22.認めます!
「このツンデレ。さっきのが気になりかけてる人に対する態度か」
「うっ……」
休み時間、何故か紗弥から説教を食らうことに。
「なにが“桐崎くんのバカぁ!桐崎くん嫌いー!”だ、このツンデレめ。ツンツンしたんだから次はデレるよね、当然?さぁいつデレるの?デレなきゃツンデレじゃなくてただのツンよ」
「別にツンツンしたつもりは……!ってなんでさっきわたしが言ったこと覚えてるのよー!恥ずかしいから言わないでっ!」
「なんでって、いつか乃愛を辱める時に使う脅迫ネタにしようと……」
「人のセリフを辱める時用の脅迫ネタにするなっ!」
紗弥に説教される理由がなんとなく分かるようで分からない。別にツンツンしたくて言ったわけではないしツンデレキャラを狙って言ったわけでもない。……あれがあの時のわたしの本心、かもしれない。
「まったくもう……。そんなんじゃ相手に悪印象与えちゃうよ?」
「もう十分与えてるよ……」
むしろ悪印象しか与えてないような気がする。
「でもホント可哀想だな~……。好きな人にそんな風に思われちゃうなんて。ねぇ?」
「ホントそうだよね……って麻由!?いつからそこに!?」
紗弥の後ろから麻由がひょこっと現れた。
「え、今。てか乃愛、今認めたね。好きな人って」
「あっ!ホントだ!」
「えっ!?あっ、違う!す……好きではな、い……よ」
「なにその曖昧な答え!好きじゃないならなんなの?あんな態度しておきながら好きじゃないなんて」
もう言っちゃう?でもそれじゃあ紗弥に悪いし……。もしかしたら紗弥も桐崎くんのこと好きかもしれないし。
「す、好きじゃない、けど……」
『けど?』
「き、き……気になる……」
桐崎くんのことを気になっているのを認めて、更にそれを誰かに言うなんてすごく恥ずかしい。これくらいのことで恥ずかしいなら告白なんて到底無理。もちろんするつもりはないけど。
「ついに認めたんだね!おめでとう乃愛!」
「なかなか認めてくれないから気になってるのかなってないのか分からなくなりそうだったよ」
紗弥の言ってることってやっぱりわたしが桐崎くんに対してそんな感情を持ってると困るからかな。紗弥も桐崎くんのこと……。
「紗弥、怒ってる?」
「え?なんで?」
「だって紗弥も桐崎くんのこと、気になってるんじゃないの……?」
「えっ!?そうだったの紗弥!?」
その反応からしてどうやら麻由は知らなかったみたい。
「……えっ?ちょっと待って。なんで?」
「だってこの間言ってたじゃん!あんな人なら付き合ってもいいかも、って」
「え、なに?そんな感じになってたの?うちがいない間に?三角関係に発展しちゃったの?」
麻由はもうなにがなにやらさっぱりって顔をしている。いや、多分わたしも紗弥もだろう。
「あぁー……。確かに言ったねそんなこと。でも別に気になるとかそういうわけじゃないよ?ただ桐崎くんが結構わたしの理想のタイプに当てはまってたからそう思っただけだし、本気で付き合いたいとは思ってないから。だってそうでしょ?男子苦手な乃愛が恋した相手を奪うようなことするほど悪女じゃないよわたし」
確かに悪女ではないがたまに恐ろしい一面が……なんてことは口が裂けても言えない。
「だから、そういうわけでわたしは気になってないから大丈夫!思う存分恋しなさい乃愛!」
「そうだよ乃愛!うちら協力するから!」
2人の気持ちはすごく嬉しい。でも……。
「ありがとう。でも気になるってだけでそこから好きに発展するか気のせいでしたなんてまだ分からないし……」
『あ、そっか』
……ってそこは考えてなかったの!?
「でも大丈夫。乃愛はきっと桐崎くんのこと好きになる」
自信満々に紗弥はわたしに言った。
「な、なんで……?」
「根拠なんてないよ。ただの勘」
勘かい……。
「女の勘はよく当たるんだって!だからそのうちそうなる!」
「いや、わたしはそうは思わないけど……」
「大丈夫だって!乃愛の勘は9割が外れるから」
「そ、そんなに外れないよ!」
というか言ってることが矛盾してますけど!
「まぁ、とにかく合宿頑張ってね?」
「うん!ありがとう!」
「でもなぁ、お泊まり会でガールズトークできないなんてつまらないなぁ……」
「お泊まり会はまた今度にしようよ!ね?」
「もちろんそのつもり!あ、もし合宿中なにかあったり、どこまで進展したりしたかその都度教えてね!」
「……拒否っ!」
第一3日間の合宿でそんなことあるわけない!あったとしても絶対話さないもん!どうせまた茶化されるだけだし……。