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自分らしく異世界を謳歌する転生者は狂気的~ゲームの世界?いいえ、もはや異世界です。  作者: 黒白のアレ。
第2章 転生者はある程度で満足するもの
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閑話 デコイくんの一日。


▽▽▽《デコイくん視点》



 私は、オリジナルの私より造り出されたデコイ1号。


 今から丁度六時間前に、この世界に存在した魔法によって造り出された、半生命半魔力体。


人形魔造デコイ》と言うオリジナル魔法によって造り出された。


 魔力と言う素材を材料に、魔法によって造り出された存在。


 オリジナルの私をモデルに、姿形から人格までもを模倣した、けれど少しだけ性格にだけ違いが出た、偽物の私。


 私は彼をオリジナルと呼び、オリジナルは私を、食いしん坊の偽物、略して"食い物"と呼んだ。

 よって私の事はこれから食い物、と呼んでくれて構わない。


……食い物だと分かりにくいだって? それでは、これからは食い物、ではなく【食い物】と、カギカッコをつけて表すことにしよう。それならば問題はないだろう?






 朝だ。今はこの世界の時刻で、午前七時頃。


 魔造の存在である私でも、生命ではあるため、まだまだ眠気の残り、朝日が瞳に差し込む様な良い時間帯だ。


 私の身体は、オリジナルとは違いデコイとしての役割を果たす為、通常の人族と同じ様に、睡眠時間を短縮できるようには出来ていない。


 その為、六時間ほど前に造り出された私は、睡眠時間が十分に取れていないため、少し寝不足気味だ。


……あぁ、眠い。



 少ししたらリベルスタ家の面々も瞼を開き始めて、朝の支度をすることになった。

 今日は家族で王都旅行……もとい両親のデート(子供たちを連れて)に行く予定なのだ。


……だから屋敷の時よりも早く起きる羽目になったのだ。

 何時もならば、兄上達何て鼻ちょうちんを浮かべて爆睡している頃だろう。

 そのせいか、何だか眠そうだ。

 そして恐ろしい程の速度で瞼を擦っている。そのうち火でも点くんじゃないだろうか。


 あぁほら、母上に止められている。



 各々の目が覚め、顔を洗えば一大イベントの始まりだ。


 そう……"朝食"だ。


 何を隠そう、私は食べることが好きなのだ。


 朝起きて、胃の中に何も無く、口の中が粘り付き、舌の上には唾液の生暖かい味があるだけ。


 その状態で食べるご飯はまさに至高と言っても過言では無いだろう。

 

……無論、それ以外での食事も、至高の行為だ。


 異論は認めるよ。



 楼閣の食事は、バイキング形式にビュッフェ形式、注文して宿泊している部屋まで持ってきもらう、ルームサービスなど多岐に渡るが、朝食はルームサービスにするらしい。


 魔導科学の発展したこの世界では、ルームサービスであれど出来たてほやほやの状態を維持したまま食事を提供できる、なんて効果を持った魔導具もあるらしく、朝食として注文されていた料理には湯気がたっていた。


「うまいッ!!」

 

 何処かの列車に乗った隊士に似た言葉をニアルス兄様が挙げているが、事実、ここの料理はとても美味である。

 前世の記憶を保持する私からしても、美味と称すのに躊躇いがないほどの料理だった。


 とても美味しい。食べても食べても食欲が湧き出てくる。永遠に食べていたいくらいだよ。


……そしてニアルス兄様、口元に食べカス付いてますよ。

 フタルト兄様も、うなじにまでスープが跳ねるのは見たこないです。






 街中だ。ご飯を食べてから少し経った。


「アテル、フタルトッ! ほら! あそこ行こうあそこ! 見ろよあれ!」

「アテル、行こう!」


 デコイとは言え、オリジナルでは無い偽物とは言え、記憶や感覚を共有しているため、家族の呼び方や関係性に、特段違和感や嫌悪感を持つことはない。


「フフフッ、急いではダメよ?」

「はいっ! 分かりました! 母上。それじゃあ行こう! アテル、フタルト!」

「う、ぅん。行くよ」

「分かったよー」


 だから、こうして至近距離で唾を掛けながら大音量で話されても、手首を握りしめて連れていこうとされても、満面の笑みで楽しそうにしているニアルス兄様やフタルト兄様を見ても、別に嫌悪感を抱くことはない。






