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自分らしく異世界を謳歌する転生者は狂気的~ゲームの世界?いいえ、もはや異世界です。  作者: 黒白のアレ。
第2章 転生者はある程度で満足するもの
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19話目 一雫の好奇心、小さな世界で幾多の惨劇。中編


▼▼▼《作者視点》



 悪魔=アテルビアです。それだけです。




▽▽▽《森の動物達視点》



 フクロウ型はその身に生やす、大きな翼を羽ばたかせ、鋭い足の爪振りかぶり、身動きも取れないくせにわざわざ空中に舞い上がった哀れな悪魔を、殺しにかかる。



『グワァォォォ───ッッッ!!』



 小さな悪魔はその攻撃に対し、防ぐかのようにして、右手に持っていたナイフをフクロウ型の足を目掛けて振りかぶった。


 ナイフと足が当たる瞬間、周りで見ていた者も、フクロウ型ですら、ナイフにばかり集中していて、少年の姿を見ている余裕なんてなかったのだろう。



───カキンッ



 いつの間にかナイフを振りかぶっていたはずの、少年の姿は消えていて、ただ、フクロウ型の足がナイフを弾くだけだった。


 一体何処に行ったのか、視線を彷徨わせた先、何か紐状のもので、フクロウ型の丁度真上の方向にあった木の枝が、縛り付けられていた。



 その紐を辿るように視線を動かすと───

 


 カランッ、とナイフが地面にぶつかる様な、そんな音がした。



───悪魔は、より高く、飛んでいた。



 フクロウよりも高く。


 縛り付けていた紐を使って飛んだのだろうか………しかし紐で縛るには事前に、そしてある程度の時間が必要なはずなのだ。


 そうであるならば………既に、フクロウの行動は、この悪魔によって誘導されていたものに過ぎなかった、ということなのだろうか。




『そんな馬鹿な………だって、本当にそういうことならば………フクロウは………私達の仲間は………あまりにも、滑稽ではないか………』


 金属製のナイフが地に落ち、その音が反響する。


───グシャァァァ………ポタポタ


 そして───フクロウの身体は貫かれた。


 柔らかな羽毛と共に、赤く光を反射する鮮血が、地に落ち辺りを濡らす。


 落ちる時に見えた悪魔の姿は、さながら堕天使の様に見えた。


 そこで、ようやく理解できた。


 フクロウは、殺されたのだと。


 この悪魔の、掌の上で弄ばれながら。


 墜ちたフクロウの遺体は、下にいた仲間たちに怪我を負わせ、土煙をあげさせる。


 そして、悪魔の姿を隠す。


『しまった………ッ! 見失ってしまった!』

『まずい………ッ! 何処だ!』

『やばいやばい! 姿が見えない………ッ』


 私も、仲間たちも、焦ったように顔を揺らし目を転がす。


 だが、その心配は杞憂だった。


 だって、居たのだから。


 悪魔は───ただ、突っ立っていた。


 そこから、また隠れながらの殺戮もできたはずなのに。


 私達だって、そう来るのだと思い、身構えていたのに………土煙がはれてなお、悪魔はその場に突っ立っていた。


 愉しそうな、興味深そうな、思考するような、余裕のある涼し気な顔を浮かべて。



───ギリィィィ………



 私達と悪魔の温度差に、憤りを感じ、己の歯を噛み砕くかのように、歯ぎしりをする。


 そんな私達を他所に、悪魔は煽るかのように口を開く。


「あっ、今私のこと殺せる!とかって、期待していたのかい?」

「やっぱり、知性は前世に比べると高いみたいだね」


「で? 君達はこの後どうするんだい?」

「フクロウという、私を殺すことに最も近づいた存在は、今、死んだよね」

「また一つ、君達の希望が潰えたんだ」


「………諦めてしまうのかい? クフハッ♪」


 怒りが、不安が、不満が、絶望が、入り交じる。


 感情の波が激しく乱れ揺れ動き、その波が最高点に到達する時、悪魔は言った。


 嘲るように、その姿こそが真の自身だと言わんばかりに、演技だとはとても思えない、されど、先程までの態度からはあまりにも逸脱しすぎている態度で。



「さぁさぁ! 早く私を倒さなければ、君たちの平穏は消え去ることになるだろう………ッ!」

 


