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ラブミーレスポンス  作者: 優涼 雪
一年一組 四月
3/29

予兆

ちょっと文字数が多くなってしまいました、、、。

もう少し読みやすい小説を書けるよう努力致します。

さて!やっと物語が動き出します。

今後の春人の動向に注目です、、、。

 静かな体育館に、向井さんの声が響く。

「春の暖かい風が、新しい出会いを運ぶ季節となりました。新入生の皆様、この度はご入学おめでとうございます。在校生一同、心より歓迎申し上げます。」

彼女の声は、その見た目に反し低くハスキーだった。


 クリっとした目が力強く新入生に語りかける。

「さて、皆さん、夢を叶える準備は出来ていますか?」

その問いかけに、春人(はると)の胸はドクンと脈打った。瞳が、煌めく。彼女の言葉に、その場の全員が胸を掴まれた。


「美術学科の皆さん、美しくも残酷な美の世界へと、足を踏み入れる覚悟は出来ていますか?

音楽学科の皆さん、上手くいくことだけではありません。悔し涙を流す覚悟は出来ていますか?

理数学科の皆さん、高等数学や、物理を極める覚悟はありますか?

言語学科の皆さん、次の国際社会を担う覚悟はありますか?

総合ビジネス学科の皆さん、日本の未来を引っ張っていいく覚悟はありますか?

デジタルデータ学科の皆さん、今最も必要とされている人材です。その期待に応えられる覚悟はありますか?」


「美しくも、残酷な美の世界」それは確かに春人の夢見た舞台だ。だが、そう言葉にされると背筋がゾクリとするのを感じた。これから、一体どんなことが待っているのか。

覚悟は決めたはずなのに、やはりこの場にいると緊張する。


それはその他の新入生も同じなようで、入学式が始まる前よりも、さらに緊張感が体育館全体を包んだ。


そうだ。

ここには、誰一人だって中途半端な気持ちの人はいない。みんな本気なんだ。生半可な覚悟じゃ、ここでは確実に埋もれる。 

言い訳は何一つ許されない。流されることがあれば、それは己の弱さなのだ。

春人はゴクリと固唾を呑んだ。怖いのに、これが待ち望んだものだと、春人の心臓は叫んでいる。


握りしめた拳がぎりぎりと音を立てる。


早く。

早く明日にならないかな。早くここで、絵が描きたい。


ギラギラと、春人の瞳は燃えていた。

それは、これから始まる葛藤と孤独な戦いを恐れもしない屈強な瞳だった。


―入学式が終わると、新入生達は、先ほど確認したクラスに移動することになっていた。一時間だけ学活をやるらしい。要するに、自己紹介をするのだ。

 一クラスごとに担任の先生を先頭として進んでいく。春人のクラスは一組なので、一番に移動することができた。

新入生についてきていた親は、ここで自宅に帰るよう指示される。帰る親に対して小さく手を振るクラスメイトを見て、春人は少し寂しくなった。

(PTAとか、三者面談とか、そういうの出来ないからな…先に説明しておいた方がいいよね。クラスの人は…変に思うだろうな……)

何か悪いことをしているわけではないのだから、堂々としていればいい。そう思うが春人は、やはりそういう親関連のことが心配だった。

でも、そんな悩みは親には相談できなかった。色々負担をしてくれて、背中を押してくれたのに、福岡から東京まで、学校関連のことで呼び出すなんて傲慢すぎる。

こればっかりは上手く自分でやらないと。


 そんなことを考えているうちに、春人たちは長い階段を登らされた。一年生のクラスがある階は四階らしく、日頃の運動不足が祟る。少し階段を登っただけなのに息が上がってしょうがない。

…ここに来るまでもそうだったが、自分は体力が無さすぎやしないか。

小学校の時から体育の授業は大嫌いだった。長距離なんか地獄だったし、ましてやボールを使う競技はもっとダメだった。おそらく俺は前世にボールの親でも殺したんだろう。

 

 ガラガラガラッ―

先頭に立つ先生が教室の扉を開けた。出席番号が一番の人から順に教室に入り、席に着く。

 少し前まで卒業生が使っていたであろう教室は、一切の余韻も残さず静かに冷たい空気を纏っていた。

そんな様子に、福岡の同級生達のことを思い出して少し寂しくなる。きっと彼らも今頃新しい同級生等と出会っていることだろう。


順調に教室が新入生達で埋まっていくのを、自分も席に座り眺めていると、あることに気がつく。


……このクラスの人、一人足りなくないか?


