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36.意地っ張りは損です!

 ちょうど世の中はクリスマスムードに染まり始めている今の時期。日が暮れるのも早くなり、日に日に気温が下がっていく。外を見たら台風並みの強風が吹いていて大雨だった。



「あーもう寒い!雨も風も強いし!ねぇ、なんで暖房いれないの?」

 部員全員で会館の掃除を終わらせて部室に戻ってきた。

「今いれたよ!寒いならブレザー脱がねぇで着てろ!」

「動きづらいんだもん!」

 でもあと1時間もしないで練習は終わりだし、我慢しよう。そう思った瞬間、いきなり電気が消えた。

「きゃっ!」

「えっ?停電?」

 部室内大パニック。特に女子が落ち着いていられなかった。

「おい、一旦静まれ!点呼をとるから大人しくしろ」

 真田くんの声が聞こえてガヤガヤとうるさかった部室内が静まった。そして真田くんは部員1人ずつ名前を呼んだ。今日来ていた人はちゃんとみんないた。

「多分放送が入るかもしれないからとりあえずみんなここから動――」

〈えー、校舎内にいる生徒は至急体育館に集合し、団体ごとに点呼をとってください。尚、体育館は寒いので防寒具着用で来ても構いません〉

 真田くんの言った通り放送が入った。

「防寒具着用は当たり前だろっつうの……。というわけで手袋やらマフラーやら持って体育館行くぞ。コートがあるやつはコートも持ってけ」

『はい』

 わたしは運悪く耳当ても手袋も忘れてしまい、コートも着てこなかったので仕方なくマフラーだけを持ってみんなに続いて体育館に向かった。



 体育館での点呼確認後、各自家族と連絡を取り合った。

「大丈夫如月さん?」

 連絡を取り終え、ケータイをしまうと同時に桐崎くんに声をかけられた。

「な、なんとか……」

 本当は大丈夫なんかじゃない。怖いよ……。停電だから当然灯りは先生方が持ってる懐中電灯やケータイの僅かな光。悪天候だから月明かりなんてない。

「見るからに大丈夫じゃなさそうだけど」

「だ、大丈夫だって!」

 弱音なんか吐けない。わたしは副部長。こういう時こそみんなを支えなきゃいけないのに。みんなをまとめなきゃいけないのに怖いなんて言えない。

「そう……。あまり無理しないでね」

「大丈夫。無理なんてしてないから……」

「乃愛」

 桐崎くんとの話を終えると、連絡を取り終えた緋華がわたしの元へやってきた。

「これからお母さんが迎えに来てくれるみたいだからわたしは帰るね」

「うん、分かった」

「真田にはもう言っておいたから。……迎えくるまでそばにいるよ?」

「えっ?」

「だってほら……」

 緋華はわたしの手を取った。

「震えてるもん。怖いんでしょ?」

「ちがっ……!これはただ、寒いから……」

「バレバレだよ。さっきから今にも泣きそうな顔してるんだから。いいんだよ?怖いなら怖いってそういえば。なにも強がる必要はないんだから」

 緋華にそう言われた途端、涙がこぼれてきた。なんで緋華にはすぐバレちゃうんだろう。わたしが強がっていて、怖いって口に出すのを我慢してたこと。

「よしよし、それでいいんだよ。無理に我慢する必要はないんだから」

「ありがとう緋華ぁ……」

「にしても本当に手冷たいね」

「ひ、冷え性だからね……」

 これでも一応ポケットにミニカイロは入ってるし背中にもカイロ貼ってるんだよね。

「あ、今学校の前にいるってメール来ちゃった」

 緋華がケータイを確認して言った。

「そっか……。じゃあ気をつけてね」

「少ししかそばにいてあげられなくてごめんね。ばいばい」

「ばいばい」

 緋華は真田くんに一言声をかけてから荷物を持って体育館から去っていった。

 ……急に寒くなった。身体だけじゃなく心も。どうしよう、緋華がいなくなっただけでこんなに怖いと思ってしまうなんて。嫌。怖いのは嫌。1人は嫌。寒いよ。温もりが欲しい……。冷え性はどんな時でも冷え性なんだね。そう思って摩擦熱を起こして温まろうと手を擦った。けれどなかなか温まらない。

