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義妹ハーレム  作者: ひだまりのねこ


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第六十一話 卑劣な企み


「ここがナントの街か、よし、情報を集めるぞ」


 ハーピーからクロエの飛行リレーによって克生たちがやってきたのは、北部の雄大国ケイローンの街ナント。ジラルディ騎士国からダサラ大森林を目指した場合、必ず通過するはずの街である。


 立ち寄ったのは、サラの情報を集めること、ゲートの中継地点とすることが主な目的だが、世界喰いの影響がどの程度出ているのか、あるいは出ていないのか、ダサラ大森林にだいぶ近づいたことで新しい情報が入っているかもしれないという期待もある。


 それに、これまで飛び続けてきたクロエを休憩させること、気分転換することも大切なのだ。もちろん克生たちがこうしている間も、ちゃんとハーピーたちが交代でダサラ大森林に向けて飛行を続けているので抜かりはない。



「克生くんと聖ちゃんは冒険者ギルドと各種ギルドへ、焔ちゃんと魔璃華ちゃんは市場と商店街で聞き込み、クロエちゃんは私と一緒に庁舎・神殿関係へ行くわよ」


 全員強さは全く問題ないが、単独行動は危険だ。迷子とか迷子とか。


 それに全員無駄に美形なので普通にしているだけでトラブルが向こうからやってきてしまう。とはいえ全員で行動するのは非効率なので、二人組で街へ散ってゆく。




 北の鐘が鳴り、待ち合わせの場所に全員戻ってくる。


「間違いなくサラはこの街を通過しているわね」


 全員がサラに関する情報を入手することが出来た。残念ながらすでにこの街には居ないけれど、足取りが掴めたことは大きい。


「それにしても予想よりもずいぶん移動速度が速いですね……」


 仮に馬車を使ったとしてもナントで追いつけるはずだった。何らかの移動手段を持っているのはほぼ確実だと思われる。


「サラさんですが、馬車でホクトへ直接向かったようですわよ?」

「ホクト……やっぱり最短距離でダサラ大森林へ向かっているみたいね」


 ケイローンは王都を中心に放射線状に街道が整備されているが、各主要都市間を結ぶ街道は貧弱だ。ゆえに通常はホクトに行く場合も多少迂回してでも王都を経由するのが安全。


 どうしても急ぐ場合は、護衛を雇うなりして自力で安全を担保する必要が出てくる。


「ふむ、だがサラは剣聖候補なのだろう? その辺の盗賊や魔物に後れを取るとは思えないが?」


 魔璃華は問題ないだろうと楽観的だ。


「あ、いや、それなんだが……」

「お兄ちゃん、私が説明します」


 聖が克生の前に出る。


「サラさんはここナントで二人の同行者を得たようです。その二人は女性、どうやらその三人でダサラ大森林へ向かったのですが――――ここで大きな問題が。実は彼女たち、冒険者ギルドで目を付けられていたらしく、ならず者の冒険者を中心とした連中が道中で襲う計画を立てていたという話を聞くことが出来ました。かなり確度の高い情報ですので間違いないでしょう」


「最低ですね……」

「最低ですわ……」


 クロエと焔は嫌悪感を隠そうともせず、怒りの炎を燃やす。


「どこの世界にもどうしようもない男どもはいるのだな」


 魔璃華は男に襲われることなど日常茶飯事なので、嫌悪というよりは呆れる気持ちの方が強いようだが。


「それでですね、その救いようが無いクズどもですが、それなりに強いようですし、数が集まれば無視できません。さらに最悪なことに、彼女たちが乗った馬車、連中の息がかかっているようなのです。まともに戦えば後れを取る事は無いかもしれませんが……毒や罠を使われた場合、しかも同行者の二人は戦闘向きではないようなので、いかにサラさんが強くともちょっとマズいことになりそうなのです」


