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12.相手役が決まりました!

「あー!もう疲れたー!」

 家に帰って着替えもせず、すぐさまベットにダイブ。あまりにも疲れたので今にも寝てしまいたいくらいだ。

 もう……なんでたった数十分いなかっただけであんなことになってたの?わたしには理解出来ないよ……。やっぱり副部長はもう1人いた方がいいとわたしは密かに願った。


 ***


 あの後、部室に戻ったら案の定配役で揉めていた。

「如月の相手役やりたい!」

「俺だって!」

「あたしだって!男装してでもいいから乃愛ちゃんの相手役したい!」

「それじゃあ客が減るし、いろんな意味で危ない!」

 ちょっと……。なんでわたしの相手役でこんなに揉めるの!?わたしの相手役ってそんなにいいとこ取りだっけ!?

「あっ乃愛ちゃん!いいところに!乃愛ちゃん男子苦手だから相手役は男装した女の子の方がいいよね!」

 部員の女子が声をかけてくる。

「おい!そうやって如月を唆すな!」

 男子はそんなことを言った彼女に反抗している。わたしは未だに話の内容を理解しきれていない。

「ちょっと、ねぇ!一体なんでこんな――」

「あーもう黙れ!」

 とそこで真田くんが一喝。

「もう面倒くさいから部員全員でじゃんけんして勝ったやつが如月の相手役。異論は認めない。文句あるやつは即排除!一応言っとくが恨みっこなしだからな?よし、それじゃあやるぞ」

 そして始まったヒロインの相手役のじゃんけん大会。勝ったのは意外な人物だった。

「う、そ……だろ?俺の、1人勝ち?」

 声をあげたのは揉めている原因のシナリオを書いた張本人、桐崎くんだった。

「はい、じゃあ如月の相手役は桐崎で決まり」

『えぇー!まさかの脚本がヒロインの相手役かよ!』

「お、おい待てよ……!それはまずい!」

「まずくない。公平にじゃんけんで決めたことだ。それに最初に異論は認めないと言った。諦めろ」

 真田くんは冷たく桐崎くんを突き放した。


 ***


「にしても、なんであんなに相手役で揉めてたのかな……」

 そう思ってパラパラと台本をめくった。そして見つけてしまった“まずい言葉”。

 その“まずい言葉”はヒロインの告白シーンにあった。台本にはこう書いてあった。


『わたしは……貴方に恋してしまったの!だから、帰りたくない!貴方のそばにいたいの!』

 少女は王子に唇を重ねる。

『貴方が好き……』

『僕も、君が好きだ。離れたくない!』

 王子は少女を力強く抱きしめる。


「……はっ?く、唇を……重ねる!?」

 それってつまりキス、だよね……?ヒロインが王子にキスするの?わたしが、桐崎くんに……?

「う、嘘でしょー!?誰か嘘だと言ってぇぇぇぇぇ!」

 ままま……まさかのファーストキスが演技で……?しかもそれが桐崎くんと?

 え、嫌だよ……。だって普通はファーストキスって好きな人としたいじゃん!なのに……。なのにファーストキスの相手が同じクラスで同じ部活の二次元好きな人なんて!って言い過ぎか……。それにそれ言っちゃわたしだって二次元好きだし。ま、まぁ……優しいし実は少しかっこいいけど、そんなす、好きでもない人とキスなんて出来ないよ……。

 桐崎くんには分かっていた。だからそれはまずいなんて言ったんだ。部員にも分かっていた。だから配役であんなに揉めたのかは分からないけど……。

 分からなかったのはわたしだけ。わたしは最後までちゃんと台本を読んでいなかったから……。

 でも桐崎くんは直さなきゃいけない部分が出てきたって言ってたから多分あの部分を直すはず。桐崎くんだって好きでもない人とキスはしたくないだろうし。それがわたしと同じファーストキスなら尚更。

 それに演劇で使うのが桐崎くんの書いた脚本とまだ決まったわけじゃない。真田くんの書いた脚本ってこともある。今からこんなにテンパってどうするんだ!仮にも副部長、ここで落ち着かなきゃ一体いつ落ち着くと言うんだ!

 そして大きく深呼吸をする。大丈夫。わたしは焦っちゃいけない。焦ったらいろいろ失敗してしまう。

 脚本は脚本に任せておけばいいの。わたし達みたいな脚本に関しての素人は口出ししちゃいけない。役者は脚本のイメージしたものをきちんと表現するの。焦る暇があるならイメトレや腹筋しなくちゃ!焦ってもなにも始まらない!わたしはわたしができることをやらなくちゃいけないんだから。

 わたしはバッグから発声練習用の冊子を取り出して発声練習を始めた。


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