見るとちょうど真ん中にある春人の席のやや左後ろの席がぽっかりと空いていた。

新学期早々不登校か、それとも何か事情があって遅れているか。どちらにせよ、自分ももう少しでこれと同じ状況になるところだったんだ。迷わず学校に来れたのが奇跡。最初のホームルームから来れないなんてクラスで浮いちゃいそうだな、と春人は同情した。


「はい、皆さんおはようございます。そして入学おめでとうございます。」


突然担任の先生が喋り出してビクリと肩を震わす。

前を向くと先生は黒板に書いてある自分の名前を指さしていた。

(つばめ) (あきら)といいます。担当している学科は音楽です。名前が二文字という簡潔度具合でよく中国人と間違えられるのですが、先生は純日本人です。よろしくお願いします。」

ギャグ混じりの自己紹介で、くすくすと笑い声が上がる。春人も思わず笑ってしまった。

よかった。嫌な人じゃ無さそうだ。

先生は前髪を眉上で弧を描くようにビシリと切っていて、その見た目はどこかの漫画に出てくるお坊ちゃんのようだった。それも相まって、春人の口角はじんわり上がる。

人の容姿を笑うのは良くないが、ダメだと思えば思うだけ耐え難い笑いの衝動にかられる。


「では、その場で立って今の先生のように自己紹介をして頂きたい。どこの学科なのか、とか、名前とか」

なんとか笑いを堪えて先生の話に耳を傾ける。

学科は美術科、名前は久賀谷 春人。

(……これ好きなこととか言った方がいいのかな。)

一様好きなことを考えてみるも、絵を描く、ということしか思い浮かばなかった。

周りに合わせようと春人は一番前の廊下側の席に座っている女子生徒に目を移す。

長い髪を綺麗に腰の高さまで揃えているその女子生徒は、静かに席を立つと自己紹介を始めた。

「……(あずま) 美琴(みこと)です。学科は……。

…まぁ、このネクタイの色を見て貰えばわかると思うんですけど、言語学科です。」


あ、そうか。ネクタイの色が学科ごとに分かれてるからいちいち言わなくてもいいじゃないか。

―ちなみに、ネクタイの色はそれぞれ、

美術科が青、言語学科が山吹色、音楽科が赤、総合ビジネスがピスタチオカラー、 デジタルデータが茶色、理数科が緑である―


春人は横目で前に立つ先生を眺める。先生もまたは後ろで手を握ってバツが悪そうにそっぽを向いていた。

……やっぱりこの先生面白い。



一色(いっしき) (ひろ)です。学科はデジタルデータで、えっと、趣味は…最近はカルタです…!」


鵜朝(うあさ) かなえです!学科は理数科で、趣味は食べ歩きです…。」


大友(おおとも) 優真(ゆうま)です。学科は総ビです。趣味は、まぁ…主に野球なんですけど、スポーツ観戦が好きです。」


加上(かがみ) (いく)です!学科は言語で、趣味は、友達とお喋りすることです。一年間よろしくお願いします!」


たくさんの人の自己紹介を聞いているうちに、自分の番がすぐそこまで迫ってきた。一色さんが趣味を付け加えたから、やはり言う羽目になってしまった。

美術科の、絵を描くことが好きな人。第一印象がすごく素朴だな、と思う反面分かり空くていいと思う。

春人は前の席の人の自己紹介を聞き終えると、静かに席を立つ。

緊張する。なまっているように聞こえないようにしないと。気を抜くと博多弁が出る。

…いや、大丈夫だ。散々練習しただろう。  

春人は小さく息を吸った。

「久賀谷 は――…」


     

ガラガラッ―!



春人がそう言い終える前に、突然教室の扉が開いた。

「え―…」

クラスメイト共に呆然とする。

燕先生が何かを忘れていたと言うよに「あ!」と声を上げると、急いで扉のそばに駆け寄った。


春人の席からだとギリギリ、誰が扉を開けたかは見えなかった。


「すいません、すっかり忘れてしまった!」


燕先生のあっけらかんとした声が静かな教室に響く。

春人の胸はドキドキしていた。嫌なドキドキだ。

このまま立っていてどうする?俺は自己紹介を続けていいのか?

誰も春人を見ていなかった。みんな扉の向こうに注目している。それがいたたまれなくなって、春人は静かに席についた。

扉の向こうの誰かに苛立ちを覚える。一体誰だ。俺の自己紹介を中断した奴は。このままじゃ、自己紹介がスルーされて、名前なんだっけ、なんて言われる羽目になるかもしれない。

ムスッとして、春人も扉を見つめる。


 数分してからだった。静かに燕先生と、一人の男子生徒が教室に入って来た。

遅れて来た男子生徒は誰でしょうか。

春人と彼の第一印象は、お互いにどうなるのか!

今回も次回も是非見ていってください!


(ここまで読んでくれてありがとう)

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