 聖は吐き捨てるように得てきた情報を語る。


「それにしても、よくこの短時間でそこまで調べられましたね!?」

「親切な冒険者が全面的に協力してくださったのですよ、クロエ」


 にっこりと微笑む聖に、克生以外の全員が事情を察する。


「というわけなんだ、悪いけど急いで出発したいと思う」


「了解です、私はいつでも飛べますよ克生お兄さま」

「悪いなクロエ、せっかくの休憩だったのに、ろくに観光も出来なくて……」

「いいえ、観光はいつでも出来ますから今はサラさんたちを助けないと」


「聖、間に合うかしら?」

「襲うのは三日目に通過する古代遺跡だそうです、つまり今日ですから……間に合うかは微妙なところですね……」

「ちょ、それを先に言ってくださいよ聖!!? ああもう早く背中に乗ってください!!」


 マントの中で服を脱ぎ、竜化を始めるクロエ。いつもなら街を出てからとなるが、そんなことは言っていられない。もちろん認識阻害が発動しているので騒ぎになることはないのだが、街中で裸になるというのはクロエにとってやはり恥ずかしすぎるのだ。  



◇◇◇



「この先、しばらく森が続くからな、ちょっと早いがこの辺りで食事休憩しよう」


 乗合馬車でナントの街を出発して三日目、ホクトの街へあと二日というところまでやって来た。 


「ねえサラ、そういえばこの辺って古代遺跡があるんですって!!」


 ミルキーナが瞳を輝かせている。


 まあ……ずっと退屈な馬車の中だったから気持ちはわかる。


「食事をとったら散歩がてら少し探検してみるか?」

「ええ、是非!!」

「私も行きます!!」


 そう提案してみると、ミルキーナだけでなくハクアも食い付いてきた。


「お客さん、古代遺跡って言っても面白いものなんて何もありやせんですよ? 魔物やら盗賊やらの隠れ家になってるかもしれませんからやめておいた方が……」


 話を聞いていた御者の男が困ったような顔をしている。


「ハハハ、予定時刻になっても戻らなければ、私たちを置いて出発して構わない。なに、中に入るつもりはないから心配するな」


 乗合馬車は個人で護衛を雇えない人々が共同で利用する交通手段だ。乗客は私たち以外に五人、御者と護衛の冒険者が三人で計十二名。あまり金にならないので盗賊の標的になることはあまりないが、魔物にはそんな事情関係ないし、人身売買目的で狙ってくる輩もいると聞く。いずれにしても油断は禁物だ。




 ……う、何かおかしい……身体が……重い!?


 食後、異様な倦怠感を感じて周囲を見渡せば――――私以外の乗客全員が倒れている。


 しまった――――まさか毒!?


 私は幼い頃からあらゆる毒物に耐性をつけているからこの程度で済んでいるが……。



「あれえ? なんで麻痺毒効いてないんだ?」 


 私を見て驚いているのは――――御者と三名の冒険者たち、そして――――どこから現れたのか十名の男たちもいる。


 ……なるほど、そういうことか。


 男たちの中に見覚えのある顔がいる。冒険者ギルドで絡んできた連中だ。大人しく引き下がったと思っていたが……まさかここまでするとは、な。


「ふん、効いていないわけではなさそうだ。よし、お前ら全員遺跡のアジトへ運ぶぞ!!」


 遺跡のアジト……ね。常習犯か、クズめ。


「へへ、抵抗しなければ何もしねえよ、今はな、ぐへへへへ!!」


 こいつら……強い。言動もやっていることも最低だが、隙らしい隙が無い。せっかくの力をこんなことにしか使えないとは――――本当に救いようが無いな。


 剣が重く感じる……足にも力が入らない。万全からは程遠いが――――これでも剣聖の高みを目指してきたのだ。舐めるなよ外道ども!!!


「貴様ら……覚悟は良いか? 全員この私が――――あの世へ叩きこんでやる!!!」

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