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義妹ハーレム  作者: ひだまりのねこ


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第六十四話 剣聖候補は強くなりたい


「竜巻一閃!!」


 剣を振り下ろす瞬間に巻き起こる風の勢いを利用して、広範囲に攻撃をしかける技、ダメージよりも牽制、足止めを狙ったものだ。


「疾風閃撃!!」


 目にも留まらぬ速さで敵に詰め寄り、一瞬で相手を斬り裂く技、私の場合『縮地』と組み合わせることで初見殺し――――不可避の一撃となるはずだったのだが――――



 ガキンッ


 受け止めた……だとっ!? あり得ない!! 



「今のはヤバかった。すごい一撃だ」


 いやいや、あっさり受け止めておいて何を言っているんだ?


 ならば――――


「風雷神舞!!」


 風と雷光を刀身に纏わせた剣技、射程という概念を超越した攻撃で一旦距離を取る。


 これもあっさりと躱すか……だが――――本命はこれじゃない!!


「無双影狼!!」


 高速の剣技と複雑な重心移動によって複数の残像を生み出し、敵の視界をかく乱、死角から斬撃を浴びせる奥義――――



 ガキンッガキンッガキンッ


 すべて防がれた……これでも届かないのか……ははっ……呆れるくらい強い。


 ならば――――使わせてもらおう


 我が最強の一撃、秘伝奥義――――


『天地断裂!!!』


 天を裂き大地を割る――――受けることのできない必滅の斬撃だ――――


 カツキの剣が砕け散る。


 まさか秘伝奥義まで出して剣を折る事しか出来ないとは……


「私の勝ちだ――――」


 剣を失ったカツキに勝ち目はない。


「いや――――まだだ、竜巻一閃!!」

「うおっ!?」

 

 馬鹿な……あれは……木の枝!? しかもあの技は私の――――


 まさか――――一度見ただけで真似をしたのか!?


「疾風閃撃!!」


 チイッ、やはりコイツ私の技を……!!


 だが――――所詮物真似、技を知り尽くす私には通用しない。


 今度こそ秘伝奥義で決着を付ける!! その木の枝では受けられまい。



『天地断裂!!!』

『天地断裂!!!』


 な……秘伝奥義まで使える……のか!? 


 同じ技と技がぶつかり合えば――――より完成度の高い方が勝つ!! 付け焼き刃に負けるわけにはいかないんだ!!!!!


 うおおおおおおおお!!!!





「――――大丈夫か、サラ?」


 気が付いたらカツキに膝枕されていた。


「そうか……私は負けたんだな」


 不思議と悔しいという想いは無かった。すべてを出し切って敗れたのだから当然なのかもしれないし、他でもない剣聖の奥義に負けたのだから悪い気はしない。


「いや、結構ギリギリだったよ、ほら」


 ……木の枝がポッキリ折れている。


 おい、それは慰めにならないぞ? 私の心が折れそうなんだが!?



「なあカツキ、私はもっと強くなれるだろうか?」


 ここで喰らいつかなければならないと思った。そうしなければ彼の隣に立つことが出来なくなってしまう。それは――――とても、ものすごく嫌だと思ってしまったのだ。


「ああ、サラはもっと強くなれる。たとえばさっきの秘伝奥義だけど、踏み込みをこうすればもっと速く威力も出せる。後は――――」


 ああ――――そうか……カツキはただ真似をしたわけじゃないんだな。見様見真似ではなく、ちゃんと見て理解して自分の技へと昇華しているんだ。最初から勝ち目は無かったんだな。


 はは……自然と笑いがこみ上げてくる。


 自虐でも諦めでもない――――


 ただ嬉しいんだ、もっと強くなれることが。


 

「サラってば羨ましいです!!」


 手合わせが終わるとミルキーナが駆け寄ってくる。


「羨ましい? ああ、なるほど、ミルキーナも強くなりたいのだな」

「違いますよっ!? まあ……強くなりたいのはその通りですけど、カツキさまに膝枕で介抱してもらえたことがです!!」


 膝……枕? 

