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とあるバレンタインデーの裏話

チョコをくれた香織がその後でつぶやいた内容とは・・・

 俺には香織という名の美人の彼女がいる。

 グルメな彼女は、俺の豊富なレストランの知識がお気に入りのようだ。

 いや、俺でなくては、彼女の舌を満足させる店を案内することはできないと言っても過言ではない。彼女が俺を選ぶのは当然のことだ。

 しかし、香織は決して俺に携帯番号を教えてくれない。なんでも、しょっちゅう番号を変えているから誰にも教えていないのだと言う。

 その代わりに俺は、彼女のツイッターIDを教えてもらった。kaori0031――それが香織のIDだ。早速俺は彼女をフォローし、連絡はすべてツイッターで行っている。

『今日、友人にお寿司屋に連れて行ってもらった。とてもいいお店で、大トロが最高だった』

 そんな風に、香織は俺が連れて行ったレストランの感想をちゃんとつぶやいてくれる。それは大変嬉しいし、俺のレストラン探しの励みになっている。


 そしてついにあの日がやってきた。

 バレンタインデー。

 俺は、この日まで秘密にしてきたとっておきのフランス料理店に香織を誘う。

「美味しい! これ本当にご馳走してもらってもいいんですか?」

 クリクリとした可愛らしい瞳をさらに大きくして香織が舌鼓を打つ。美人が喜ぶところを見るのは本当に楽しい。今日のレストランは少し値が張ったが、これから行われるイベントのことを考えるとそれだけの価値はある。

「本当に美味しかったです。最後になって申し訳ないんだけど、あなたに渡したいものがあるの」

 さあ、来た!

「はい、これ。ちょっと出来は悪いんだけど、心を込めて作ったから」

 そう言って香織はピンクの四角い箱を俺に渡す。

 恥ずかしそうにうつむき、ちょっと上目遣いで俺のことを見る仕草が本当に可愛らしい。

 しかしその次の彼女の言葉は、少し残念なお知らせだった。

「ゴメンなさい、今日はこれから用事があるの。今の気持ちはちゃんとツイッターでつぶやくから許してね」

「わかった。チョコありがとう。じゃあ、気をつけて」

 俺は彼女を見送り、一人レストランに残って食後のコーヒーをゆっくりと楽しむ。そして携帯でツイッターをチェックすると――移動中に書かれたと思われる彼女のつぶやきが投稿されていた。

『美味しい料理をご馳走してくれた気になるあの人に本命チョコをあげちゃった』

 ――むはははは。やったよ、本命チョコだよ!

 ――フォロワーの連中よ、このつぶやきをちゃんと見たか?

 ――気になるあの人って俺のことだぜ。

 ――申し訳ないな、本命チョコをもらっちまってさ。

 俺は一人ほくそ笑みながら、香織からもらったチョコの箱を大切に鞄の中にしまった。



「もしもし、津部谷君? 予定通りにツイッターでつぶやいておいてくれた?」

『ああ、香織か。三分前にkaori0031のIDで「美味しい料理をご馳走してくれた気になるあの人に本命チョコをあげちゃった」ってつぶやいておいたぜ』

「それでOKよ。ありがとう」

『いい加減、俺の名前は"つぶや"君じゃなくて、"つべたに"と本名で呼んでほしいんだが』

「いいじゃない、つぶや君で。あんたは私のツイッター専用の男なんだからさ。そうそう、今度は二時間後くらいにkaori0017のIDで『美味しいお酒をご馳走してくれたあの人に本命チョコを』って感じでつぶやいてほしいんだけど」

『あんたも頑張るね』

「なに、文句あんの? あなた、私のつぶや君やめる?」

『いや続けさせてくれ。あんたみたいな美人の裏側を知るのは面白いからな』

「じゃあ言われた通りお願いよ。じゃあね」

 そう言って電話を切った香織は、携帯をバッグにしまい次の約束のバーへ向かった。

次は、『嘘から出たクチとイチ』です。

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