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義妹ハーレム  作者: ひだまりのねこ


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第八十三話 ダサラ大森林にて


 ドガアアアアアン!!!


 派手な爆発音と強烈な光、そして爆風が辺り一帯の木々を薙ぎ倒す。


「ねえクララ、今……何月何日だっけ?」


 竜巫女クララに話しかけたのは、燃えるような紅い髪を爆風になびかせる魔導士、深淵のレイカだ。


「……わからないわ。今が昼なのか夜なのかだってわからないのに」


 なかば冗談、半分本気でクララが答える。無論、その視線は油断なく張り巡らせた結界の外に固定されているが。


「たしかに。まったく……いつまでこんな生活を続けなければならないんだよ……敵は増え続ける一方だし、そろそろ限界が近いんじゃない?」


 伝説の魔導士と呼ばれたレイカは、その深紅の双眼でそびえ立つ大樹の化け物を見据える。


『世界喰い』 女神によればこの世界の理の埒外からやってきた災厄そのもの。


 世界そのものを養分として成長し、放置すれば百年ほどで世界が成り立たなくなるらしい。


 そんな物騒な存在、本来ならば焼き払ってしまいたいところなのだが、『世界喰い』は桁違いに強力で限界に縛られたレイカでは本体に傷一つ付けることは出来ない。女神から力を付与されている規格外勇者冬人ですら倒せないのだから当然ではあるのだが。


 彼ら勇者一行がこの場で『世界喰い』と対峙しているのは、倒すことが目的ではない。


 養分と成り得る魔物を狩り、同時に『世界喰い』が増えないように食い止める。そうして時間を稼ぎながら――――待っているのだ。


『世界喰い』を倒せる可能性を持つ『超越者』の出現と到着を。



「深淵のレイカさまがずいぶんと弱気ですね、まあ……同感ですけれど。クロエちゃん……元気かしら? あの子、しっかりしてそうに見えて意外と抜けているところがあるから心配だわ……」


 クララは我が子の顔を思い出しながら魔物の群れをブレスで焼き払う。彼女ほどの竜巫女となれば人型のままブレスを吐いたり、飛行することも難しいことではない。


「ハハハ、うちの焔も大概ヤバいからなあ……でも、今頃は一緒に暮らしているはずだから大丈夫じゃないか?」


 レイカは笑いながらブレスを逃れた残党を消し炭に変える。


 もはや呼吸をするように自然な作業と化しているが、ここ最近集まってくる魔物の数が増えており、休む暇も無くなってきている。二人が言うようにたしかに限界は近いのだ。


 いくら強いと言っても魔力に限界はあるし、疲労やストレスは溜まってゆく。


 当初は交代で休養日を設けることも出来ていたが、ここしばらくは三交代制、二十四時間体制で戦う羽目になっている。


「でも……一番疲れているのはリーダーですよね」

「まあ……そうだな、奴には代わりがいない」


 魔物であれば他のメンバーでも対処できるが、『世界喰い』の『種子』や『芽』は勇者冬人にしか倒せないのだ。常に臨戦態勢に入れるように準備しなければならず、その負担は想像以上に重くのしかかっている。


「ま、まあ……半分は私たちのせいですけれど」

「そ、それは……ほら、ストレス溜めるのは良くないだろ?」


 頬を染めるクララとレイカ。


 パーティメンバーの夜のお相手。勇者冬人の大切な役目だ。ストレス解消の目的もあって、戦場であるが誰も自重はしていない。そうでなければとっくに潰れていたことだろう。


 もっとも冬人にとっては実際に相手をするのは克生の母エリカと聖の母ヒカリだけで、クララ、レイカ、キリハについてはそれぞれの相手に意識が切り替わるのだが――――身体は一つなので疲れるものは疲れる。


「それで? あの子たちはいつ頃来れそうなのですか? どうせ使い魔で調べているんでしょう?」

「ああ、もうこの世界には来てるし、こっちへ向かってはいるみたいだけど……覚醒したばかりだろうし、誕生日的にまだ覚醒していない子もいるはずだからな。まだまだ時間はかかると思う」


 辿り着いたとしても力が伴わなければ意味がない。たとえ天賦の才を受け継いだサラブレッドといえども最初から強いわけではない。仮に指導したとしてもクララたち勇者一行の領域に届くまでには何年、何十年もかかるかもしれない。


 それでも愛する我が子と再会できる喜びは今の彼女たちを支える大きな力となっている。こちらの世界を知らない子どもたちを巻き込んでしまうのは本意ではないけれど、ともに戦えるという希望があるからこそ頑張れる。


「後な……残念な知らせがある。竜皇国が――――滅んだ」


 レイカの言葉に表情が凍り付くクララ。竜皇国出身で当然家族や友人もたくさんいる。平常心でいられるはずがない。


「そ、そんな……嘘……ですよね?」

「嘘だったら良いんだけどね……でも安心して、土地が浸食されただけで人的、竜的被害はそれほどではないはず。皆他国へ避難しているみたいだ」


「そ、そうですか……原因はやはり『世界喰い』でしょうか?」


 少しだけ安堵のため息を漏らすが、元凶であろうものに思いを至らせ眉を顰めるクララ。


「ああ、たぶん私たちが来る前に飛ばした『種子』や『芽』が成長したんだろうな……何とかしたいが私たちはここを抑えるので精一杯、どうしようもない」


 悔しそうに歯を食いしばるレイカだったが、すぐに顔を上げて叫ぶ。


「っ!? どうやらお喋りの時間は終わりみたいだ。クララ、すぐに冬人を起こして来い『種子』だ!!」

「わかりました!!」


 飛ぶように消えたクララの姿を目で追いながらレイカは軽く息を吐く。


「やれやれ……また魔物の群れか。冬人が来る前に片付けておかないとね」


クララ「リーダー!! 起きてください!!」

冬人「クララ、『世界喰い』か?」

クララ「はうっ!? なんて格好で出て来るんですかっ!? 服くらい着てください!!」

エリカ&ヒカリ「もう……今良いところだったのに……」

クララ「……貴女たちも服を着てください!!」

 

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