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ゴミの山に、英雄は還る

この国で“死”と向き合うことがない人間など、ひとりとして存在しない。

だけど俺のそれは、あまりにも“雑”だった。


東京。午前1時43分。

自販機で買った缶コーヒーを片手に、俺…天野あまの しょうは、誰もいない路地裏を歩いていた。


徹夜続きのブラック企業、クビ寸前の査定、通帳残高37円。

それでも心のどこかで「きっと何かが変わる」と信じてた。

そんな俺を、最後に変えてくれたのは

配送トラックのブレーキ音だった。


「……っ、は?」


耳がちぎれそうな音と共に、景色が反転する。

路地裏の夜が引き裂かれ、視界が白に染まる。


気づけば俺は、空を飛んでいた。いや、正確には、落ちていた。

そして、着地した先は、


腐敗と金属音と焦げた煙が交じる、“世界の最底辺”だった。


「……ここ、どこだよ……」


鼻を突く悪臭。膝の下にあるのは、腐った果物と機械の残骸の混合物。

上を見れば、空は……黒い。いや、灰色だ。

見たこともない金属のリングが空を切り裂き、巨大なパイプが空中都市らしき影と繋がっている。


「夢……? いや……そんな都合のいい感覚、どこにもない……」


吐息すら痛い。皮膚が刺されるように乾く。

そして、腕に走る違和感


「……何だこれ……」


皮膚が、機械のように軋んだ。

俺の右腕が、灰色の金属に変わりかけていた。


「転移」

その単語が頭をよぎる。

死んで、異世界に飛ばされた……? 本当に?


「……こんな、ゴミ溜めにか?」


誰かが言っていたような、剣と魔法とチートと美少女の世界──

そんな都合のいい異世界転生とは、あまりにもかけ離れていた。


ここはただの廃棄場。

文明の死骸。

人間の見捨てた終末の“下層”。


だが、目の前にいた。

俺を見下ろす、銀色の瞳の少女が。


白い髪。生気の薄い表情。

なのに、どこか神聖さすら漂う雰囲気。


「ようこそ、遺捨界〈サルヴェ=デイヴ〉へ。“創界種”の最後の血を継ぐ者よ」


その声に、鼓膜が震える。


「……俺は、ただ……生きたかっただけなんだが」


「なら、選びなさい。

このまま“ただのゴミ”として腐るか。

それとも、“革命”の核となるか」


選択肢なんて、初めからなかった。


あの日、東京で死んだ俺は、もういない。

今ここにいるのは……


トワ・ミル=ネイム。

創界種〈シェル=アルク〉の継承者。

そして、世界統一を目指す“廃都の革命主”。


恋など、している場合ではない。

心を乱す感情は、戦略の邪魔だ。

この世界を制圧する。それだけが、俺の存在理由だ。


…それが、「世界革命」の始まりだった。

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