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2.はめられました!

 今わたしがいるのは部室の前。約2週間振りの部活。もう先輩は引退してるから誰にも怒られるわけではないけど入るのにちょっと戸惑う。

 でも紗弥に逆らったらあとが怖い!今は入るしかない!そう思ってドアに手をかけた。

「だーかーらー!俺は帰るよ!どうせ全員揃うわけじゃないんだし」

「おい待て桐崎!話を――」

 と、声が聞こえ、勢いよくドアが開いた。突然のことに避けきれず、出てきた男子と正面衝突。

「うわっ!」

「きゃっ!」

 そしてわたしは後ろに倒れた。尻餅をついてお尻が痛い……。

「わっ!ごめん!大丈夫?」

「う、うん……。大丈夫……」

 目の前にいたのは同じクラスの桐崎くん。でも部員でもない彼がどうしてここに?

「あっ、やっと来たな如月」

 部室から出てきたのは隣のクラスの真田くん。同じ部活の人。

「おい、なんで2週間も部活サボってた。言え」

「うっ……。ど、どうせなにもすることないと思ってたから……。それに面倒だったし……」

 そう正直に言うと真田くんは持っていたノートを丸めてわたしの頭を叩いた。

「いったぁ!」

「なにがすることないだ!3年が抜けたから部長とか副部決めなきゃならねぇだろ!」

「……あっ」

 そのことをすっかり忘れてた……。そうだ、先輩が抜けたからもう2年が中心なんだっけ。

「忘れてたのか。まぁいい。話は中でしよう。桐崎も如月が来たんだから中に入れ」

「ったく仕方ないな……」

 渋々部室へ入る桐崎くん。……ん?ちょっと待てよ。

「えっ?桐崎くんってバスケ部でしょ?なんで演劇部の部室に……?」

「はぁ?お前なに言ってるの?」

 真田くんは呆れ気味にわたしを見て言った。

「桐崎は演劇部の部員だ。バスケ部なんてとっくに辞めてるよ」

「……えっ?そうなの?」

 なにも知らなかったわたしは思わず視線を桐崎くんに移した。

「うん。今までちょこちょこ来てたのはまだ入部届出してなかったから。でも夏休み明けからは正式に演劇部の部員になったよ」

 夏休み明けってことは……数週間前か。っていつの間にか部員増えたの!?

「サボってたからこんなことになるんだ。これからはちゃんと来い」

「は、はい……」

 真田くんに言われちゃ逆らえない。何故だろう。紗弥みたいな迫力があって逆らいづらい。

「とにかく入ろう」

 わたしは流れに逆らえず、部室に入らざるを得なかった。


 部室には半分くらいしか人がいなかった。多分来てない人はわたしと同じ理由だろう。

「それじゃあ話をしよう。とりあえず部長は俺がやる。異論はないな?」

 その場にいた部員は一斉に首を縦に振る。異論があるわけない。自分が面倒なことをしなければいいって誰もが思っているのだから。

「それで問題は副部長。やりたい奴いるか?」

 もちろん誰も手を上げない。

「仕方ない。じゃあ公平にじゃんけんで――」

「真田。如月さんがやりたいってよ」

「はいっ!?」

 桐崎くんがいきなりとんでもないことを言い出した。わたしがいつやりたいと言った!?こんなわたしに副部長が務まるわけがない!

「ちょっと桐崎くん!わたしなんかに副部長が務まるなんて……」

「あぁ、やっぱり桐崎もそう思うよな?じゃあ副部長は如月に決まり」

「ちょ……!本人の意見は!?」

『聞くわけないだろ?』

 真田くんと桐崎くんは声をそろえて言った。……はめられた。

「じゃあそういうことであとはよろしく!副部長」

「はぃ?なんで!?」

「なんでって俺、先生のとこ行かなきゃならないの!じゃ!」

 真田くんはそう言って足早に部室から去っていった。

「あぁ行っちゃったね真田。でこれからどうするの?副部長」

「きーりーさーきーくーん!なんでわたしが副部長なんかやらなきゃいけないのよ!」

「あっもしかして部長がよかった?」

「よくないっ!」

 ダメだ。完全に桐崎くんのペースになってる。

「えっと……真田くんは今後の活動についてなんか言ってなかった?」

「そう言えば大会があるとか言ってたな」

 大会か……。去年は先輩方の応援と裏方をしてたからどんなことをしてたかいまいち覚えてないけど。

「じゃあ大会に向けて部活しますか……てか真田くんが来るまで待つ?」

 先生に用があるくらいならすぐ終わって戻ってくるはずだし。

「うん。待っておこうよ。どうせすることないんだから」

 桐崎くんは鞄から本を取り出し読書を始めた。桐崎くんって教室でもよく本読んでるなぁ。って人のこと言えないけど。

「……なに?俺の顔になにかついてる?」

「えっ?い、いや!別に……」

 なんか恥ずかしい。そりゃじっと見られてたらそう言うよね。

「そう。……如月さんって――」

「悪い悪い!なかなか先生見つかんなくてさー!」

 桐崎くんがなにかを言い掛けた時、タイミング悪く真田くんが戻ってきた。

「あれ?なにこの雰囲気」

「真田お前さ、少しは空気読めよ……」

 椅子から立ち上がった桐崎くんは読んでいた本で真田くんを叩こうと腕を上げた。

「あぁ悪い悪い。なんか話でもしてたのか?」

「真田くん待ちだよ!」

「お前待ちだよ!」

 2人の声が重なった直後に聞こえたバシッという痛そうな音。真田くんが桐崎くんに本で叩かれた音……。

「痛っ!桐崎!本で人を叩くなよ!」

「お前は例外だ!」

 なんて2人してなにやってるんだか。言い合い始まっちゃどちらかが負けるまで止まらないね、絶対。

「全く、ガキみたい……」

『ガキじゃない!』

 2人は一斉にわたしを見た。なんだ、聞こえてたみたい。わたしはそんな2人が面白くて思わず笑ってしまった。


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