 それにしても、ニアルス兄様は剣が好きなようだ。


 武器全般好きなようだけど、特に剣状の武器には目を輝かせている。


 母上が護衛兼お財布係として来たセバッスをお供に、ニアルス兄様に引っ張られて行った私達が来たのは、武器屋。


 そう、武器屋だ。なんの変哲もない、この世界ではありふれたものの一つ、武器屋。


 ファンタジーものでは定番のヤツだね。


 そのほとんどが性質上人類種の敵として知られる、魔物が蔓延るこの世界では、武器が必須なんだろう。


 魔導科学が前世と同じかそれ以上に発展していようとも、この世界では武器屋がありふれた存在になるくらいには、需要があるらしい。


 だからこそ、と言っていいのかは分からないけれど、ニアルス兄様は剣を扱う存在、剣士に憧れを抱いている様だ。



 軋む床、鈍色に輝く刃物の数々、粗悪な品々……なんてことはなく、魔導科学の技術発展に伴い、きちんと並べられた木製の板材達に、暑くも寒くもない調節された室温。

 丁寧に研磨され光を反射する刃物の数々に、テンプレートからヘンテコな形状の武器まで幅広い武器達が並べられ、店の奥からは熱された鋼を叩く、心地よい音が響く。


 此処は、そんな武器屋こと【ナーミ工房】だ。


 前世の言葉とは似ても似つかない文字で、工房前の看板にそう書いてあった。


 ナーミ、ナミ、なみ、並、普通……。

 多分気のせいだろうけど、店の中には普通、並レベルの品質の武器達しかなかった。


 ニアルス兄様はそれでも、目をキラキラと輝かせていたから、相当剣が好きなのだろう。


 フタルト兄様はどうしていたのかって? フランベルジュとクナイで二刀流をしていたよ。

 勿論、セバッスの見守り付きだ。



 武器屋を出てからは、七色に輝く不思議なゼリーを食べたり、セバッス財布からくすねたお金で兄上達から隠れながら、屋台の食べ物を堪能したり、フタルト兄様がドラゴンと剣のキーホルダーを買ったりして過ごし、そこから更に母上達と合流して昼食を食べ、また暫くは母上達の少し遠くを歩き、また暫くは母上達のデートの邪魔をしないよう少し遠くを歩き、リベルスタ家の各々が、王都を堪能していた。


……私の隠れ食べ歩きを、偶然にも一部始終見ていた金髪のチャラ男くんには、何だかドン引きされた様な目で見られていたよ。


 仕方ないね、これも全部食べ物が美味しすぎるのが悪いのだ。

 それに、オリジナルの方が空腹のせいで、感覚共有がされている私はいくら食べようが空腹を感じてしまうのだよ。


 嬉しいことにね。



 そんな感じで王都をぶらぶらと歩いていると、何やら人集りが。


 人だかりとは言っても、数十人とかそういう規模ではなく、数千人とか、そんな規模。


 白を基調とした、巨大な神殿のような建物が半開きになって、屋根はあるものの、外の人からも見る事が出来る様な構造になっている場所の中心部に、注目が集まっていた。


…………あぁ! そういえばあったね、魔力測定。


 食欲に思考が削がれすぎて若干忘れかけていたけれど、そう言えば私は魔力測定のため、この王都まで来たんだったね。


「は、母上……っ。あ、あそこ、見に行きませんか?」


 観光のほとんどを先導してはしゃぎにはしゃぎまくっている母上に、話しかけてみる。

 私も何日か後に魔力測定を受ける身なのだ、興味があるのは何らおかしくはないだろう。


「そうね、少し見てみましょうか。貴方もいいかしら?」

「まぁ、もう少ししたらお前も受けるのだから、興味も出るか。いいぞ、見に行こう」


 魔力測定の会場は、縦半分に切ったドームが覆い被さる様な形で、尚且つ神殿のような神々しさの漂う場所で、裏方には大きめの研究施設が連続して建つ場所にある。

 この魔力測定の施設も、ただ測定するだけでは勿体ないからね、研究施設だったり魔力関連の施設や店が並んでいる。


 公の場で魔力測定をする理由は単純に、不正防止の対策である。

 過去には、プライバシーの観点から個室で各々受ける形にしたこともあったそうだが、力のある貴族や商会に財閥からの、賄賂や脅しによる結果の偽装が立て続けに起きた為、やり方を変えていって、この形になったらしい。


