第六十八話 イチャイチャって何ですか?
次話から本編に戻ります。
「ま、マイアさん? 大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫に決まってるじゃない」
嘘だ、全然大丈夫じゃない。
心臓はバクバクうるさいぐらいだし、全身の血液が沸騰したんじゃないかと思うほど身体が熱い。
私は今、カツキに抱きしめられている真っ最中だ。
なぜこうなったのか――――
それはカツキが私たち『紅蓮の刃』の出資者となったからだ。
勘違いしないで欲しいが、出資の見返りとして身体を差し出したわけじゃあない。まあ……こちらとしてはお金を払ってでも身体を差し出したいくらいなのだが――――話が逸れた。
カツキとの契約はシンプルだ。
私たちは活動資金として年間一千万シリカの提供を受ける代わりに、最近起きている異変に関する情報収集をする。集まった情報は週に一回報告することになっている。
もう一つは、カツキが作った武器や防具、魔道具などの宣伝とモニターをすることだ。
使い心地はもちろん問題点や不具合があったら報告する。実際に使ってみて欲しい機能や要望などを集めるのも仕事の範囲となっている。
基本的な仕事内容はこれだけ。後は自由に活動して構わないというのだから破格の条件と言って良いだろう。
正直我々にとってはメリットしかないが、問題は『紅蓮の刃』がその期待に応えられるほどの力というか強さが足りないということ。
これが有名な冒険者パーティであれば宣伝効果も期待できるだろうが、私たちはようやく中堅に足を掛けたところだ。無名とまでは言わないが、力も知名度も持っていないのが現状。
だが――――カツキはこう言った。
「それで良いんですよ、俺の作ったモノを使って上位冒険者パーティにのし上がればこれ以上ない宣伝になります。皆さまの努力や実力を利用させてもらうみたいで心苦しいですが」
なるほど、たしかに最初から有名な冒険者パーティが使っても意味が無い。カツキは気を遣ってくれたが、自分たちの力は良く知っているから気にしなくて良いのにとは思うが。
そして――――カツキの妹のヒジリがこう言ったのだ。
「宣伝効果を考えるなら、美人で華のあるマイアさんが広告塔として最適でしょう。ですが、もう少し実力が欲しいところですね、簡単に死なれても困りますし。マイアさん、強くなりたくありませんか?」
というわけで、私はカツキに抱きしめられているというわけだ。
「ハハハ、マイア顔真っ赤だぞ?」
「ククッ、本当に大丈夫なのかあ?」
パーティメンバーがそんな私を見て揶揄ってくる。
「うるさいな!! 見世物じゃないんだ、お前らは早く家に帰って奥さんを安心させてやれ!!」
うるさい外野を追い払ったのは良いが、そろそろ限界が近い。
細身なのに引き締まった筋肉、サラサラで艶のある黒髪、長くしなやかな指、それになんだか良い香りがするんだ……。興奮のあまり意識が飛びそうだが、年下相手にみっともないところは見せられないという意地で何とか持ちこたえている。
「マイアさん、そろそろ――――」
ふう……危なかった、あと数分このままだったら、私は天に召されていたところだった。ほっとした気持ちともっと味わっていたかったという寂しさない交ぜになる。
しかし、カツキの『英雄スキル』はとんでもないな……この短時間で私のステータスがとんでもなく上昇した。てっきり私を抱きしめたいから適当に作った話だと思っていたが本当だったようだ。なんかちょっと悔しいと思ってしまう私はもしかして面倒くさいだろうか?
「そろそろ、次の段階に進みましょうか」
「…………へ!?」
次の――――段階!? え……イチャイチャって他にもあるの? ま、まずい……経験が無いからわからないし、色々ともたない。
「さっそく子作りでもしますか? それなら今のステータスが十倍以上になると思いますが」
「こ、こここ子作り!? さすがにそれは――――」
ヒジリの言葉に思わず拒絶してしまったが――――妊娠してしまったら仕事が出来なくなってしまう。将来的にはともかく、今は感情を抜きにしても出来ない話ではある。
「でしょうね。ではキスくらいなら出来ますか?」
「き、きききキスっ!? い、いや、それは――――」
「……出来ないのですか?」
「あ……いや、そうではなく……経験が無くて初めてなんだ。だから上手く出来るか不安で……」
キスしているのを見たことはあるが、自分でしたことは無いし、しようとしたこともない。
「ふふ、それは素晴らしいですね、実に好ましいです。大丈夫ですよ……克生さまはキスの天才ですからね、マイアさんはすべて任せて身を委ねるだけで良いのです」
「そ、そうなのか? わ、わかった……よろしく頼む」
ヒジリが妖艶に微笑む。はたして聖女なのか悪魔なのか……それとも――――
「それでは――――ごゆっくりどうぞ」
外では落ち着かないだろうと用意された部屋の中でカツキと二人きり……
え? 待って、これヤバいヤツ!!
「マイアさん、楽にしていてくださいね」
うはあっ!? 密室効果でドキドキがヤバい……こ、呼吸が――――
「緊張しているんですか?」
「は、はひ……」
「あはは、良かったら俺のこと落ち着くまで好きに触って良いですよ」
カツキの優しい笑顔に緊張なんてどこかへ吹き飛んで見惚れてしまった。
「い、良いのか?」
「ええ、もちろん」
サラサラの髪、もちもちの頬、綺麗な指……わあ……触れているだけで癒される。
「痛くないか?」
「いえ、とっても気持ちが良いです」
そうか……お互いが触り合って気持ち良くなること――――それがイチャイチャするってことなのか。
カツキの唇にそっと触れてみる。
艶があって柔らかい……キスするってことは……ここに私の唇が触れるんだな……。
あまり意識したことはなかった自分の唇にそっと触れる。
私――――キスしたがっている。
強くなるためとか関係ない。触れてみたいのだ。
「き、キス……してくれないか?」
「ええ、喜んで」
「あら、ずいぶん強くなりましたねマイアさん?」
「お、おかげさま……でな!!」
「ふふ、それで……キスはどうでした?」
「……最高だった」
もう他のことでは満足できなくなってしまったけれど。
聖「お兄ちゃん!! 今すぐキスしてください!!」
克生「お、おう!? どうした聖?」
聖「上書きするんですよ、う・わ・が・き・です!! あ、最高のキスでお願いしますね」
クロエ、焔、魔璃華、紗恋「「「「私たちも!!」」」」
克生「上書きのループが終わらないんだが……どうすれば?」




