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ラブミーレスポンス  作者: 優涼 雪
一年一組 四月
18/29

シュントVSハルト

四日ぶりですね!更新遅れて申し訳ございませんでした!

どぞ!


 陽成 ハルト.....。


「ふふふ。」


頭の中でその言葉が蘇るたび、春人(シュント)は笑わずにはいられなかった。


鈴木和文に目をつけられたのは面倒だったが、こんな事になるなら良かったかもしれない。



 どうやって春人を根負けさせようか、ずっと考えていたが、タイプの違う人間との絡みに巻き込むのも一つの手だと言うことが今日判明した。


こいつも連れていっていい?と、春人(シュント)が言った時のハルトの反応と言ったら、もうおもしろい以外の何物でもなかった。


鳩が豆鉄砲を食ったような顔とはまさにあのこと。

大きな目を見開き、思考停止中と言うようなあの顔。


思い出しただけでプルプルと笑ってしまう。


ハルトが嫌がることをすればいいのだから、これからもドンドンこの手を使っていこう。



しかし、どうやってそれを伝えようか。


イジメ倒しても、何をすればそれをやめてくれるか分からなければ、この作戦はなんの意味もないのだから。

春人(シュント)は階段をノロノロと降りながら考えた。


 辺りは食べ物のにおいでみちている。時刻は丁度お昼時であった。

四限目を終え、春人は手を洗いに教室を出たついでに、お弁当を食べる場所を探していた。



正直なところ、人と絡むのがそこまで好きだと言うわけではない。ただ、絡んでくるから、それに応えているだけ。

うるさい奴はうるさいし、うざい奴はうざい。

それに性格が明るいか暗いかは関係ないと思う。


教室の中では女子の媚びが不愉快だし、それを疎ましそうに見つめる男子もうざい。


...…あんな場所にいる意味はない。



 アメリカにいた時はもっと沢山の人間と関わっていた。髪を染めたのも、周りの友人達に勧められたからだ。


彼らもグイグイ話しかけてくる奴らだったが、何故かうざったく感じなかった。

おそらく、ただうるさいだけではない、フランクな雰囲気が好みだったのだと思う。


日本に来てまだ一ヶ月も経っていないが、彼らのことを思い出すと寂しくなる。

まぁ、アメリカには帰る気はないが。



 適当に校内をぐるぐる回っていると、階段を降りた先の昇降口でハルトを見つけた。


手には安っぽい弁当箱と、小豆色のがま口財布を持っている。


ふと、ちょっかいをかけてみようと思う。

作戦実行②だ。



そそくさとハルトが通る廊下にまわり、彼がくるのを待つ。


お昼時ということもあり、廊下は騒がしい。

ハルトが急いでいたのも相まって、彼は春人(シュント)の足が出されたのに気が付けなかった。



「うわぁ!」と思い切り漫画のように転ぶハルトを見て、シュントは口角が上がるのを必死に堪えようとした。



なんでこんなに予想通りの反応をするんだろう。

面白い他ない。


「お前が足を引っ掛けたんだろ?」


シュントを拒絶するような、それでいて恐怖するようなその瞳が非常に愉快だった。


ハルトの考えていることが手に取るように分かるので、主導権を握っている感覚が面白い。



「お前の失態を他人のせいにするなよ。」

「....。」



ハルトの顔は普通か見れるかで言えば、見れる方だと思う。


大きな瞳に、艶めく黒い髪。まさに、ザ日本人というようなパーツを持ち合わせているのに、顔は少々彫りが深く愛嬌がある。


しかし、春人(シュント)と対峙する時は必ずと言っていいほど膨れっ面か、驚いているか、困惑しているかなので、彼の持つ愛嬌が発揮されることはない。



今も、ハルトは春人をキツく睨みつけている。


春人からすると、それがとても笑えた。

彼はまだ床に散乱している自分の弁当に気がついていないらしい。


自分の境遇に気づかず、相手を威嚇し続ける様が非常に滑稽だった。



