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義妹ハーレム  作者: ひだまりのねこ


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第七十五話 私の指定席


「ええっ!? あ、あのKATSUKIはさんが代役で出てくださるんですか!?」


 マネージャーはもちろんディレクターやスタッフ、スポンサー企業の人たちも大騒ぎになった。


 当然だろう。今までどれだけ依頼しても首を縦に振らなかったあのKATSUKIが通り掛けに声をかけられて飛び入りで代役をしてくれると言うのだから。


 依頼した私自身がいまだに信じられないのだから笑ってしまう。


「CM撮影は初めてなので緊張するなあ」 

「……絶対嘘だよね? ベテランのオーラが出てるんだけど!?」 


 初めてのCM撮影を前にして私と談笑する余裕がある。はっきり言って怪物だ。天性のスターなのかもしれない。


 集中しろ、真尋!!!


 私が彼を誘ったんだ、だから負けられない。今の私の全力――――いや、それ以上出さなければKATSUKIの隣には立てない。


「真尋、行ける?」

「もちろん!! 史上最高のCMにしてみせる!!」




「お疲れ様でした!! 撮影終了です」


 これほど集中したことは記憶にない。私史上間違いなく最高の自分を出せたと自信を持って言える。


「お疲れ様、真尋」


 そして――――それは彼の――――KATSUKIが居てくれたから。


 彼が高みから私に手を差し伸べて――――引き上げてくれた。だから私は自分の限界を超えることが出来た。彼は超一流だ……悔しさすら感じないほど圧倒的な。


 だからこそ気になって仕方がない。


「ねえKATSUKI、なんでもっと芸能界で活躍しないの? キミなら間違いなくトップになれるのに」 


 私とは違う、彼は本物のトップになれる才能を備えてる。


「ははは、俺の本業は小説家とイラストレーターだから。俳優をやるつもりはないかな」

「……え!? KATSUKIってイラストレーターだったの……?」

「ああ、もしかして興味あった?」


「う、うん……実はね、私……イラストレーターになるのが夢というか目標なんだ。なぜかアイドルやってるけど」


 なんでだろう、今まで誰にも話したことなかったのに、彼になら抵抗なく話せてしまう。


「あはは、わかる、俺もモデルやるつもりなかったのに結局やらされているし」

「ふふ、KATSUKIは人が良さそうだから苦労してそう」

「人が良いかはともかく苦労はしてるかも」


 KATSUKIの笑顔は嘘が無い。だから心にスッと入ってくるのかな。私もつられて笑顔になってしまう。


「そういえば真尋は好きなイラストレーターとかいるの?」

「いる!! 今日もイラストブック買ったんだけどね、もう最高ですっごく好きなんだ!!」


 さっき買ったイラストブックをKATSUKIに見せる。共感して欲しい気持ちが少しとプロのイラストレーターである彼の目からみた感想が聞きたかったから。


「あれ? これビクトゥリーのイラストブック!?」

「え!! KATSUKI知ってるの!!」

「あ、いや……知っているというか――――俺がビクトゥリーなんだけど」




「……へ?」

「いや、だから俺がビクトゥリーというペンネームで活動しているイラストレーターなんだよ」

「ええええっ!? ま、マジで!?」

「うん、マジで」

「……なんか描いて」

「ええっ!? 無茶振りするな……なんか紙と描くものある?」

「……これに描いてほしいんだけど」


 イラストブックを差し出すと、KATSUKIは手慣れた様子でサラサラと描いてくれた。


「はい、時間無いからラフスケッチだけど」

「も、もしかして……これ……」

「うん、真尋だよ」


 イラストブックの最後のページには、憧れのビクトゥリー先生のタッチで描かれた私の姿が!!

 

「はうう……一生大事にする!! 家はないけど家宝にするね!!」

「はは、大袈裟だな、そこまで喜んでもらえるなら、今度はちゃんと描かせてもらおうかな」


 なんですとっ!!


「わかった……私も覚悟を決める。先生には私のすべてをちゃんと見てもらわないと!!」

「えっと……あまり無理しないようにね?」


 



「おい、聞いたか?」

「ああ、休学していた椎名真尋が学校来てるんだろ?」

「マジかよ!! 星彩学園万歳!!!」

「でもめっちゃ忙しいはずなのにどういう心境の変化なんだろうな?」

「そんなの何でもいいじゃん、女神の御姿を拝めるだけで幸せだあ!!」 



「椎名のこと聞いたか克生?」


 隆道が興奮気味に話しかけてくる。


「椎名? 誰だそれ?」

「誰って……椎名真尋、さすがに知ってるだろ? 国民的アイドルだぞ」

「あ、ああ、そうか……椎名って言うのか。それで? 彼女がどうかしたのか?」

「相変わらず反応薄いな。実はさ、彼女うちの生徒なんだよ」

「え? そうなの? でも一度も見かけたこと無いけど」

「まあ……中等部以来休学してたからなあ……克生が知らないのも無理はないか。それでさ、彼女が今日から復学するんだよ、それで大騒ぎになってるってわけ」 

「そっか……楽しみだな」


 思うところがあるのか珍しく興味を示す克生に隆道も嬉しそうに同意する。


「ああ、マジでめっちゃ楽しみだよな」




「はい、皆静かに~!! すでに知っている人も多いみたいだけど、休学中だった椎名真尋さんが今日から復帰することになりました」


 担任の真冬は珍しく騒がしい教室内を眺めながら落ち着かせてゆく。


 通常真尋のようなアイドルは芸能科に入ることが多いのだが、彼女は元々イラストレーター志望で、芸術コースがある普通科に所属している。


「みんな久しぶり~!! 中等部以来だから忘れられてないと良いんだけど?」


 真尋の自虐ネタにクラスメイトたちはどっと沸く。たった一言で心を掴んでしまう、それは真尋の持つ天性の才能であり、同時に苦労の上に磨き上げられた財産だ。


「えっと……椎名の席だが――――あ……すまん、今机と椅子持ってこさせるから」


 突然の復帰の混乱もあって、現在教室には空いている席が無かった。


「ああ、大丈夫です真冬ちゃん、私の席決まってるんで!!」

「……へ?」

 

 訝しむ真冬を背に走り出す真尋。



「来ちゃった、マイマスター!!」

「……真尋、なぜ俺の膝の上に座っているか聞いても?」

「一生側にいるって決めたからに決まってるでしょ、絶対逃がさないからね」


「克生っ!? これは一体どういう……」

「香月っ!? 貴方という人は……」


 思わず叫んでしまう隆道と真冬。


「「「「ええええっ!?」」」」 


 そして色んな意味でクラス中が阿鼻叫喚、悲喜こもごも入り混じる瞬間となるのであった。

クロエ「克生お兄さまがまたやらかしたそうです」

焔「真尋ちゃんですわよね? まさか知り合いだったとは」

魔璃華「むう……私も兄上の膝上で授業を受けたい」

聖「……気配を消せばワンチャンいけるでしょうか?」

千鶴「いやいや、絶対無理だって聖!!」

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