 悪魔は高揚し、感情的な声を上げがながらも、表情を変えることは無かった。



 そんな矛盾が、おぞましさに拍車をかける。



 しかし目だけは見開いていて、夜風に揺れる髪の隙間から見えるその瞳からは、感情すらも感じさせられる。



 そんな姿に、私達動物は恐れてしまう。


 だけど………それでも、わかっているから。


 このままだと、始まってしまうことが。


 また、この悪魔による殺戮が。


 それはもう………理解した。



 私達は、平穏な日々を好み、それを崩したくない、家族が好きだし、壊したくない。


 だから、意地汚く足掻いて見せよう……。


 恐怖に怯えようとも、恐れに身を縛られても。


 醜く抗って見せよう。


 突き刺された喉が、焼けるように痛い。


 傷口が、夜の冷たい空気に触れる度、血管を針で刺されるような痛みが走る。


 けれど………それでも、私達を、私自身を奮い立たせるために、私達は、皆一様に雄叫びを上げた。



「「「グオアゲチャァアッッッ!!」」」



 血液が声帯にまで影響を及ぼし、声が乱れる。


 肺から吹き出る空気で、破裂するような激痛が、私達を襲う。


 それでも、私達の覚悟は決まった。


 もう、迷いなど無い。


 この場に生きる、目の前の悪魔以外の全てが、同じ目的のために、覚悟を燃やす。



 傍から見ればこの戦いは、弱い森の動物達と、小さな子供の、しょうもない小競り合いだろう


 だが、彼らは本気で生を求め、平和を望み、必死で生きている


 だからこそ、恐れを受けいれ、今も、抵抗を試みる森の動物達は………その勇気ある行為は、さながら勇者のようで………



 そんな光景に少年は──



「これは……本当に無事では済まなそうだ……!」



──その顔に驚きと恐怖の色を見せ……歓喜と愉悦の、矛盾したような、恍惚とした、狂った笑みを見せた。




▽▽▽《アテルビア視点》


 突然だが、この世界に存在する、意志を持つ生物が、前世と同じような生物的特徴しか持たない、なんてことはあるのだろうか。



 答えは───否だ。



 この世界に存在する以上、魔力なり神力なり、様々な"存在"の影響を受けると知られている。



 それは生物以外も同様に。

 


 今まで殺されてきた動物にも、前世より身体が大きかったり、身体能力が優れていたりと違いはあったものの、魔力等の影響を受けていたと言えるまで、目に見えるほど違う能力を扱っていたかと問われれば、それは違う。



 この世界に存在する動物も、他生物同様に、魔物として区別されるのに、だ。



 つまりそれは、今まで私に殺されてきた森の動物達、いや、森の魔物達は、その能力を、特性を発揮できない状況にあったか、それともその能力を使わなかっただけに過ぎない、ということだ。



 たが、ここからは違う。



 森の魔物達は、もう──覚悟を決めた。



 命ある限り、目の前の外敵、悪魔アテルビアを殺し、再び平穏を取り戻すと。



 であれば、能力を使えない状況に陥る前に、全力で行使してくるのであろう。



「だいたい……1体50くらいかな。数の差は歴然というわけだ……」


「ふふっ、これではまるで、私がボスで、君たちが挑戦者みたいではないか」

「純粋なステータスを考えたら、私は格下なのに……」



 逡巡───悪魔はなにか思い出すかのように顔を上げた。



「いいね!私はいつも、ゲームをプレイする時はハードモードでプレイするタイプなんだ♪」


 そう………呟いて、アテルビアは、齢わずか5歳の悪魔は、高揚した笑みを浮かべながら、戦いの場に身を投げた。




 さて……まずは武器であるナイフを───


「ガァウアアアッ…………!!」


───拾う暇は無さそうだね………っ。


 私を噛み殺すかのように、思い切り口を開き牙を見せつけ、そのまま連続で鋭爪で切り刻みに来る。


 その魔物は、オオカミ型の、2m程の体躯で薄緑色の毛と、まばらに影のような黒毛を纏い、身体の節々から蔓が生えている、鋭い爪牙を持つ、木陰の狼───




───『|シャドウ・フォレストウルフ《木陰の獣》』




 うん………まぁ図鑑とか魔物関連資料で知ってはいたんだけどさ、単調だよね。


 フォレストウルフって、もうありきたりと言うか、『あ〜、ハイハイテンプレ乙乙』みたいな感想しか出てこないよね。


 種族的特徴は、テンプレ通りでは無いんだけどさ。



 他にも、『フォレストラビット』、『フォレストマウス』、『フォレストディア』、『フォレストモンキー』、『月白のうさぎ』、『木陰の梟』、『森の追突者・ボア』………以下略。



 こんな感じで、生物の名付けって、結構適当なんだよね。


 同じような生物同士でも個体差とかで名前が変わったりするし………新種の名前も、鑑定魔法陣なんかに組み込めば少ない魔力で簡単に区別できるから問題ないのだとか………。


 ちなみに、この森に生息している魔物は、全て中立型か友好型らしく、別に排除する理由もないから放置しているに過ぎないらしい。


 中立型とは言え、弱い訳では無いのだけどね。



「「「ガアアアッッ…………!!」」」



 悪魔の背後を狙った、フォレスト系種族の蔓にによる攻撃が、大地をつたい、地を砕きながら乱打し激しく生え変わる。



「考える暇するも無さそうだ………」

「いいね、やっと異世界らしくなってきた………ッ!」


  

