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11.演じました!②

 そして10分後、わたしは再び舞台へ。

「出来る範囲でいいからやってみてくれ」

「はーい」

 目を瞑って意識を集中させる。わたしはごく普通の女子高生。異世界に連れて行かれてしまう女子高生。そして王子に恋をしてしまう女子高生……。


 ***


 さっきの如月さん、まるで別人だった。本当に今から復讐を企む人間に見えた。今にも誰かを殺めてしまうような顔をしていた。

「さぁ、次の如月はどんなヒロインになるんだろうな」

 隣に座る真田が面白そうに言った。

「真田、さっきの如月さんの演技どう思った?」

「やっぱり如月はなにかを持っていた。一瞬あれが演技じゃないように見えた。それに、如月の演じたヒロインは俺のイメージした少女そのものだった」

「イメージした少女そのもの……」

 真田のやつでそれなら俺のやつだとどうなる?俺のもイメージしたヒロインになるのか?でも正直、少女のイメージ像はない。ただ如月さんに似合いそうなヒロインにしたかったから。

「そろそろ始まるんじゃないか?」

 真田に言われて如月に視線を向けると、いつもの如月さんじゃないように見えた。

「『……ここは、何処?いつもの場所じゃない……。それより、ここは本当にわたしの住んでいる世界?まるで異世界に来てしまったような気がする』」

 やっぱり。こっちの方が如月さんらしい。すごい、似合ってる……。

「『あんなに帰りたかった元の世界。でも今は帰りたくなくなったの!だって……王子様と離れたくないから……!』」

 すごい……。今にも泣き出しそうな顔をしている。恋してる女の子ってこういうものなのかな?

「さすがだな、如月」

「あぁ。すごい……。やっぱり似合ってるな……」

「まだ桐崎のと決まったわけじゃないだろ」

 そう言って真田は俺の脇腹に肘を打ちつけた。

「ぐっ……!」

 相変わらず痛いな……。真田の肘打ちは。

「少しは手加減しろよ、真田!」

「手加減したら意味ないだろ!お前のことだからあっさり躱すに決まってる!」

「ちょっとー!人が演じてる時にケンカしないでよ!」

 俺たちが言い合いを始めた途端、舞台上にいる如月さんに怒られた。

「だって如月さん!真田がいきなり肘打ちするから!」

「だって如月!桐崎が自分の脚本ですると決めつけてるから!」

 俺と真田はほぼ同時に言った。

「あーもううるさいっ!」

 やっぱり如月さんは如月さんだ。そしてシリアスな物語の主人公よりファンタジー系な物語の主人公が似合う。決して自分のシナリオだから贔屓してるわけじゃないけど……。如月さんっぽい。


 ***


 なんか……すごい!今まで演じた役の中で一番ワクワクした。なんて言うのかな……。たった数分の演技なのに充実感があったみたいな?

「やっぱりすごいな如月。たった10分休憩であれくらいの完成度なんて」

「いや、あれは特に気に入ったシーンの一節だから……!それ以外はまだなにも……」

「で、ぶっちゃけ演じやすかったのはどっち?」

 真田くんがそう言うと桐崎くんの顔は曇りだした。

「正直に言うと……桐崎くんかな?充実感みたいなのあったし。でも真田くんのは真田くんので我を失いかけるくらい役にのめり込めたし。だからわたしはどっちをやっても満足だなって思った」

『そっか……』

 2人はほぼ同時にため息をついた。なんか、優柔不断でごめんなさい。でもこれがわたしの本音。

「じゃあやっぱりみんなに決めてもらうしかないな……」

 呟くように真田くんは言った。

「えっなに?もしかしてわたしが演じやすかった方どっちかにする予定だったの?」

「あぁ」

「そのためだけに3人でここに来たの?」

「あぁ。あれ?俺最初に言わなかった?」

『言ってない!』

 わたしと桐崎くんがほぼ同時に言う。にしてもすごいなこの部活。よくハモるなんて。

「あ、マジ?ごめんごめん。でもまぁ演じてみての感想聞けたし、如月の演技がどれくらいのレベルか分かったし、脚本にちょっとくらい変更があるかもしれないな」

「俺も。もう少し変えなきゃいけないところが出来た」

 やっぱりわたし、役になりきれていなかったのかな?ヒロイン像をちゃんとイメージしたつもりだったけど……。

「……やっぱりわたしはダメだな」

「そんなことないよ」

 桐崎くんがわたしに声をかけた。

「演じてる時の如月さん、すごくいきいきしてた。それに真田の言うようにイメージしてたヒロインそのものだった。だから如月さんはダメじゃない。如月さんが演じるからこそ直さなきゃいけない部分が出てきたんだよ」

「桐崎の言うとおりだ、如月」

 真田くんも桐崎くんのそばにきてわたしに言った。

「如月がやるなら多分どっちのシナリオでも面白くなる。だからより面白くするために直しが必要なだけだ。お前の実力は関係ない。むしろ劣っているのは俺らの書いたシナリオの方だ」

「真田くん……」

「よし、部室に戻ろう。みんなにいろいろ話さなきゃいけないからな」

 そう言って真田くんは先に会館を出た。

「――俺達も行こっか?」

「うん……」

 わたし達も真田くんに続いて会館を出た。


舞原です。


今回は途中桐崎くん目線でした。

素人のくせにちゃんとした話を短時間で考えられる桐崎くんがうらやましいです(泣)


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