  

「な、ななな何を言っているのだ!? あ、あれはそんなんじゃ――――」


 思い出したらまた状態異常が襲い掛かってきた。顔が熱い、一体何なのだこれは……?


「あれえ? サラも顔が真っ赤じゃないですかあ? うんうん、わかりますよ、カツキさま素敵ですからね!!」

「は、ハクア!? お前何を言っているんだ、た、たしかにカツキは強くて頼りになるが――――」


 マズい、鼓動が異常に速い、今敵に襲われたら―――― 


「何を話しているんだ?」

「ひゃうっ!? な、何でもないぞ!!」


 か、カツキ、もしかして聞かれていた!?


「カツキさま!! 実はですね、私たちも強くなりたいという話をしておりまして――――」

「なるほど、ミルキーナとハクアは成人前だからレベルアップ出来ないんだったっけ?」


「はい、私とハクアは同じ日に生まれましたので……あと一週間ほどで成人するのですが――――」


 いかにカツキが凄いとは言っても、こればかりはこの世界の理、どうすることも出来ない。もちろん体を鍛えることや座学を修めることによってある程度向上することは可能だが、レベルアップによるステータス上昇の恩恵と比べてしまえば天地ほどの差があるのだ。


「えっと……方法が無いわけじゃないんだけど……俺から説明するのはちょっと……もし興味があるならサレンさんか聖にでも聞いてくれ」


 なんと、方法があるのか!? ミルキーナとハクアは興味津々だ。近くに居た聖を捕まえてその方法とやらを聞いている。



「ええええっ!? カツキさまとイチャイチャするだけで強くなれるのですか!?」

「はいはいっ!! 私、やります!! 強くなるためですからね、ええ!!」


 ち、ちょっと待て!! ズルいぞ!!


 え……? ズルい? なんだ……もしかして……私もカツキと――――


 い、いや違う、私はただ強くなりたいだけだ!! 努力も無く強くなろうというその姿勢がズルい!! 

そう思っただけだ。



「わーい!! 見てくださいサラ!! 強くなった私の動きを!!!」

「あはははは!! 我は最強の竜ハクアなり!!! 今の私なら天を裂き、大地を割る事すら出来そうなのです!!」


 信じられない……この短時間で本当に強くなっている。そんなことがあり得るのか……?


「ミルキーナ、お前……カツキと何をした?」

「ええ~? そんなの恥ずかしくて言えるわけ無いじゃないですか~!!」


「ハクア、お前はどうなんだ?」

「えっ!? そ、それは……さすがに人前では話せないようなこと……ですけど」


 なんだ……? 二人とも蕩けそうで幸せそうな表情をしている。一体……イチャイチャとは何なのだ?


「そんなに気になるならサラもやってもらえば良いじゃないですか?」

「ひ、必要ない、私は正々堂々修行して強くなるのだ!!」


 そうだ、私は二人と違ってレベルアップ出来るのだからな。



「ふーん……なるほどね、良いわよサラちゃん、イチャイチャについて教えてあげる」

「あ、あくまで参考にするだけだ、強くなる方法はいくつあっても困らないしな」


 聖はどうにも苦手だからな、優しそうなサレンさまに聞いてみたのは正解だった。


「口で説明してもアレだからね、実践で身体に覚えさせた方が早いわよ、じゃあお願い克生くん」


 え? なんでカツキが……? た、たしかに実践で身体に覚えさせた方が早いのはその通りかもしれないが――――


「サラ、じゃあ最初はハグからしてみようか?」


 は、ハグ!? え? あの……ハグって何!? 


「サラちゃん、ハグはね、ぎゅって抱きしめることよ?」


 だ、だだだ抱きしめるううう!? な、なんでそんなことを?


 そう思っている間にも、カツキの両腕が私を包み込むように――――


「……へ? あ、ちょっと……待って、心の準備が――――ひゃあああ!!」

克生「さ、サレンさん!! サラが!!」

サレン「あらあら……彼女には刺激が強すぎたかしら? 困った剣聖さんね」

サラ「きゅうう……」


聖「ふふふ……可愛いですね、サラ」



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