 蔓を主体とした攻撃かな? いや………よく見ると樹木のような見た目をした巨大な針だったり、薔薇の茎のような棘の攻撃もあるね。


 ならこれ以上にも別の形状変化があると考えて予測した方が良さそうだ。


 基本的には植物関係の攻撃が主体で、隙が出来次第攻撃能力の高い動物達が連携して逃げ場を無くすように攻撃、と言った感じかな?


 ただ、あのフクロウのような耐久力の高い奴はあらかた最初に殺しておいたから、囮役が少なくて攻めあぐねているのか。

 

 攻撃能力は低いけど小賢しいことが得意な私からしたら、あのフクロウのようなフィジカルがあって浮くこともできる動物は邪魔で仕方ないからね、やっぱりあそこで始末しておいたのは正解だったかな。



───ザザ……ザッ!!



 突如、背後の影からシャドウ・フォレストウルフが飛び出してきた。



「ガウァァァ………!」



 爪による振り下ろし攻撃………うん、このタイミングだ。



───メリメリ………ッ!!


 私の退路を防ぐかのように、後方にいるフォレストディアが生やしてきた、ただただ硬いだけの樹壁の一部を剥がして、先を尖らせるように少し削り、自然と口を開けてしまっていたあの狼の上顎から突き刺すように頭を貫く。


 爪による振り下ろし攻撃の勢いはまだ残っているから、流れる様に腕の元まで体を動かして、そのまま狼の腕を足で蹴り、勢いを追加する。



───バゴォーン………!!



 狼の遺体は、目の前にあった硬い樹壁を砕き割り、木片を飛び散らかせる。


 その飛んできた一部を何個か回収しながら、悪魔はステップを踏み、辺りを見渡すように、目を動かし、数瞬の間、思考を巡らせる。



『………棘の生えた蔓、樹木の針、足場を無くすような葉のない大量の低木、所々に生える巨大な蔓の鞭、シャドウ・フォレストウルフの遺体、中央に一つだけ生える大きな木、目を潰す用の花粉、月明かりを一極に集めて光合成をしている花、後方組の動物達に囲まれたナイフ………、地上の殆どは棘が散らばっていて歩けなそうだ』

『地面から生えている樹木製の大きな棘やその辺に生えている木を伝って移動しようかな』

『そして……うん、まずはヒーラーから潰そうか』



 エネルギーを補給する用だと思われる、光合成をする紫色の花に、尖った木片を放つ。


 移動しながら数発投げ、三発目に投げた木片にタイミングが重なるように、一つだけ真上に投げておく。


 当然のように、攻撃を警戒していた周りの動物達が木片を自身に生える蔓で叩き落とす。


 その間に攻めてきていた、リーダー格の狼を失ったフォレストウルフ達を誘導し、後方組のちょうど真上を飛び越えるように調整して、フォレストウルフ達の1匹が真上に来るタイミングで、樹木の針を掴み急旋回して、先端を折り、フォレストウルフに一撃───





───は腕がまだ短く、距離が遠くて届かないので、フォレストウルフの顔が上に向くように下顎へ投げる。



「ガウッ!? ───ガウァァ………」



 顔が上に向いたタイミングで、隠す様に投げていた木片がフォレストウルフの体内に入り、紫色の花の上で、墜落する。


 木片の対処に集中していたフォレストディア達は、突然の衝撃に驚き、混乱し、落ちてきたのが敵だと勘違いしたのか、フォレストウルフにトドメの一撃を食らわしていた。



 混乱のさなか、私は蔓や森の木々に紛れて、ナイフを回収することに成功していた。



「ようやくまともに戦えるよ」

「流石に肉体の変形だけじゃ損失の方が多くて上手く戦えないからね」



 魔物達後方部隊のエネルギー補給は絶たれた……しかし、それに反比例するがごとく、戦いはより、苛烈さを増す。


 上からの振り下ろし、左右から同時、下からの足払い、ナイフを狙った突き、目くらましの花粉………どうやらナイフを回収するところが見られていたようで、蔓や木の根、花粉や棘などの植物の攻撃が、息をつく暇もなく繰り返される。


 受け流して、防いで、突きの姿勢で相殺する。


 攻撃に利用出来る植物の種類が分かってきた。


 正面から網状に交差した樹木の根が襲いかかるが、木片をその根元へ飛ばして方向を変え、私の背後の、木の上で攻撃のチャンスを伺っていたフォレストモンキー達を捕え、植物による攻撃を回避しながら確実にトドメを刺していく。


