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自分らしく異世界を謳歌する転生者は狂気的~ゲームの世界?いいえ、もはや異世界です。  作者: 黒白のアレ。
第2章 転生者はある程度で満足するもの
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閑話 異世界に伝わる、御伽噺的なヤツ。




 嘗ての話だ。


 竜と共に生き、史を営んだ王国があった。


 その国は、人と竜の、互いを尊重し敬い合える関係を築いて、王国に繁栄を齎した。


 竜はその国を外敵から守り、人は人ができる限りの労いをその竜に与え、互いに住み良い地を、築いていた。


 しかし、時の流れとは残酷なものか、それとも運命のイタズラか……同じ人類種ですら、到底理解できない者が、この地に生を受けた。



 ムノウ・フォン・アルドハート。



 今より何千年も昔に在ったと記録される、アルドハート王国に、四代目国王の息子、アルドハート王家の次男として生を受け、後に、『史上稀に見るレベルの愚者』そう言われた男。


 そんな大層な名で呼ばれる人間が何をしでかしたのか、答えは単純かつ残酷無比で、その行動で、最終的にムノウ・フォン・アルドハートは、アルドハート王国の国土が地図上から消えてしまう程に強大で、それでいて誰もその存在を責め切ることが出来ない、悲劇の災禍を呼び起こしたのだから。




 史実として確認できる今だからこそ判るが、原因の一旦は、タイミングの悪さが担っているだろう。


 僅か一ヶ月ばかりの差で、アルドハート王家には長男であり、この平和な国では、将来の国王期待されるムノウの兄が産まれ、その1ヶ月後、次男として、ムノウが生を受けた。


 ムノウとムノウの兄、能力値で言えば僅かばかりムノウが高いものの、何か一つでも違えば変わっていたかもしれない、されどもう変わることのない差によって、ムノウの王位継承権は二位のまま。


 其れは、幼き子供の精神に、微かな歪みを産むのには十分すぎる不満だった。


 しかし国王とて馬鹿では無い。


 古くからの風習に振り回され、実力のある者を見ないフリするほど、愚かでは無かった。


 そう、つまりまだ、ムノウの努力次第では幾らでも、国王へと成れる道はあったのだ。



……兄を越えられる可能性があったのだ。



 されどその時には時既に遅し、ムノウの精神はやさぐれ、周りの言葉に耳を傾ける事すら出来なかった。


 そう、タイミングが悪かったのだ。


 ただそれだけで終われば良かったものの、ムノウその優秀な頭脳をその身に宿し、本来ならば何とでも出来るだけのスペックが有ったにも関わらず、それでいて、誰かにそそのかされた訳でも無いのに、《《災禍》》への道へ、歩を進めた。



 心の底から親身になって、ムノウの事を受け止め、支えようとする人間は沢山いた。


 それだけでも、この国の人情が読み取れるだろう。


 しかしムノウは、それら全ての人間を踏みにじり、突き飛ばし、拒絶した。


『成り上がり』の可能性を秘めた多くの支えを、自ら拒絶する姿はさながら愚者のようで。


傲慢で、強欲で、それでいて兄の姿を見る度に、嫉妬心を露わにする、そんな人間へと変貌を遂げていた。


 貴重な物、自分よりも弱い者、自分のせいで泣き喚くもの、その全てがムノウにとっての幸福であり、そのだけが生き甲斐だった。


 それ故であろうか。

 王城のすぐ近く、人間からすれば偉大なる存在が住まう、その者の為だけに作られた神聖な領域の奥に在る、黒光を纏う、小さな小さな宝石に、魅入られるように、手を伸ばしてしまった。


 アルドハート王国を象徴する守護竜、【黒鱗竜ミセリア】が、何百年もの時を待ち、漸く成功した小竜の孵化。


 ムノウはよりにもよって、その宝石が如き黒鱗の小竜に、手を伸ばした。


 身分を偽り手に入れた強力な眠剤を、数百年の時を共に過ごし、人を信頼しきった眠れる黒鱗竜に、過剰なまでの量を投与した。


 ムノウの、不必要なまでに優秀な脳が、そうでもしないと効果が現れないと言うことを理解していたから。


──結果、黒鱗竜ミセリアは、その日から約二日間もの時間を、深い、深い眠りに落ちた。



 そこから起きた事は、正しく悲劇と言えよう。


 誘拐された小竜は、ムノウが所有する王城内の、魔法によって防音加工が施された一室で、見るも無惨に殺されていたのだという。


 室内には血に塗れたペンチ、肉片がこびり付いた鞭、真っ赤な手袋、赤く錆びた鋸、鈍く輝く四本の拘束具。


 断面が荒く断たれた一対の竜翼。


 何度も何度も引き抜かれたのであろう、そこら中に散らばった小さな黒鱗。


 無理やりにでも引き抜かれたのであろう、血肉にまみれた竜骨。


 ホルマリン漬けの様に保管された竜の眼。


 終いには、四つの拘束具に四肢を強く固定され、鱗がなく、翼も切り取られた、肉が剥き出しの、小竜の死体。



 最早、言い訳など不可能な状態で近衛騎士に見つかった小竜の死体と、拷問部屋のような、ムノウの部屋。


 

