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10.演じました!①

 いつもは20人近くで来る会館。たった3人だとすごく広く感じる。

「如月。少しだけ主人公演じてみて」

 舞台の上に立っている真田くんがわたしに向かって叫んだ。

「えっ?今!?」

「今。早く舞台にあがってこい」

 何故か真田くんには逆らえず舞台へあがってしまうわたし。

「俺の書いたシナリオの主人公、ちょっとでいいからやってみて。はい、舞台の真ん中に行って」

 言われるがままに舞台の真ん中へ。そして記憶を辿ってセリフを思い出し、情景をイメージする。うん、いける。


 ***


「なぁ真田、なんで俺たちだけこっちに?」

 舞台から降りて桐崎の元へ行くと彼は俺に言った。

「まぁ黙って見てろよ。如月の演技」

「なに?如月さんそんなに上手いの?」

「いや、分からない」

「はっ?」

 桐崎は驚いた顔で俺を見た。だったらなんで如月さんに演技をさせるんだと言いたそうな目で。

 何故かは分からない。けど直感で如月はなにかを持ってると思った。今までの演技を振り返るとそうだ。端役でも観客の心を奪っていた。アンケートの感想欄にも如月の演技についての好評が多かった。多分主役にすればいける。だから試しに如月をヒロインとするシナリオを作った。

「如月。そろそろ始――」

「『わたしは許さない。父と母の命を奪った殺人犯を……!』」

 俺の言葉を遮って如月は低い声で言った。――これは俺の台本のセリフだ。

「『もうすぐ時効になってしまう。その前になにがなんでも殺人犯を見つけて復讐するんだ!父と母のためにも!』」

 一瞬如月の顔が恐ろしく見えた。本当に復讐を企む人間に見えてしまった。

「う、そだろ……。如月さん……」

 隣で黙って見てた桐崎は驚きの声をあげた。俺もこれには驚いた。まさか如月の演技力がこれほどのものとは思わなかったから。

「『でも、本当はしたくない……。わたしはただ、幸せになりたい……!』」

 涙を流して如月が言う。ちゃんと主人公の心情を読みとっていた。如月の演じてる少女は俺のイメージした少女そのものだ。

「ありがとう。如月。一旦ストップ」


 ***


「はっ!」

 真田くんの声で我に返る。2人を見ると驚いた顔でわたしを見ていた。

「あ……やっぱりダメだった……の?わたしの演技……」

「いや、むしろ逆。よすぎてなにも言えない」

 良すぎてなにも言えない……?

「そ、そんなわけない!わたし、我を失いかけてたし……!」

「それでもいいんだよ」

 真田くんは舞台にあがってきた。

「だからこそ如月の演技に心奪われる人がいたんだ。如月はすごい」

「ホント如月さんはすごいよ」

 桐崎くんも真田くんに続いて舞台にあがった。

「こんな人に俺の書いたシナリオの主人公を演じてもらえるなんてすごく嬉しい」

 桐崎くんは笑顔でわたしに言った。一瞬鼓動が速くなった気がした。胸が締めつけられるような感覚に陥った。

「おい、まだどっちのか決まってないだろ!」

 真田くんがすぐさま鋭いツッコミをいれた。

「まさか真田、お前あんな役を如月さんにやらせるのか?」

「あぁ。だったらなんだ?」

「正直あれは如月さんには似合わない!俺の書いたファンタジー系の方が……!」

「お前はどんだけ現実離れした話が好きなんだよ!」

 真田くんは持っていた台本で桐崎くんの頭を叩いた。なんか話の主旨が変わってない?

 てかやっぱり2人って……。

「――ガキみたい」

『ガキじゃない!』

 真田くんと桐崎くんは口を揃えて言った。

「ほら、そうやって言い返すところとかも」

『だからガキじゃない!』

 またハモってる……。それに今わたしはガキなんて一言も言ってないのに。

 そんなガキっぽいところがちょっと可愛いなんて思うわたしは可笑しいかな?

「よし、じゃあ次は桐崎のやってみろ」

「えっ!?まだ少ししか読んでないのに!?」

 桐崎くんの書いた台本はまだあらすじしか読んでない。セリフも最初のほんの少ししか覚えてない。てかこの流れで桐崎のやつやるの!?

「じゃあ10分だけ待つ」

「わ、分かった……」

 それから10分間、わたしは必死になって台本を読んだ。


舞原です。


今回は途中真田くん目線で話が進みました。

多分これからもちょいちょい目線が変わります。


そして恋愛要素を段々多くしていきます!


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