ。でも今は数日前とは違う。あの時とは妙に違う空気が流れている。

「……大丈夫。わたしからは誰にも言わないから安心して。そういうことは自分から言わないとね」

 そう言ってわたしも別室をあとにした。

「如月さん!」

 桐崎くんがわたしを呼ぶ声を無視して……。


 ***


 真田に言われた言葉が頭から離れない。核心を突かれたな……。それと如月さんがこの教室から出て行こうとする時に見えてしまった悲しそうな表情も頭から離れない。しっかり目に焼きついている。俺は気付かないうちに如月さんを傷つけていたのか。

「……だって、どうすればいいんだよ!」

 自分自身に苛ついて思いっきり壁を叩いてしまった。ガンッという大きな音が教室内に響く。

「“美嘉”の頼みならやるしかねぇんだよ……」

 たとえその行動が誰かを傷つけることと繋がっても彼女の頼みは断れない。俺は彼女の力になりたいんだ。だって彼女は俺の大切な……。

「あ、はーくん!こんなところにいたの?」

 気付けばドアのところには彼女がいた。

「演劇部の部室に行ってもいないんだもん。探したよ?」

「ごめん。さっきまでここで部長達と話してたから」

「そうなんだ。あっ、美嘉ね、今日部活休みになったの。だから一緒帰ろ?……あっ、はーくんは部活だっけ?」

「あぁ。でもいいよ。今日は早退するって伝えてくるから」

「……いいの?」

「1人で帰るの怖いんだろ?」

「う、うん……」

「じゃあ言ってくるから少し待ってて」

「うん、分かった」

 そうは言ったものの早退しようとするのは彼女のためだけじゃないはずだ。本当は俺が逃げたいだけなのかもしれない。あんな悲しそうな顔で出て行った如月さんと顔を合わせるのが。

 どちらにせよ、部室には行かなければならない。俺は戸惑いながらも彼女をここに置いて部室に戻り、今日は早退することを真田に伝えた。

 その時、部室の中に如月さんの姿はなかった。


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