 そして最悪な事に、小竜が死ぬ直前に放った、糸のようにか細い恐怖の魔力によって、瞼を開いた黒鱗竜ミセリアに、この部屋が見付かってしまう。


 ミセリアの醸し出す異様な圧に、近衛騎士はただ呆然と立つ事しか出来ず、硬直。

 ムノウは、たったの二日間で死んだ、たったの二日間しか遊ぶことの出来なかった玩具《小竜》に苛立ちを混ぜた文句を、只々喚き散らしていたのだと言う。



 黒鱗竜ミセリアは、哀しみ、恐怖し、殺意し、『今まで……今まで共に生きてきたでは無いが、何故? どうして? 我が悪いのか? 何故この子に……齢一つもいかぬこの子如何してこんなことが出来ようか……。今まで信じてきた人間は? 共に笑ったあの人間達も、全部全部何から何まで虚像に過ぎなかったのか……?』

 

 高位の竜であるミセリアは、姿形を人族に寄せた状態で、腕いっぱいに我が子の体を抱き締めて、女性のような声色で、独り言。


 ずーっと、永遠と冷たくなった小竜の遺体に回復魔法をかけ続け、アルドハートで過ごした記憶を、呪詛のように呟き続ける。



 そうして、何度時の針が回った頃だろうか、突如として、狂ったような笑い声を上げて、瞳からは涙を流していて、遂に、壊れた。


 人間による裏切り行為。無論、其れが極小数、もしくは一人だけ、だということにも気《《は》》付いている。


 それでも、彼女の、黒鱗竜ミセリアの精神は耐えられなかったのだろう。


 この国で一番アルドハート王国を愛している自負があった私が、数百年もの間、人が寿命で死にゆく間も、人と、竜である私自身が笑って暮らせると信じ愛し続けていた私が、よりにもよって王族に裏切られたのだ。


 彼女は、もう無理だったのだ。


 

 狂うように、壊れていくかのように、激情に呑まれ、存在そのものの輪郭が、崩れ始める。



【狂転禍化】


 

 自我を失う最後の時まで死した我が子を抱き締め、激情により存在そのものが暴走し、嘗てこの国、アルドハート王国を誰よりも愛した、愛し続けた黒き竜は、災禍へと。


 たった一人の、史上最悪の愚者によって。



 そして黒鱗竜ミセリアの最期は、死体すらも残ることは無く、壊滅した王都のように、塵一つと残さず崩れ去った。



 



──これが、この世界特有の、世界昔話の一つとして広く知られる、【愚者と竜】である。





▽▽▽【備考】


・【狂転禍化とその強化倍率】

 存在そのものが崩れさるまで、が制限時間の、意図的に起こすことがほぼ不可能だと知られている自爆特攻。

 魂、肉体、意思、その他全てといった存在そのものを代償に、擬似的な進化と膨大な力、種族の特性や生前、最も強く抱いた感情に影響され森の魔物達みたく『侵食』の特性へと変化することもある。

 強化倍率は、種族によって差があったりはするものの、最低でも10倍のステータスを得る事が出来るものらしい。



・【【愚者と竜】の作成者について】

 ムノウの拷問部屋に辿り着いた近衛騎士ことモイル・ラトリアネ君。

 あの後ちゃっかり国王の護衛に戻り、少しでも王の逃げる時間を稼ぐべく、自ら囮となった騎士団長に託された『転移宝玉(使い切りだよ)』によって国外への逃亡が成功し、そのまま隣国へ避難する形で生き残った運のいい子。

 騎士以外に何も目指してこなかったため他の技術はからっきしであり、それでもアルドハート王国にあった騎士見習い育成機関で反省文だけは大量に書いた経験があり、藁にもすがる思いで書き始めたのが理由らしい。

 結果としては飛ぶように本が売れ、わずか齢30歳にて巨万の富を得て、毎日毎日酒池肉林パーティで調子に乗りまくり、齢34歳の時に、重度アルコール中毒による幻覚で空を飛んでたカラスがあの災禍に見え───失禁、からの心臓が止まってそのまま死んだらしい。




▼▼▼《作者視点──あとがき──》


 あと二、三話閑話を出す予定です。



(*_ _)コメントモヨロシクゥ


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