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19.3連休の予定は?

 ある日の放課後のこと。

「よし、今度みんなでお泊まり会しよう」

『……えっ?』

 部活に行こうとしたわたしと帰ろうとした麻由は紗弥に呼び止められた。急になにかと思えばいきなりそう提案された。

「お、お泊まり会?」

「うん。だって来週3連休じゃん?だからいいじゃん。お泊まり会しよ」

「それって誰の家で~?」

「わたしの家でいいよ」

 紗弥の家か……。行ったことないから行ってみたい!それにお泊まり会とか楽しそうだしいいかも!

「じゃあお泊まり会しよ~!ヤバい!すっごい楽しみ~!」

 麻由のテンションがいつにもまして高い。まぁいつも高いけど。

「乃愛も来るでしょ?乃愛が来なきゃ始まらないよ~!」

「……なんで?」

「そんなの決まってるじゃん!」

『ガールズトークするため!』

「……それだけのため!?」

 ガールズトークするためってお泊まり会でわざわざすること!?いつでも出来るじゃん!

「だってお決まりでしょ?修学旅行の夜は枕投げかガールズトークって決まってるの!」

「うんうん!」

 いやいや決まってないから!それに修学旅行じゃないし!

「まぁいいや。詳しいことは明日以降決めよ!わたし今から塾だから帰るわ!」

 そう言って紗弥は足早に帰った。

「なんだよ。自分で呼んどいて先に帰るなんて……」

「そうと決まれば許可取らないとなぁ。じゃあね乃愛!また明日~」

 紗弥を追うように麻由も帰って行った。

「それじゃあわたしは部活行きますか……」

 わたしは部室へ向かった。


「よし、今度の3連休はみんなで合宿しよう!」

『……はっ?』

 部室に入るなり真田くんが重要な話があるからさっさと座れ!とか言うから大人しく座って話を待ってたら……なにこれ?わたし、ついさっきも同じような言葉を聞いたような。まさかのデジャヴ?

「部長さーん……。合宿ってなんのためにするんですか?」

「演劇の完成度を上げるため。役者だけじゃなく裏方もだからみんな覚悟しろよ」

「質問しつもーん!」

 わたしは手を上げ、真田くんに質問しようとした。

「なんだ?」

「その合宿って全員参加?自由参加?」

「なに言ってんだ?副部長なんだから全員参加だろうが自由参加だろうが来るんだよ」

 真田くんは黒い笑顔でわたしに言った。……迫力がすごすぎて反抗出来ない。真田くんが怖い。

「え?俺らは?」

 続いて桐崎くんが真田くんに聞いた。

「あぁ言い忘れてた。役者は強制。脚本はもちろん強制。いなきゃ始まんねーよ」

「あ、そっか。うわー脚本って疲れるなー」

 ……桐崎くんドンマイ!

「あー、でもそれだと不公平か。よしやっぱ全員参加にする!どうしても抜けられない用事ある奴は……いないよな?」

 いない前提で話をしないで!用事ある人が言い出しづらいじゃない!

「はい、決まり。今度の3連休は合宿。場所は……学校所有の校地外の会館。今回は日帰りじゃなく3日間ぶっ通しだから」

「会館って2つあんの?」

「そうか、桐崎は知らないんだっけ?演劇部の定期講演会とかはこっちの小さい会館じゃなくて設備もしっかりしてこっちより大きな校地外の会館でやるんだよ」

「へぇーそうなんだ」

「で、日帰りじゃないってことはまさかそこで寝泊まりするわけじゃないよね?」

 そこが気になるところ。ちゃんとした合宿はこれが初めて。今までは朝早くから夜遅くまで練習して帰っていたから。だから寝泊まりする環境があるのかが知りたい。

「まさか。俺の親が経営するホテルの部屋にする予定」

『……えっ?』

 真田くんの言葉に耳を疑う部員。緋華を含むごく一部の部員を除いて。

「真田くんの親が経営するホテルって……?」

「あっ乃愛たちは知らないのか。真田ってこれでも裕福な家庭育ちなんだ。でもホテルと言っても超高級ホテルというわけじゃないから高校生が泊まっても大丈夫だよ!」

「おい、これでもってなんだこれでもって」

「細かいことは気にしない。気にしたら負けだよ」

「宮本……!」

  あー、もうこのリア充め。部活で堂々と。

「と、とりあえず合宿の話はまたあとで。みんな揃ったことだし昨日出来なかった通し練習をしよう。役者は桐崎にどんなイメージでやればいいか参考程度に聞きたい奴は今のうちに聞いとけよー」

 今のうちにか。やっぱり演じる前にヒロインの少女のイメージを掴んでおかないとね!

「あ、桐――」

「桐崎くん、わたしの役なんだけど……」

「桐崎、ここのシーンのイメージって……」

 あ、なんか出遅れた感がハンパじゃない。みんな考えることは同じか……。

「なんだ、如月はイメージ聞かないのか?」

 出遅れたことを悔やんでいると真田くんが声をかけてきた。

「……聞きたいけど桐崎くんがあの状態じゃ聞けないよ」

 役者の人に囲まれて一人一人にしっかりと役のイメージを教えてる桐崎くん。そんな忙しそうな彼に今聞くのはやめておこうと思った。

「それは、そうだな……。せっかくのチャンスが勿体ない。出遅れたあまりに」

「へっ?チャンス?ヒロインの少女のイメージを聞く?」

「ま、まぁ……」

 真田くんなんか歯切れが悪いなぁ。桐崎くん絡みでなんかあったのかな?

「大丈夫だよ。大体のイメージは掴めてるし聞こうと思えば聞ける……はず?」

「なんで疑問形なんだよ」

 真田くんは台本でわたしの頭を叩こうとしたが、間一髪叩かれなかった。いつも叩けると思ったら大間違い!わたしだって避け方を学んだんだから!

「残念。今日は叩けなかったね」

 わたしがそういうと真田くんは桐崎くんの方へ近寄った。そして、なんの前触れもなく桐崎くんの頭を叩いた。

「痛っ!いきなりなにすんだよ真田!」

「如月のこと叩けなかったから代わりに叩いた」

「ちょっと!なんでわたしを叩けなかったからって桐崎くんを叩くの!?桐崎くんが可哀想でしょ!」

「如月は入ってくんな!話がごちゃごちゃする」

「話をごちゃごちゃさせたのは真田くんでしょ!」

「話をごちゃごちゃさせたのはお前だろ!」

 わたしと桐崎くんはほぼ同時に真田くんの頭を叩いた。わたしは台本、桐崎くんは素手で。

「痛っ!如月、角で叩くなよ。桐崎の素手も地味に痛いんだけど」

「そんなの知らんわ」

「そんなん知るか」

 ……ホントこの部活の人はよくハモる。心が通じ合ってるみたいですごい。

 でもそのすごさは演劇で発揮してほしいと密かに思った。


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