「はぁーはぁー。寒い……」

 手に息を吹きかけて擦る。ずっとそれの繰り返しだった。


「手袋使う?」


 そんな時、桐崎くんはわたしに声をかけてくれた。

「さっきからすごく寒そうにしてるよ」

「……大丈夫。きっとそのうち温まるから」

「そっか……」

 本当は嬉しかった。でも素直じゃないわたしはまた強がって断ってしまった。甘えてはいけない。

「如月、桐崎。お前らは親と連絡とれたのか?」

 真田くんはわたし達のそばにきてその場にしゃがみ込んだ。

「うん」

「あぁ」

「そうか。あとあっちで先生がお茶配ってたから寒いならもらってくれば?」

「本当?じゃあもらってくる」

「いいよ、俺がもらってくるから如月さんは座ってな」

 立ち上がろうとしたわたしを制して桐崎くんが立ち上がった。

「でも……」

「いいから」

 わたしの返事を無視して桐崎くんはお茶を配ってるところに行った。

「お前、なんか無理してないか?」

 いきなり核心を突かれるとは思わなかった。まさか緋華にも真田くんにもバレバレだなんて。こんなことなら恐らく桐崎くんも気付いてるはず。

「……なんで分かっちゃうの?」

「慌てた様子でもなく落ち着いた様子でもない。それに僅かに声が震えてる」

「それは寒いからって考えなかったの?」

「あぁ。それにお前は頑固だからこういう時でも意地張ると思ったし」

 うっ……。あっさり見透かされてる。

「で、お前はどう帰るんだ?」

「まだ親は仕事してるから帰れなさそうだし、天候が少し回復したら歩きやらなにやらで帰るよ」

「そうか、じゃあまだまだだな」

「はい、如月さん。お茶もらってきたよ」

 いつの間にか戻ってきていた桐崎くんからお茶をもらった。暗いとよく見えないから気付かなかった。おまけに今日は運悪くメガネ忘れちゃったから余計見えない。

「ありがとう」

「じゃあ俺、顧問探してくるから」

「えっ?先生いないの?」

「いや、いるけど見つからないだけ。じゃ」

 真田くんは闇の中に消えていった。

「なんか、こういう時でも真田くんは自由だよね……」

「そうだな。まぁいいんだよ真田だから。とりあえず如月さんはお茶飲みなよ?それ飲んだら少しは温かくなるはずだから」

「うん……」

 そして桐崎くんはさりげなくわたしに自分の手袋を差し出した。

「……!」

 わたしは敢えて桐崎くんが手袋を差し出したことに気付かないフリをした。真田くんの言うようにわたしは意地っ張りだ。だって、人に甘えるほどわたしは弱くないもん……。

「お茶飲んだら少しは身体温まったかも……」

「そっか。よかった」

 暗くても聞こえる声の大きさで桐崎くんがどこにいるのか大体把握出来る。さっき緋華が帰った時はすごく怖かったのに、今はあまり怖くない。怖いことには変わりないけど近くに誰かがいてくれるだけで安心出来る。

「電話だ。ちょっとごめんね」

 そう言って桐崎くんは立ち上がった。

 どこかに行っちゃうの?嫌だ。お願い、近くにいて。1人にしないで。1人は嫌だよ。怖いよ……!気付いたら桐崎くんの制服の端を掴んでいた。

「えっ……?」

 桐崎くんの動きが止まった。電話口からは電話の相手の人の声が僅かに聞こえた。手を離さなきゃ。桐崎くんが困ってる。そう思ってるのに手が動かない。

「……あぁ、まだ学校。……分かった」

 桐崎くんは電話を切った。結局わたしは桐崎くんの制服を掴んだ手を離すことが出来なかった。

「こういう時くらい素直になりなよ。如月さん」

 桐崎くんは制服を掴んでいたわたしの手をそっと離し、わたしの近くに座った。

「大丈夫。如月さんが怖がらないように近くにいるから」

「……ありがとう」

 不思議だなぁ。さっきまで意地張って我慢してたはずなのに桐崎くんが近くにいてくれることで安心したのか少し素直になっちゃったよ。桐崎くんが近くにいてくれるだけでこんなに安心出来るとは思わなかった。


なんか時間経つの早くない?展開が急すぎる。そう思う方もいらっしゃると思います。……急すぎてすいません!泣


『続・これはラブ!?』略して『続これ』の時期はただいま12月中旬くらいです。ちなみに前回あった大会は11月下旬と設定していたので大会終わってから約2週間ですね。……わぁお、意外と急すぎました。


乃愛の行動などについてはまた次回触れることにします。


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