ハルトがそれに気がついて、「何故こんなことをするのか」と、そう問うた時は、しめた!と思った。



作戦が本当の意味で遂行されたのだ。






――――



「朝、俺を起こしにきてくれるって言うなら、もう二度と絡まないよ。」



シュントにそう言われた時、やはりな、とそう思った。


彼が自分に絡んでくる理由として、考えられるのは、一つ朝の件を断られての仕返し。

二つ交換条件として持ち出すため、だと思っていた。



朝、俺が嫌がることをピンポイントでしてきたのも、今こうして足をかけたのも、全てはこのセリフを言うためだったと言うわけだ。


………それなら、誰がそんなクソみたいな提案にのるんだ?



「嫌だ。」

「じゃあ、ずっとダル絡みするけど。いいの?」


シュントが挑発するように笑う。

その三日月のように歪んだ目を目潰ししてやりたくなって必死に堪える。


「勝手にしろよ。俺は絶対お前には下らない。少なくとも、こんなクソみたいなやり方で、願いを聞き入れてもられると思うな、馬鹿。」



お前のせいでこっちは昼飯まで無くなったんだぞ。 

せっかく全てをキツキツにしてやってってるのに。


こいつのせいでものすごく勿体無い事になってしまった。


怒りで全身がプルプルと震える。こんなにも誰かを不愉快に思ったのは、生まれて初めてかもしれない。


春人(ハルト)の言葉を気に留める様子もなく、シュントは肩をすくめた。


「ま、いいよ。今日はこれが言えれば良かったから。

いつかあんたが根負けする時が来るよ。俺がこっちで上手くやってくのに、あんたが必要なんだって、嫌というほど分からせて、絶対モーニングコールやらせるから。」


「絶対やらねー。お前まじ、食べ物の恨みは凄いんだからな。」


「それ?質素すぎて食べ物に見えないよ。俺の作ったお弁当食べる?美味しいよ。」


そう言って、シュントは持っていたお弁当箱を春人の前に差し出す。

しかし、そんなものを視界に入れたくなかった春人は、意地でも顔を背けた。


「………お前の弁当とか興味ねーから。」


春人はそう言うと、シュントに背を向けてそそくさとその場を立ち去った。


立ち去る際も、周りの人の視線が痛かった。

不幸中の幸いとしては、先生が来なかった事だと思う。

下手にいじめなんじゃないか、なんて事になったら、福岡にいる親にまで迷惑がかかる。


………それはだめだ。



 グゥーグゥーと、お腹がなる。

今日は昼食なしだ。


春人は、加上達にどうやって言い訳をしようか考えながら中央階段までの長い道のりを歩いた。








 ハルトが立ち去ってから一人残された春人(シュント)こそ、周りの人から白い目で見られていた。


しかし、彼はそんなこと、微塵も気にする素振りもなく、何か考え込んだようにその場に立ち尽くしていた。




――――俺は一体何故そこまでして、こいつに関わろうとしているのだろう。


起こしに来てもらうには、ハルトが丁度いい。

それが一番の理由だが、もう一つ。何かある気がする。


こんなふうに、性格の悪いアピールの仕方をしてしまう理由。


 


 鋭い瞳と視線が絡んだ時、その瞳の面影に、どこか見覚えがあった気がした。






_________...あぁ、分かった。



似ているんだ。あいつに。


大嫌いなあいつに似ている。



だから、何がなんでもこいつがいいんだ。

手を出せなかったあいつと違って、こいつは。


_______無力だ。



俺の方が上だから。とことん....。




 行くべき場所を見つけたように、春人(シュント)の足は動き出した。

その足取りは軽い。


やはり、アメリカなんかにとどまっていなくて良かった。日本に来て良かった。



ここでなら、上手くやっていけそうだ。







シュントVSハルトの根負けバトル開幕です!

ありがとうございましたー!

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