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26.合宿です!④

 ピピピ……ピピピ……

「うーん……。うぅー……」

「おはよ。ほら起きて乃愛。朝だよ」

 緋華はわたしの掛け布団を取り上げた。

「んー……。ふわぁ……おはようひーか。眠いよ……」

 目を擦りながらベッドから身体を起こす。

「結局昨日は11時くらいまで真田達の部屋にいたからね。そっからお風呂入って寝たから眠いのも仕方ないね」

「うん……。まだ寝てたい……」

「でも早くしないと真田に怒られるよ?」

「うぅー……。起きる……」

 真田くんに怒られるのだけは嫌だ。ベッドから出て身支度を始めた。

「あ、そう言えば朝食は7時からだって。まだ30分以上時間あるからゆっくりしててもいいよ?」

「うん。でもまた寝たら起きれなくなるから我慢する……」

 昨日、大富豪でわたしは1位をとり続け、緋華はビリをとり続けた。しかしババ抜きでは全く逆だった。緋華は1位、わたしはビリをとり続けた。なんでも顔に出やすいみたいですぐにバレてしまうとか。……顔に出やすいなんて役者としてどうなのだろう。

 突然コンコンとドアをノックする音がした。

「はーい」

 緋華がドアを開けに行った。その間にわたしは着替えが終わったので服を片付けていた。

「ねぇ緋華ー。わたしのパーカー知らなーい?」

「あ、おはよう如月さん」

「桐崎くん!?お、おはよ……」

 何故こんな朝早くに桐崎くんがわたし達の部屋に?

「え、ごめん分かんない。昨日脱いでどこに置いたの?」

「それがさっぱり……」

「もしかしてパーカーって黒地に白の英字書いてあるやつ?」

 桐崎くんがわたしに向かって言った。

「うん。そうだけどなんで?」

「じゃあこれ、如月さんのだったのか」

 桐崎くんの腕にはまさにわたしが探していたパーカーがあった。

「如月さん、俺達の部屋にパーカー置いていったまま部屋に戻ってたみたい。気付いたのはもう遅かったから渡しに行けなくて」

「そ、そうだったんだ……」

 うわぁ、なんか恥ずかしい。まさか桐崎くん達の部屋に忘れてきてしまってたなんて。

「はい」

 桐崎くんからパーカーを受け取る。

「あ、ありがとう……」

「いえいえ。俺は忘れ物届けにきただけだから。気にしなくていいよ」

 桐崎くんは笑顔でわたしにそう言った。

「それじゃまたあとでね」

「う、うん……」

 桐崎くんはわたし達に背を向け、部屋に戻っていった。

「桐崎くんって優しい人だね。わざわざ届けてくれるなんてね。真田に桐崎くんのこと見習ってほしいわ」

 横で緋華は真田くんに対する愚痴をこぼした。こんなこと言ってるけど相手のこと思ってるのはちゃんと伝わってくる。

「ホント桐崎くんって優しいよね」

 前から優しい人っていうのは分かってたけど……。ダメだなわたし。なんでパーカーを届けてもらっただけでこんなに嬉しくてこんなにドキドキするのだろう……。

 桐崎くんから手渡されたパーカーをぎゅっと抱きしめた。


 ***


「まず今日は昨日の練習を元に見つけた自分の改善すべき点を改善することから始めよう」

 朝食中、真田くんはわざわざ少し大きめの声で言った。まったく食事中くらいは部活の話しないでほしいよ。

「そんでもって午後から再び通し練習だから」

『はーい』

 あーぁ、今日の練習はいろいろと辛そうだな。なんかみっちり演技の時間って気がする。

「ねぇ真田。昨日の話、忘れてないよね?」

 いきなり緋華が立ち上がって言った。

「え……あ、まぁ……」

「なになにー?逢い引きしてたのー?」

「駆け落ちでもするのかー?」

 緋華と真田くんの微妙な雰囲気を察した誰かが次々と野次を飛ばした。

「駆け落ちなんかしねぇよ。ただその……」

「あー、もういい。わたしが言う。今日の夜、みんなでイルミネーション見に行かない?」

『イルミネーション?』

 突然の提案に誰もが驚いた。緋華がこんなこと言い出すとは思わなかった。

「うん。真田の親から聞いたんだけどちょうど今の時期から近くの並木道がライトアップされるらしいの。だからさ、部員同士の交流を深めるってことでみんなで行こうよ!」

「えぇー面倒じゃん」

「しかも寒いし……」

 次々と文句が上がってくる。主に男子から。

「楽しそうだね!緋華ちゃんの意見に賛成!」

「わたしも賛成です!」

 女子からは賛成意見多数。なんせ女の子はロマンチックなものに目がないから。

「じゃあ部長命令。みんなでイルミネーション見に行く。参加しなくていいのは病人やケガ人のみ」

「うわー部長命令かよ!」

「こういう時に部長の権利使うとかきたねぇよ!」

 部長命令きたわ。これには逆らえないね。部長だもん。

「よし、じゃあ決まりだな。というわけで今日の部活は5時半終了予定にするか」

『やったー!』

 そんなに早く終わることが嬉しいの?それともイルミネーションを見ることが嬉しいの?

「楽しみだね乃愛」

「うん!」

 イルミネーションかぁ……。もし彼氏がいたら一緒に見たいなぁ。でも、彼氏じゃないけど気になる人なら同じ部活にいる。……一緒に見れるかな?一緒に見れたらいいな。

 そしたらはっきりするかな?わたしが桐崎くんのことをどう思っているのか……。

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