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唐突の異世界

 暗くなり始めた時間帯、街灯のチラつく薄暗い路地を歩く。


「勢いだけじゃうまく行かないな。もっと考えて行動すべきだった」


 親元を飛び出し、勢いだけで都会に上京して有名高校へとやってきたのはいいものの、生活費が足りず親にも安易に頼れずどうにかバイトで食いつなぐ日々。


「節約しないと、学費も多いし、バイトばかりで勉強する時間も少なくて授業についていけなくなってきたし」


 悩みは尽きない。夢を持ってやってきたのに、厳しい現実に容易く打ち砕かれた。


「うまく行かない、足りないものも多いし計画通り進まない。いっそのこと一度帰って、いやだがな……」


 理想と現実のギャップに嫌気がさしていたとの時だった。



「ん?え――」


 街灯が一瞬途切れ、視界が暗転し、次の瞬間に開けた目の前に広がるのは、見たこともない草原の景色。砂ぼこりが舞う戦場の匂い、小さく見えるほど遠くに巨大な樹――ユグドラシル――がそびえ立つ。


「…ここ、どこだ…?」


 思考が現実に追いつかない。手元を見れば、制服でもスマホでもなく、戦闘用のマントと装備。体の感覚も妙に力強い。

 そのとき、脳裏に情報が浮き出て――


「ここはユグドリメリア大陸、魔法大国アンティスと魔導科学国家マギアスの戦地、転生者はチート持ちで英雄……」


 混乱する中、周囲を見渡すが、そこにいるのは軍服を着た人間たちと、遠方で魔法を扱う兵士たち。情報は次々に入ってくるが、他人のことは分かっても自分のことはからっきしだ。


 だが一つだけわかることがある。


「転生?え?いきなり?なんで?」


 どうやら、自分はこの世界に「転生」してしまい、英雄として強制的に駒にさそうになっているらしい。てか逃げられないだろう、すでに感づかれている上に、そもそも得た力込みでも俺は単独でこの世界を生き残るだけの力はない。


「……どうすればいいんだよ」


 高校生だった頃の自分なら、思わず悪態をついただろう。しかし、この世界での生存には、悪態も笑いも許されない。やることは山ほどあり、資源不足が原因で大国に戦争を仕掛けた国家、北の山脈からやってくる魔物の脅威、そしてこの大陸だけでも難儀なのに、他大陸の勢力も視野に入れねばならない。


「とりあえず…生き延びるしかない」


 そう呟くと同時に、マギアス側の使者が自分の元へとたどり着き完全に逃げ場を失うのだった。



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