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義妹ハーレム  作者: ひだまりのねこ


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第九十話 女神の提案


「提案……ですか?」


 頬に添えられた両の手は、まるで力を入れていないように見えるのに、克生はまるで魅入られたかのように身動きひとつ出来ない。やっとのことで言葉を発すると、女神は軽く頷き耳元でささやいた。


『克生くん――――キミ、私の旦那さまになりなさい』

「――――へ!?」


 女神の発した言葉に克生の頭が混乱する。


「あ、あの……旦那さまってもしかして夫婦関係って意味で言ってます?」

『あら? 他に意味があったかしら? その通りよ』


 聞き違いだったら良かったのだが、どうやらそうじゃないらしい。克生の混乱は収まるどころか深まるばかりだ。


「えっと……基本的な質問なんですが、神さまって結婚するものなんですか?」

『当たり前じゃない、まあ……人間と違って色んなものと結婚出来るけどね?』

「色んなもの?」

『例えば獣と結婚した場合、生まれるのは神獣、木と結婚した場合、神木が生まれるわ。世界樹とか有名でしょ?』


 どうやら神さまというのは色んな意味ですごいらしい。


 その話を聞いた後だと、人間と神さまなら比較的普通なのかなと思えてくる。少なくとも見た目は似ているし。


『私もね、そろそろ結婚したいなあって思ってたのよ。あ、勘違いしないでね? 誰でも良いわけじゃないのよ、こんな提案するのは克生くんだからだし、それに他の婚約者のこととか気にしなくていいからね、私は別枠ということで』


 ちょっと慌てる様子を見ていると普通の女の子に見えてくるから不思議だ。神さまの年齢などわかるはずもないが、女神の外見年齢は妹たちと大体同じか少し下に見える。それだけにちょっと背伸びしている感じがなんだか微笑ましくて克生は思わず笑ってしまう。


『むう……子ども扱いして!! こう見えて克生くんよりもずーっとずーっと年上なんだからね!! それで? 返事はまだ聞いてないけど?』


 返事を聞くまでもなく克生の心など筒抜けなのだが、様式美という奴らしい。


「女神さまのことは好きですし、俺としては喜んで提案を受けたいと思ってます」

『そ、そう……なんだか照れるものなのね。と、とにかく、今この時をもって私たちは夫婦となりました。これから末永くよろしくね、克生くん』


 顔を赤くしながら婚姻成立を宣言する女神。相手が神である以上、言葉はそのまま契約となる。別枠とはいえ、克生はいきなり結婚してしまったことに少々落ち着かない気持ちになる。


「はい、よろしくお願いします、女神さま」

『……ラクシュよ、私の名前』

「ラクシュ……とても素敵な名前ですね」

『ありがとう……名前で呼ばせるなんて旦那さまだけなんだからね、感謝しなさい』


 ただでさえ美しい女神の恥じらう表情は破壊力抜群。克生は見惚れることしか出来ない。


 いつもならこの流れに乗ってイチャイチャを始める所なのだが、真面目な克生は『世界喰い』のことは忘れていない。そして――――この結婚にもおそらく意味があるのだろうと予想もしている。


「あの……それで俺たちはこれから何をすれば?」

『ば、馬鹿ね!! ま、まだ何もしないわよ……心の準備というのがあるんだから――――って、ああ……そっちね。紛らわしいこと言わないで!!』


 何もしていないのに真っ赤になった女神に滅茶苦茶怒られてしまう克生だが、理不尽には慣れているので気にしない。


『はあ……この流れで世界喰いの話をすると――――まるでそのために結婚したみたいで嫌なんだけど仕方ないわね……。あのね克生くん、神の力の行使には制限があるし以前も説明したけど、私は自分の管理する世界には直接関与出来ない。もちろん勇者や聖女、克生くんたちに与えた加護のような形で間接的に関わることは出来るけど、その力はルールから逸脱出来ない。でもね、一つだけ例外があるの、それは――――配偶者とその間に生まれた子。私は未婚だったから使ったことは無いけどね』

 

 女神の嫌そうな表情を見れば、彼女は純粋に結婚したかったのだろう。きっかけが欲しかったとはいえ、切り出すタイミングが最悪だったと自己嫌悪に陥っているラクシュの姿を見て、克生はなんだか悪いことをした気分になってくる。


「俺はたとえ利用されたのだとしても嬉しいですよラクシュ、もちろんそうではないとわかっていますが」


 だから、精一杯心を込めて伝える。心が読めるラクシュにはきっとそれが一番だと思うから。


『克生くん……信じてくれるの?』

「もちろんです。俺の心わかるんですよね?」

『うん……だけど直接言ってもらえるとやっぱりうれしい!!」

 

 すっかり上機嫌になって克生に抱きついてくるラクシュ。


 良くも悪くも女神の威厳も貫禄もなく心のままに身体を預けてくるが――――


「く、くうっ!!」


 克生は苦悶の表情を浮かべながら全力で新婦を受け止める。


 人間と神では存在の次元、そして密度が違う。二次元の絵と生身の肉体を持った人間以上に違う。ようするに――――滅茶苦茶重いのだ。ステータス世界最強の克生だから受け止められたが、普通の人間なら潰されてそのまま消滅していただろう。


『あはは、ごめんね重かったでしょ? これ以上は圧縮出来ないのよ』


 どうやらこれでも限界まで軽くしてあるらしい。 


「俺、頑張ります、早くラクシュをお姫様抱っこ出来るようにもっと強くなります!!」


 愛しい旦那さまの決意を聞かされて、ラクシュは蕩けそうな表情を浮かべる。


『克生くん……さすがに今すぐ子は産んであげられないけど――――いや、無理すれば出来なくはないのよ? で、でもね、こういうのはきちんと段階を踏んでゆっくりと愛を確認しながら育むものであって――――』


 ラクシュは克生に抱きついたままグイと距離を詰めて見つめ合う。


『だからね――――私の精一杯の愛をキミにあげる』


 ラクシュとの距離がゼロになる。



 『女神のキス』――――愛はね 無敵なんだから。

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― 新着の感想 ―
>あら? 他に意味があったかしら? 甘いな女神様。 ピッチャーキャッチャー的な意味もあるではないか(ォィ とにかく……ストライクゾーンであったと(ぇ
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