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義妹ハーレム  作者: ひだまりのねこ


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第七十三話 新刊旋風


 にゃ、にゃんてこと……まさか本当に――――本当に私の生徒が真夏にセーター先生だったなんて!!!


 ああ……神さま、ありがとうございます!! ありがとうございます!! ありがとうございます!!


 あの夢にまでみた憧れの先生が……今、私の目の前に――――私の手の届くところにいるなんて。


 溶けてゆく……何もかもが溶けてゆく。


 そうだ――――私の人生には真夏にセーター先生だけが必要だった。お金を得るのは先生の本やグッズを買うため、万一先生に何かあった時には私が養って差し上げるため!! そのために私は生きてきた。


「ま、真冬先生……? 大丈夫ですか」


 心配そうに覗き込む彼が狂おしいほど愛おしい。


「ううん、大丈夫じゃない」

「ええっ!? たしかに少し休んだ方が良さそうですね、ちょっと失礼します」


 きゃっ!? ま、まさかのお姫様抱っこ!? 更に熱が上がってしまう!!


「か、香月、機材は?」

「ああ、大丈夫です。もう置いてきましたから」

「そ、そう……」


 興奮しすぎて頭がボーっとしている。彼が大丈夫だというのならそうなのだろう。



「ここならゆっくり出来ますよ」

 

 星彩学園にはいつでも仮眠などが出来る休憩室が完備されている。


「待って、降ろしちゃヤダ……」


 ベッドに降ろそうとした香月――――いや、真夏にセーター先生の首に手を回して抱きつく。


「せ、先生……?」

「お願い……もう少しこうしていて。先生の温もりが感じたいの……」


 駄目だ……もう止まらない。彼が真夏にセーター先生だと知ってしまった以上、私にはもう何もためらう理由が存在しない。


 泣きながら――――子どもみたいにしがみつく私を――――先生は黙って抱きしめ続けてくれた。


 ああ……好き!! 先生大好き!! もう離れたくない!! ずっとこのまま……こうしていることが出来たらどんなに幸せだろうか。


 でも――――現実は残酷だ。


 私は次の授業があるし、先生は生徒として授業を受けなければならない。


「すまない……みっともないところばかり見せてしまって……」

「そんなことないですよ、俺は嬉しかったです。こんなに俺のことを想ってくれていたなんて」


 はあ……なんて尊い笑顔……私はキミのためなら死ねる!!!


 決めた……決めたぞ!!


「香月、いや――――真夏にセーター先生、私と――――結婚してくれ!!」

「ええっ!? それは嬉しいですし、俺は構わないですけど――――」


 ははは、わかってる。私みたいな女と結婚なんて嫌に決まってるよな……困らせてしまってすまない。だが――――これは私のけじめというか覚悟なんだ、一生先生を支えてゆくという私の――――


「ええええっ!? い、良いの!?」


 まさかのオーケーキターーーーーー!!!!!


「あ、その……ですね、俺、他にも婚約者が複数いまして……俺は構わないんですが、先生が嫌なんじゃないかと……」

「ハハハ!!! 私を舐めないでください先生!!! ハーレムどんと来いですよ!! むしろ先生が私だけのものになるとかあり得ませんから!!!」

「あはは……それは……ありがとうございます?」


 私は先生の側に居られるのなら何でもいい。最悪使用人でもメイドでもアシスタントでも何でも良かったんだ。あああ……嬉しい!! これからは共に人生を歩くことが出来る!! 先生の仕事を隣で見ることが出来るんだ!! ぐふふふふ、想像しただけで涎が……!! 


「えっと……良かったら先生も家に来ますか?」  

「ええっ!? 良いんですか!! 是非!! すぐにでも!!」

「あはは、こっちはいつでも大丈夫ですから、ゆっくり準備を」

「ふふふ、こんなこともあろうかと、いつでも引越しできる準備をしていたんですよお!! 今日は……さすがに無理ですけど、明日、引越しますから!! 待っていてください先生!!」


 憧れの共同生活!! うおおおおおお!! めっちゃテンション上がってきたああああ!!!


「先生!! 授業始まりますよ!!」

「いや……授業するの先生ですよね?」


 


「――――というわけで、今日の授業は真夏にセーター先生の新刊についてだ!!」


 潤沢な資金を使って先生の新刊を副教材として一括購入したのだ!! もちろん図書館にも全作品常備させているのは当然だ。


「さあとにかく第一章まで読め」

「「「「はい!!」」」」


 ふふふ、一度読んでしまえば真夏にセーター先生ワールドから抜け出すことは出来ない。


 またファンを量産してしまったな。私も罪な女――――いや、むしろ感謝されるべきだろう。


 人生において最大の不幸は――――先生の作品を知らないことなのだからな。




 ――――昼休み――――



「今日の授業、克生お兄さまの新刊が用意されていてびっくりしました」


 クロエが嬉しそうに報告する。


「クロエ姉さまのところも? 特級クラスも同じだったわよ!! さすが星彩学園ね、わかっているのですわ!!」


 焔は誇らしくてたまらないといった様子で同じテーブルを囲む愛しの兄へ熱い視線を送る。


「生徒会にも関係者への配布用として五千部ほど届いているんだがな……」


 魔璃華はさすがにやり過ぎだろうと少々苦笑いする。


「そういえば購買部で克生さまの新刊本が平積みされてましたよ。私も三冊ほど購入しましたが」


 千鶴はにっこりと微笑みながら克生にサインをねだる。


「あはは……一体何がどうなっているのやら」


 千鶴の差し出した本にサインを書きながら困惑した笑みを零す克生。


「学園は関係ありませんが、鳳凰院グループの新人研修に克生さまの新刊が使われていますね。グループだけで十万部は購入しているはずですので、ランキング入りは間違いないかと」


 聖は涼しい顔でそんなことを言い放つ。


 克生としては、ランキングよりも新人研修用というのが気になって仕方がない。


 聞けば焔や聖がやらせたわけではなく、現場の意見で決まったそうなのだから克生が文句を言うのは筋違いだろう。そもそも克生が真夏にセーター先生であることを知っているのは家族だけだ。 


 それに――――きっかけはどうであれ、自分の作品に触れる人が増えると言うのは書き手として嬉しいこと。克生は異界で会った女神に感謝の祈りを捧げる。


 異世界ハーレムファンタジーを研修に使うのはさすがに無理があるんじゃないかと思いながら。

編集長「おい、真夏にセーター先生の新刊どうなっているんだ!? 全国から品切れで追加注文が殺到しているぞ!!」

編集A「増刷を急いでいるんですが……追いつきません!!!」

編集長「はあ……まだ発売初日なのにもうコミカライズとアニメ化の話が来ているんだよな……」

編集B「編集長!! テレビ局からドラマ化の話が来ているんですが!!」

編集長「マジか……先生の時代来たなコレ……先の分まで契約しておいて良かったわ」

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