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おっさんの引き継ぎ

田舎の全然客が来ないコンビニ

そこで働く夕勤、22時までの高森

夜勤、22時からの生田

本当は無くてもいい引き継ぎの30分

そのちょっとした時間のお話。



「いらっしゃいませ」


さっきまでダラダラしてなかったかの様に夕勤の高森が言う


「兄ちゃんちょっとええか?」



50代後半の歯の抜けた明らかに酔っ払った男性客。

高森の緊張感が高まる。



「どうされました?」



「競馬新聞ないんか!競馬新聞!どこ探しても無いわ!」



「すみません、競馬新聞はうち取ってないんですよ」


、、、、、



「あー、そうか、わかった」



店を後にする男性客


「ありがとうございました」






「おいおいおいおい、」


21時50分少し早く来ていた夜勤の生田が言う





「あんなおっさんにしては引くの早すぎるやろ。」





「そんなことないやろ、確かに覚悟はしてたけど」



「普通あんなおっさんは、競馬新聞置いてないんですー、の後

なんで競馬新聞置いてないねん、どんな店やねん、店長呼んでこい、

こっからがスタートラインやろ」



「確かに、ゴール見えへんしな」



「そっから他の店やったら置いてる、近いから来てるだけや、こんな所2度と来るかぁ、他の店行く、って言われて

最初から他の店行けよ、

より近くに住んでる事に絶望するわ」



「絶対また来るもんな家近かったら」



「それに比べて何?あのおっさん

酒片手に歯抜けて、競馬新聞欲してんねんで?

ビンゴやん?俺やったらビンゴの人ー!って言われる前に手あげるわ」



「汚いビンゴやで、要らん景品ばっかりやろ」



「まって、

ビンゴやとしたら真ん中のフリーが開けへんか

、、、

違うわ、あの人仕事してないっぽいから空くわ!」



「フリーターのフリーでビンゴちゃうねん」



「まってビンゴって5列やんな!あと1個要るか

じゃあ、なぜかあんなおっさんが着てる白いベストでビンゴにしよう」



「こっちで決めんのせこいねん、自信持って手上げられへんやろ」



「でもさ!ビンゴやったら


「ビンゴの話もーええわ

近くに住んでるおっさんぐらいゴール見えへん」





店内放送の耳につきすぎる歌が店内に響き渡る





「いらっしゃいませー」



「おい兄ちゃんーー」



60代前半の歯が抜け、酒を片手に持った男性客が来店する

さっきの男性とは別、だがスイカゲームで言えばぶつけたらちょっと大きな果物になりそうだ



高森が小声で言う


「2連チャンかよ」


生田がさらに小声で言う


「黒のベストかよ」



高森が少し後ろに下がり

今回はビンゴならずの生田が対応する



「どうされました?」



「競馬新聞ないんか?」



「あ、すいませんうちには置いてないんです」



「はぁ?競馬新聞置いてないコンビニなんかどこにあんねん

ええから出せや」



「申し訳ありませんが、うちには置いてないんです。」



「客が欲しいものを売るのが仕事やろ?

お前らやる気あんのか?」



「申し訳ございません。」



「店長呼べ!今すぐ店長出せ!」




おっさんがスタートラインに立った




「はよ呼ばんかい!店長出せ!!」



クラウチングスタートである



「普通コンビニは競馬新聞置いてんねん

ここぐらいやぞ」



2人の頭の中はマナとカナぐらい同じであった

いや、マナとマナぐらい同じであった



家が近いのかどうかだけ教えてくれ




おっさんが言う


「こんな所2度と来るか!

おいお前ら、



家近かったら嫌やな見たいな顔してるな」



3連単的中である



「残念ながら向かいのアパートに住んでるわ

次来るまでに競馬新聞入れとけよ!

それからなぁ!」


生田が横目で隣を見ると使い古された電子レンジしかない



高森は上がった


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