 仲間が殺されていくことに対する怒りなのか、より植物攻撃の苛烈さは増していき、少し、避けきれなくなってきた。



───『ガシュッ』『ガキンッ』『ザアァ』『ジュグシュ』『ザガギィィ』『ドガスゥッ』『ドゴンッ』『シュッ』『クシャャ』『シュルツッ』『バキバキッ』『サァァ』『サッサッ』

『ザシュッ』『ガキッ』『ガチンッッ』



 蔓が叩き下ろされ、爪が頬を掠め、樹木の弾丸が辺りに舞い散り、ナイスで弾き、体をうねらせ、飛び散る木片を投げ………戦いの時を、重ねていく。



挟み撃ちをかわし、振り下ろしを避け、噛みつかんとする顎を掌でいなし……そして気づく。



 戦いに夢中になりすぎている。



 戦いが苛烈さを増すばかりに、自分を忘れて没頭してしまっている。



 戦いの熱に己を乗っ取られるな。


 頭を冷やせ。



 そう、考えを巡らせて、体は常に動かしながらも、ゆっくりと、戦いの中で燃えゆく己の炎を凍りつかせる。


 


 そうして───冷静に楽しまなくては。









 再度、位置を確認し思考を整理する。



『私の今いる位置』


『動物たちの位置はあそこ』


『近くの木の数は4本、地面は棘で歩けそうにない───』



 魔物たちから見て自分がどう見えるだろうか、その全てを予想し、己を取り巻く環境すらも、その膨大な思考能力を狂気的なまでに活用し、己が勝利する姿を覗き見る。


 魔物たちの数は減ってきた。


 数は残りわずか。


 異世界初の戦いを終わらせるために、歩を進める。



───ズルルルッ スタンッッ


 

 森の魔物の、この世界特有の進化によって得た特製と、魔力の併用による巨大で大量の植物攻撃。


 魔物達も、そろそろ終わりが来ることを、どこかで悟っているのだろう。


 だからこそ、これほどまでに威力の高い攻撃に出る。



 だが……



 攻撃による植物が乱舞し、その中から更に枝分かれをするように無数の植物達が地面に叩きつけられるさなか、アテルビアはその眼を見開いて───





───それはもう"観た"ぞ。







 数分にも続く魔物達の全力攻撃の後、その攻撃によりひび割れた地には……先程と変わらない姿の少年《悪魔》が立っていた




▽▽▽【備考】



【何故悪魔と呼ばれているのか】

 森の魔物たちの親に当たるもの達の世代は、まだ公園の近くの森に移住する前での時を過ごしたもの達であり、そのもの達は悪魔、と呼ばれるものを見た事があった。

 その悪魔は、何もしていないのにも関わらず、近くにいるだけで気を失ってしまうほどの気配を放ち、そこにいた魔物たちの、恐怖の体現者とされ、悪魔が去ったあとも後世にその話を引き継ぎ、『恐怖とは、悪魔だ。悪魔こそが恐怖であり、恐怖こそが悪魔を想像させる』こんな風にとにかく恐ろしかったと話、いつしか恐れを感じる相手を悪魔だと呼称するようになり、アテルビアは悪魔呼ばわりされているらしい。


 悪魔だからといって、敵である存在として認識されている訳では無いけれど。



【植物攻撃】

 森の魔物たちは、過ごす環境に影響されるのか、身体的特徴に植物が現れ、ある程度自在に操れる。

 その植物と、万物が持つエネルギーである魔力を併用し、強力な攻撃手段のひとつとして扱う。

 代表的な攻撃は、蔓での攻撃だろう。

 蔓を地面や体の節々から生やし、それを意のままに操り攻撃し、魔力をより多く使うことにより、サイズを大きくしたり形をある程度帰ることができる。

 そしてこの攻撃方法が、後の植物魔法と呼ばれる魔法の基となったのだとか。



【アテルビアの身体能力】

 度重なる改造と、魔力の循環により、5歳児とは思えないほどに成長を遂げている……が、所詮は人族の肉体でしかなく、それも5歳、いくら魔力により成長を遂げていようとも、大人の20歳と比べれば誤差の範囲に過ぎないくらいなモノ。

 ただ……戦いの中でところどころ身体能力が少しづつ上がっているらしい。


 何故だろうか。




▼▼▼【作者 あとがき】


 中編です、次が後編ですよ。


 ただの好奇心から殺されていく森の魔物さん達には、涙を禁じえません。

 しかしそれも次回で終わるので悪しからず。


(*_ _)コメントモヨロシクゥ


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