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義妹ハーレム  作者: ひだまりのねこ


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第九十七話 悪意を持つ者


「悪い、待たせたな魔璃華」

「気にすることは無い、むしろ最後で良かったと思っている」


 付き合い始めて日は浅いが兄上のことはわかっているつもりだ。だから、おそらく私が最後になるであろうことも予想していた。


 前回同様『世界喰い』を支配下に置く実験をするつもりだろう。もちろん私もそのつもりだ。


 それに――――最後なら交代を気にすることもない。なんだかんだ理由を付けて少しでも長く一緒にいることも出来るだろう。ふふふ。



「なあ兄上」

「どうした?」

「兄上は……その、私の魅了が効かないんだな」


 魔族が持つ種族特性の中に、異性を魅了しやすいというものがある。私があれほど言い寄られるのには理由があるのだ。


 だが、兄上にはまるで効果が無かった。さすが勇者と聖女の息子ということなのだろう。


「何かと思えばそんなことか、いや、効いているぞ、だって俺は魔璃華に夢中だし」

「ふえっ!?」


 な、ななな、何を言っているんだ兄上!? 素で照れてしまうではないか!!


「それじゃあ、そろそろ……しようか?」


 ちょ、ちょっと待って!! 今は無理!! 私、今ヤバいから!! 顔見れないから!!


「もしかして……恥ずかしがってる? 本当に可愛いな魔璃華は」

「――――っ!?」


 うきゃああ!! ど、どうしよう……こんな状態でキスなんて出来ないよ!!



「……あれ、何の茶番なんでしょうか?」

「魔璃華って口調とか行動はアレですけれど中身は乙女ですからね……」

「わかりますよ魔璃華、お兄ちゃんとのキスは何度しても心がときめきます」

「うーん、私ももう少し恥じらった方が良いのかもしれないわね……」


 くっ……外野の会話が全部聞こえる。ステータスが高いのも考え物だな。


「捕まえたぞ魔璃華、もう逃がさない」


 はうっ……兄上に捕まってしまった!! 覚悟を決めるしかないな……。


「す、好きにすればいい」


 あああ、もっと可愛いことが言えないのか私は!!


 兄上はこんな私にも愛を注いでくれているが、こんなんじゃいつか愛想をつかされてしまうかもしれん。見た目なら多少自信はあるが、それはハーレムメンバー全員に言えることだし……。


「なあ魔璃華、もし嫌じゃなかったら……お前からしてくれないか? ほら、いつも俺からするばかりで……俺もさ、少しは不安だったりするんだよ、嫌われているのかもしれないってさ」

「……兄上も不安だったりするのか? とても信じられないが……」


 私が兄上を嫌うなどあり得ない、だが……そうか……言わなければ伝わらないものなのだな……。


「わ、わかった、だが――――恥ずかしいから目を閉じていてくれ」

「うん、わかった」


 はうっ、なんでそんなに嬉しそうな顔しているのだ兄上? それじゃあまるで私にキスされるのが嬉しいみたい――――そ、そうか……嬉しいのか。そ、それなら……これからは私からしてやるしかないな。


 まったく……兄上ったらまったく。


 周囲の視線がそろそろ痛くなってきたので兄上にキスをする。目を閉じていれば恥ずかしくないと思ったら逆だった。死ぬほど恥ずかしかった。


 だが――――キスをした瞬間、そんなことすら些細なことだと実感した。融合が始まったのだ。




『魔璃華、大丈夫か?』

『う、うん……何とか……』


 クロエたちが言っていたのはコレか……


 ま、マズい……コレは……マズい……


 魔族は魔力が全てだ。それは感覚や感情にも大きな影響を及ぼす。兄上のような半分神さまのような魔力と私の魔力が完全に混ざり合って――――き、気持ちいい!!! 意識が飛んでしまう!!


『お兄しゃま~しゅき~♡ 魔璃華のことしゅき?』

『ああ、大好きだよ魔璃華』


 ふわあああ……幸せ~――――って、危ないっ!! 幸せ空間に飲まれるところだった。


『す、すまない兄上、戦闘中だというのに……』

『ずっとあのままでも良かったのに。可愛いし』

『か、揶揄わないでくれっ!?』


 あああ、兄上が本気で言っているのがわかるから余計に恥ずかしい。そして私が恥ずかしがっていることも筒抜けだという羞恥プレイ。


『と、ところで世界喰いは大丈夫なのか?』


 ずっとイチャイチャしていた記憶しかないが……


『うん、襲ってこないな。魔璃華が相手だからかもしれない』


 なるほど、クーちゃんを従えている私を警戒しているのか。



『兄上、世界喰いは滅ぼさなければならないんだよな?』

『そうだな……仮に敵意が無くなったとしても、世界を喰らって旅を続けるのが彼らの本能だとすれば共存は難しいとは思う』


 わかってはいる。それしかないことぐらい、だけど――――彼らだって生きるためにしていることだ。


 私欲にまみれた人間とは違う。人間以外の生き物は皆必死で生きているだけだ。


 人間なんて滅んでしまえば良い――――正直そう思っている。


 資源を食いつぶし、たくさんの生き物を絶滅に追い込み、環境を破壊し続ける存在――――


 人間こそが――――紛うことなき『世界喰い』ではないのか?



 いや……やめよう。もはや人間だけの問題じゃない。この世界すべてが消滅してしまうのだ。それは――――駄目だ。ならばせめてこの手で――――


『まあ……難しいとは思うけど、要するに吸収したエネルギーを循環させてやれば良いんだよな……『世界喰い』は貯め込んだエネルギーを使って次の世界へ移動するわけだから……移動手段を無くしてしまえば……』

『あ、兄上……? もしや倒さなくてもいい可能性を考えてくれているのか?』

『何度か戦ってよくわかった、アイツらに悪意というか意思のようなものは無い。それに――――クーちゃんも愛嬌あって可愛いし……救えるものがあるなら考えない理由はないさ』


 兄上……ありがとう。その気持ちだけでどれほど救われたか。


『そうなるとやはりもう少し情報が欲しいな』

『わかった。絶望させてやれば支配下に入りやすくなるんだよな?』

『ああ、可哀想だが瀕死になればなるほど成功率は上がる』

『よし、じゃあ『転移』を使わせてもらうよ?』


 『転移』? 私の固有スキルか……そういえばそんなのあったな。兄上の『ゲート』の下位互換だし使う機会もなかったから忘れていたが――――


『あはは……焔もそうだったけど、魔璃華のスキルは俺の下位互換なんかじゃないぞ? 『ゲート』は移動用であって戦闘中はまず使えないだろ――――こんな風にさ』


 兄上が『転移』の連続使用で『世界喰い』を切り刻んでゆく。相手からすれば悪夢そのものだろう。


 よし、これなら期待できそうだ。 

  

 

『ところでさ――――』

『どうしたんだ兄上?』


『……この猫耳と尻尾は何かな?』

『……皆からのリクエストだな!! 似合ってるぞ兄上』


 きゃわいい!! 兄上がきゃわいい!! 


 そして――――気付いていないようだが、黒猫仕様のもふもふな毛皮と肉球も装備している!! これは、私の趣味だ。



 幻想形態『魔璃華』の型――――その黒猫魔法と転移の組み合わせは凄まじく、『世界喰い』は克生の猫パンチや引っ掻き攻撃で完全に破壊、無力化されてしまうのであった。 

クロエ、焔、聖、紗恋「魔璃華、グッジョブ!!」


克生「うう……めっちゃ恥ずかしい」

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