 私達の隣に座っていた、眼鏡をかけたチェック柄のワイシャツ三人衆がそう、ブツブツと講釈を垂れていたから、多分そうなのだろう。

 ありがたいね。私からしたら。


「アテル、次はあの子がやるらしいぞ。よく見ておけ」


 故に、魔力測定では記録が表示され、更にはその記録が偽装されていないか確認する為の、魔力量を見ることのできる魔導具を所持したスタッフも配備されているらしい。

 ちなみにこの場では、身体の外に魔力を放出することが出来ない様、結界が貼られている。

 つまり、魔力測定の最中に、外部からの干渉行うことができない。

 尚、スタッフの持つ魔導具に関しては、特殊な魔力波に調節することによって、扱うことができるらしい。


「平均より大分高いな」

「俺よりは、少し低いな!」

「そうね、ニアルスはもう少し高かったわね」


 魔力量の平均値は、ブロック換算で数えていた魔力量でおよそ3480くらいで、この国の標準的な数え方で、約3000と言ったところらしく、今魔力測定を終えた彼は、だいたい4500から4600あたりに数値がぐらついていた。

 多分、魔力制御があまり得意ではないのだろう。


 4500の魔力量がどれくらいなのかと言うと、普通より少し努力を積めば、天候を変えることの出来る魔術を使用できる、と言ったところだ。

……今の私なら、何処まで出来るかな?


 魔力測定は、例年平民から測定し始め、最終的に権力のある貴族、果てには王族の測定で終わる。

 だから、私の番はもう少し後と言う事だね。


 異世界の王国とは言え国はものすごく多いため、今居る魔力測定会場の他にも、王都内に幾つかの会場があり、その中でも一番広いのが、今居る所という訳だ。






 夕方だ。帰宅途中だ。



「しかしまぁ、今年も豊作だったな」


 渋い声で、強面が背中に子供を抱えながら呟いた。


「ええ、そうね。私達の時よりも凄いんじゃないかしら」


 ご機嫌の微笑みを浮かべた夫人は、過去の記憶に花を咲かせる。


「そうなんですか!? 母上!」


 元気ハツラツな声色で、少年は楽しそうにして。


「は、母上の時は、どうだったの?」


 自信が無さそうな少年も、優し気な笑みを浮かべて。


「Zzz……」


 広い背中に身体を預けた少年は、瞼を閉じて。



 平穏な家族の道筋には、背後に従業員達が居ることを忘れさせ、辺りを和ませる。


 そんな、偽物が混じった一日は、幕を閉じた。



▽▽▽【備考】


・【魔力測定】


 魔力測定とは、魔力量を測定する……だけの行為ではない。

 魔力を用いて身体の隅々を測定する、略して"魔力測定"と呼ぶのだ。

 測定された結果は、そのまま【ステータスプレート】と呼ばれる、ホログラムの様な個人専用の魔導具に転送され、測定した者はそれを受け取る。

 魔力測定時、魔力量だけが表示される理由は、数値として測定しやすく、それでいて魔力量と言うのはそれだけでこの世界ではステータスとなり得るから。



・【ステータスプレート】


 ほとんど物質性を持たない魔導具。

 魔力測定によって測定された魔力をステータスプレートの魔導具に紐付ける事により、所有者のみ使用できる魔道具となる。

 本体の形状は、とても薄いシートのような物で、所有者と紐付けされた魔力と同期すると、所有者の体内側に装備される魔導具。

 身分証明書、クレジットカードモドキ、運転免許証など、それら証明書の代わりになったりと、何かと便利な機能を兼ね備えた魔導具。

 魔力を流すことで起動し、設定することによって、身体の何処へでも表示することが出来るが、大抵は両手のひりや手の甲などに位置を設定することによって、クレジットカードモドキでの決済を行ったりする。

 こんなのが現実にもあれば良いのに、と常々思う。





▼▼▼《作者視点──あとがき──》



 遅くなってごめん。コメントよろしく(*_ _)




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