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義妹ハーレム  作者: ひだまりのねこ


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第八十七話 VS 植物の魔物


 凄まじい克生のプレッシャーを受けてもなお植物の魔物は逃げる様子は無い。あるいは動けないのかもしれないが。


 最初に切断された根に関しても特にダメージを受けた様子は見られない。目は見当たらないが向けられる強烈な視線に克生は目を細める。その瞳に宿るのは恐怖ではなく好奇の色だ。


 にいっ、と口角を上げる克生の様子に聖はうっとりと頬を染め、焔、魔璃華、そして紗恋は半ば呆れたように苦笑いする。


 対峙していたのは一瞬だった。


 克生は鋭く踏み込むと一気に敵との距離を詰める。その速度は義妹たちですら辛うじて残像を捉えられるほどで、他の人間からは瞬間移動したようにしか見えなかっただろう。



 おそらく本体からの距離が離れるほどに速度や威力が落ちるのだろう。植物の魔物は自身の周囲に無数の根を集束し、接近する克生を囲むように展開する。


 しかし――――根の速度が多少上がったところで意味は無かった。絡めとって養分にしようとする敵の思惑を嘲笑うように克生は根を切り裂きながら本体へ斬撃を入れる。


 ギャィィィィィン


 完璧な角度、タイミング、速度で決まったかに思えた克生の攻撃が弾かれる。


「っ!? 浅いか……」


「お兄ちゃんの攻撃が弾かれた……? なんて硬さ……」


 常に冷静沈着な聖が目を見開く。


「や、ヤバいですわっ!?」

「むう……」


 信じられないと慌てる焔と冷静に観察する魔璃華。


「……どうやら本体の表皮はかなりの強度があるみたいね……厄介だわ」


 一番威力の高い克生の攻撃がまともに通らないのであれば物理攻撃は絶望的だ。紗恋は面白く無さそうに鼻を鳴らす。


 本体を攻撃されて怒ったのか、枝が激しく揺れて無数の葉が射出される。まるで鋭利なナイフのように尖った先端は間違いなく相応の威力があることだろう。


「焔、火だ!!!」


 克生の声に焔が即座に反応する。


「――――天地の狭間に燃え盛りし焔、陰影をも焼き払う終焉の業火よ、我が手に集いて全てを消し去れ――――」


 ――――『灼熱の終焉』!!!


 伝説の魔導士の血を引く焔の天賦の才と克生の創造スキルが融合することで生み出されたオリジナル魔法『灼熱の終焉』金属すら瞬時に蒸発し灰も残らない最強最悪神殺しの炎だ。


 『灼熱の終焉』は無数の葉を焼き尽くして本体へ襲い掛かる。


 ゴオオオオオ


 辺り一帯に何とも言えない異臭が充満する。魔物が焼かれて焦げている臭いだ。


 燃えやすい葉や細い枝はすでに焼け落ちて頑丈な本体すらこのままいけば燃やし尽くせるかもしれない。


 だが――――焔の表情は厳しいままだ。


「駄目ですわ……燃やし尽くせない……」


 『灼熱の終焉』は魔力を極限まで圧縮して放つ極大魔法。威力は絶大だが、短所は持続時間が短いということだ。もっとも本来であれば一瞬で焼き尽くせるので弱点にはならないのだが。


「クロエ!!!」


 克生の言葉に天空から氷の柱が大地へと突き刺さる。


 上空で待機していたクロエが放った『氷雪のブレス』だ。


 超高温に熱せられていた植物の魔物の身体は、急速に冷却されて脆くなる。


「聖、魔璃華、紗恋さん、障壁の強度上げて!!」 


「わかりました」

「うむ」

「了解」


 三人が協力して障壁の強度をさらに強化する。



「――――身体強化」


 身体能力を上げるだけの基本の魔法、普通ならそこまで脅威になるものではない。


 だが――――世界最強クラスのステータスを持つ克生が使うとなればそれは――――相手にとっては絶望的な意味を持つことになる。



「これで――――終わりだ」


 克生の魔剣が一閃し――――植物の魔物が両断される。


「魔璃華!!」


 克生の声に魔璃華が前に出る。


「やっと出番か――――幾千の闇を従えし古の神よ、我が声に応え、その力を与えよ――――盟主の覇権!」


 漆黒の闇が植物の魔物を包み込む――――


「……魔璃華上手くいった?」

「……うむ、思っていたのとは違うが――――一応は成功したようだ」


 克生が最後に魔璃華に攻撃させたのは、一つは攻撃に関与させることで確実にレベルアップさせるためだ。


 魔物を倒すことによるレベルアップというのは、わかりやい反面、その判定は曖昧な部分が多い。攻撃すれば確実なのだが、直接戦闘には参加しない後衛職も戦闘に貢献すればレベルアップするのだが、今回魔璃華は紅蓮の刃を魔力障壁で守っただけで戦闘に貢献したかと言われると微妙。滅多にないチャンスだったので不確定要素は無くしておきたかった。


 もう一つの狙いは――――



「うおおおおおお!!!! す、すげえええ!!!!」

「な、なんじゃこりゃああ!!!!」

「ち、力が!! な、何という万能感!!!!」


 

 『紅蓮の刃』が大騒ぎしている。


 無理もない。天文学的な経験値が流れこんだことで、本来であれば天才が生涯をかけて到達できるかどうかという人族としてのレベル限界まで一気に上昇してしまったのだ。



「たしかにこれは凄いですね……」

「うわっ……これはエグイですわね」

「はわわ……すごいです!!」

「おお……また最強に近づいてしまった」


 すでに通常の戦闘ではレベルが上がりにくくなり始めていた妹たちも驚きに目を見張る。

 

「まさか……俺までこんなにレベルが上がるなんて……」


 一番驚いているのは克生だ。英雄スキル以外ではほとんどレベルが上がらなくなっていた彼にとって、久しぶりの戦闘によるレベルアップだった。しかも一つや二つではない、一気に百近く上がったのだ。


「くっ……なんという疎外感なのかしら……勿体なくて涙が出るわ……」


 一方で一番悔しがっているのは紗恋だ。レベル上限が無い克生たちとは違い、彼女はすでにレベル上限に達している。強敵を倒したというのに何もご褒美がないのだから。



「そんなに落ち込まないでください紗恋さん。大丈夫、その分後でたっぷり埋め合わせしますから」


 半泣きの紗恋を克生が慰める。


「や、約束だからね!! 絶対だからね!!」

「はい、約束です」



 すっかり機嫌を直した紗恋が魔物の残骸を慎重に調べている。


「これは――――とんでもなく有用な素材よ!! 最高級の魔石が霞んで見えるぐらい」


 紗恋によれば、魔物の残骸は信じられないくらい超高密度に圧縮されたエネルギーの塊なのだとか。


 一欠けらで高品質の魔石数百個分以上のエネルギーを持つそれは――――無限の可能性を持った賢者の石に等しいほどのお宝らしい。


「とりあえず市場に出したらヤバいのは確実だから利用するにしても慎重に扱わないと――――」


 当面このことは克生たちと『紅蓮の刃』だけに留めるということで話はまとまった。



 そして――――


「うわあああん、カツキさまああああ!!!」

「よしよし、怖かったねマイア」


 無事目を覚ましたマイアも克生に抱きしめられてようやく復活したのであった。

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