6.死ぬ前に食べたい物の引き継ぎ
田舎の全然客が来ないコンビニ
そこで働く夕勤、22時までの高森
夜勤22時からの生田
本当は無くてもいい引き継ぎの30分
ちょっとした時間のお話。
「死ぬ前に食べたい物って何?」
22時、夜勤の生田がレジカウンターに頬杖をつきながら言う
「なんや急に、3学期か」
夕勤の高森が喋る事が無くなってきた学生に例えて返す。
「よくみんな話すやん、死ぬ前に絶対これ食べるとか、死ぬ前に何食べたいとか」
「確かにな、そんなこれって物は無いけどなぁ、」
「なんかあるやろ、言えって」
「いや、そんな食に興味ないしなぁ、」
「絶対みんなあるねんって、言えよ」
「まぁ強いて言うなら、おかんが作った卵焼きかな」
「言えって」
「なんで不採用やねん、おかんの卵焼き
勝手に落とすなよ」
「あー、ごめん。お母さんの卵焼きね」
「生田は何食べたいん?」
「俺はお母さんの作る、冷奴」
「あれほぼおかん関係ないねん
豆腐やから、素材感強すぎんねん」
「そんな事ないやろ、お母さん自慢の冷奴やで」
「おかんも私の実力です、どうぞって思ってないで」
「せっかく作ってくれるのにそんなん言うなよ」
「作ったじゃなくて、置いた、やから
聞いたことある?おかんが
冷奴作っといたで〜
聞いたことないやろ、冷奴置いといたで〜やろ」
「え、だからやん」
「なにが?」
「ずっと思ってたんよ、死ぬ前に食べる物で
おかん系の食べ物言う人おるけど
なんでおかんより先に死ぬと思ってんねん」
「どーいうこと」
「死ぬ前に食べたい物やで、死ぬ前におかんが作るって事は先死んでるやん、」
「いや、そこまで深く考えてないやろうけど」
「死ぬ前に食べたい物はおかんの卵焼きです
って親想いの好青年のふりした、たけのこ派やで」
「俺がいつおかんの卵焼きって言いながら
きのこの持つとこが嫌いやねんって話してたん」
「ほんでもっと言うと
お前が80で死ぬとしてお前のおかんは100超えてるやろ、100越えをキッチンに立たしたるなよ」
「考えすぎやろ、そこまで誰も考えてへんわ」
「100越えに卵割らすな
双子の卵出てきたらひっくり返って死んでまうわ」
「お前100年の経験なめんなよ
100年生きてたら双子卵なんか何回もみてるわ」
「その分な、俺の冷奴は
置くだけやねん」
「うるさいんじゃぼけ」
「考えてみ、100歳超えたおかんは
立ち上がって皿の上に豆腐を置く
だけ」
「なんかかけるやろ、醤油とか
100歳超えてたら醤油かけたりネギ取ったりするのもしんどいやろ」
「お前の卵焼き卵割ってから何行程あんねん
巻けるか?卵を、巻けるのか?
絶対途中でぐちゃぐちゃになって元からスクランブルエッグ作る予定やったみたいな動きすんぞ」
「もーええわ、なんの話やねんこれ」
「あとさ、死ぬ前に食べたい物ってさ
自分が死ぬ時期分かってな無理じゃない?」
「そんなん体調悪なったり、入院しててもう無理やなって時やろ」
「持ち直すパターンあるやん」
「いや、持ち直したら次の日も食べたらいいねん」
「気まずいやろ、死ぬ前にこれだけ食べさせて下さいって言っといて持ち直したら
持ち直したー!ってなるわ
俺が看護師やったら合コンで仕上がるぐらい話すで」
「人の持ち直しエピソード勝手に仕上げんなよ
気まずないやろ、ほんなら次の日も食べたらいいやん」
「また持ち直したら?」
「じゃあ死ぬまでのご飯全部それにしたらええやん、じゃあ死ぬ前に食べれるやん」
「終盤もう嫌いになってるわ
毎食冷奴は病院側に問題あるってなるぞ」
「それはお前が冷奴選ぶからやろ
じゃあハンバーグとか挟めよ、冷奴と挟んでいったら飽きる事ないやろ」
「ハンバーグの時に死んだら全員笑い転げるやろ」
「どんな病院やねん
ほんならハンバーグの時、全力で耐えろよ
死にそうなってもぐっと我慢すんねん
ほんで次の日の冷奴に繋げろよ」
「お前な、もし俺が毎晩ハンバーグ食べた後死ぬの耐えてるの見たら
周りの患者が最先端の薬やと思って
毎晩ハンバーグ食べだすぞ」
「もーええわこの話、一生終わらん」
「とりあえず帰って豆腐ハンバーグ食べてみる」
「それやったら両方いけるとかないやろ
もー帰るわ」
高森はあがった




