お嬢様学校に通っている幼馴染が猫をかぶっているR2
俺の幼馴染の女の子、彩佳はお嬢様学校に通っている。
朝の挨拶で同級生に対して「ごきげんよう」、だなんて言って微笑むようなところに。
俺はごく普通の学校に通っているんだけど、俺のとこの学校とお嬢様学校の距離が近いせいか、街中でよく彩佳の顔を見る。
実は、今は引っ越したとはいえ、幼い頃はご近所同士だったんだ。
ちょっと庭とか含めて広い家だったけど、幼馴染の家は普通の家だ。
よくお邪魔させてもらったよ。
だから、今でもその時の関係が続いていて、よく話をするんだよ。
いつも交わすのは、明日の天気とか宿題がどうとか、なにげない話ばかりなんだけど、たまに物騒な事も言い出す。
組の連中がどうとか、ケジメがどうとか。
俺達はそろって中学二年生なんだけど、まさかこの目で本物の中二病を目のあたりにするとは思わなかったぜ。
「つーわけで、まじだりぃんだよな。毎回集会の手伝いすんのはメンドくせーぜ。野郎どもがすーぐ喧嘩をおっぱじめるしよぉ」
うん、今回は何とか組の集会を手伝ってたって設定かな。
とはいっても、別に人に迷惑をかけるような病じゃないから、影からそっと見守っていくのが一番だ。
こういうのって、人から指摘されるのは恥ずかしいだろうし。俺も何をどういっていいのか分からんし。
今も一緒に学校帰りに、お喋りしながらクレープはんぶんこしてるけど、幼馴染の眼帯には何も言及できていない。
たまに彩佳はこういうことするんだよね。
場所は、左目だったり右目だったり。
魔眼か邪眼が宿ってのはどっちなんだい?
中二病するのはいいけど、もうちょっと設定を統一しようぜ。
心の中の言い表しようのない感情を抱えつつも、彩佳と過ごす時間は楽しい。
適当にお喋りして、何も考えずに気安くつきあえる人間がいるってのはいいもんだな。
今日も学校帰りに待ち合わせて、彩佳とゲーセンで遊び倒した。
そんな風にしてると、そろそろ夕暮れだ。
もう家に帰るかってなった時、どこからか顔の怖いお兄さんたちがやってきた。
「ああん? この間はよくもやってくれたな。お前がメビウスの人間だってことはわかってんだよ。覚悟はできてるんだろうな」
人違いですうううう!
どなたか存じ上げませんが、俺のようなか弱いモブとお嬢様学校の制服来た女の子を、どこぞの暴走族の方と間違えないでくださいねええええ!
心臓が縮んじゃうじゃん!
なんて震えあがっている俺とは対照的に、見た目とは反対に肝が据わっている彩佳は、お嬢様らしい所作で、こまったように小首をかしげて。
「もうしわけありませんが、どなたかとお間違えではありませんか? わたくし達は、めびうすさんではありませんので」
っていうと、さすがに目の前の兄さんたちは、人間違いに気づいたようだ。
顔が似てるけど、違うとか。
声が似てるけど、違うとか。
オーラが似てるけど、やっぱり人違いだろ、とか。
そんな事を言い合いながら離れていった。
オーラってなんやねん。
ともあれ、そんなに彩佳は物騒な人に似ているんだろうか。
じっとみつめてみても、可愛い顔にしか見えないし、アウトローの世界に浸っている人間には見えない。
「あ? なんだよ才人。人の顔ジロジロみてんじゃねーよ」
「さーせん」
まあ、ごらんのとおり言葉遣いが悪いから、普段はちょっと猫かぶってるけども。
その後彩佳と適当に離した後、それぞれの家へと帰った。
「ただいまー。おう、ゴン帰ったぞ」
アタシは、玄関で出迎えてくれるピッドブルのゴンをなでながらため息をつく。
まったく可愛い奴だ。
ちょっと厳つい見た目だけど、臆病でこの間木から降りられなくなっちまってたしな。
受け止めた時に顔面に落ちてきたから、しばらく眼帯をつけなくちゃならなかったのは不便でしょうがなかった。
でも手がかかるから手放すなんてそんなのは駄目だ。
薬の密売組織で、長年人から痛めつけながら運び役をやってたんだ。
家族にしたからには責任をもって幸せにしてやらなくちゃな。
アタシはゴンをわしゃわしゃ撫でまわしながら、さっきのやりとりを思い出す。
「しっかし、あいつ、昔っからほんと鈍い奴だよな。おかげで全然家のこと正直にはなせねーじゃねーか」
そのタイミングで、家の中からどたどたと足音を立ててきたのは、ガタイのよい男性達。
「「「おかえりなさいませ!!! お嬢様!!!」」」」
「やめろっての、近所迷惑だろ!」
それぞれ顔に傷があったり、服の下の肌に何かが書いてあったりする彼らは、一般人にはどうしても見えないものたちだ。
「はぁ、いつ本当の事言えばいいんだよ」
自分の家が一般家庭じゃなくて、裏社会に関わる家だということを。




