閑話 そのあと、のお話。1
「カヒュッ、 スーーーー………」
禍々しくも、赤黒い容貌をした獣身の近く、死体と間違えてしまう程ボロボロとなった満身創痍の身体で、僅かながらに、息をしていた。
四肢壊滅。胴には、骨が見える程の爪痕と、不自然な凹凸が抉れるように出来ていて、傷口は酷く炎症し化膿している。
爪痕や傷口の所々から、紫色、緑色に変色した体液が垣間見え、毒々しい。
抉れるような凹凸からは血肉が見え、全身はその者のモノでは無い、血液と肉片がまとわりついていた。
そんな、最早遺体のようにさえ見える満身創痍な状態なのにも関わらず……黒く、あまりにも澄み切った黒光を宿す彼の眼は、死などどうでも良いと言わんばかりに、夜空に浮かぶ星々を、写していた。
想像も絶するであろう痛みを、しっかりと感じているハズなのに、それでも彼は、見るものを絶句させるような、悍ましい程に、秀美な笑みを、その顔に浮かべていた。
常軌を逸した表情を浮かべる彼を、理解できる者は居るのだろうか。
◇◆◇《アテルビア視点──満身創痍──》
──余韻、と言うやつだ。
前世とは、明確な違いが見える程に、知性と感情を持ち合わせる、森の魔物達。
当然、身体能力も前世の動物とは比べ物にならない。
そんな魔物達相手に私は、魔物達が持つ力の全て……否。
限界をも超えた力を私にぶつけさせて、その上で、殺し切った。
死線を越える。その行為によって得られる、スリルと満足感は、平和な世の中が広がる前世では、感じることの出来ないモノ。
無論、世間一般的に、何方が悪か正義かを考えるのならば、何の理由も無しに、只々興味の赴くままに魔物達の命を刈り取った、私が悪と呼ばれるべきであり、其の悪に致命傷を負わせた森の魔物たちは、紛れも無く正義と言っていいのだろう。
私は、自らの行いを正当化する気はさらさら無いんだ。
……何が悪で何が正義か。
それは、定かではないのだけれど。
ともかくそんな訳で、出来ればやっておきたかった、【魔物達をできるだけ傷付けずに倒す】、【魔物が持つ力の全てを観る】、と言った2つのミッション(?)もある程度クリア出来て、身体の状態に反して、気分はとても良い。
……それにしても、狂転禍化に至った魔物でも、消滅し切る前に殺せば、《《適切な処置》》をする事で遺体を残せるだなんて、随分と都合が良くて嬉しいね。
お陰で殺した魔物の遺体は、全て残すことができた。
年齢的に、これを売却してお金にすることは難しいのだけれど、“魔物の素材”と言う物には多くの近い道がある。
……普通では考えられない、そんな使い道も。
特に、今の私からしたら、これ以上無いまでに価値のあるも──
「カヒュッーー……。 シューーー…、 シューーー……」
──流石に…限界が近いね。
けれど、あともう少しだ。
あともう少し経てば、《《使える》》。
まだ、耐えよう。耐えて見せよう。
なに、魂だけだった時に比べれば、そう難しいものでも無いだろう。
◇
既に事切れていても、何らおかしくない姿をした子供は、瞼を下ろし、意識をより一層、集中させた。
▽▽▽【備考】
・【この世界の住人の生命力】
摩訶不思議な力が多く存在する世界では、それらに適応するために、アテルビアの前世に比べて、生命体の生命力が高くなる傾向にある。
そのためか、ほぼ遺体みたいな状態のアテルビアでも、生きれている。




