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義妹ハーレム  作者: ひだまりのねこ


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第六十話 旅は道連れ


 金属と汗、酒と煙草やらが複雑に絡み合った匂い、歓喜と悲哀が混じり合った喧騒、私は冒険者ではないが、ギルドのこうした雰囲気は嫌いではない。


 もっとも――――私のような女一人で来るような場所ではないとは思う。まあ……ちょっかい出してくるなら実力行使で黙らせるだけだが。


 あー……早速絡まれている女性が……だから言ったじゃないか、いや言ってはいなかったか。 


 被っていたフードが男たちによって捲られて素顔が露わになる。うわあ……なんて美人!? 溢れんばかりの美しさに囲んでいた男たちが一瞬怯んで後ずさりする程だ。ただ者ではあるまい。


 仕方ない、困っているようだし助けてやるか――――あれ? あの女性……どこかで見たことがある気がするんだが……?



「だから俺たちが案内してやるって、森へ行きたいんだろ? ぐへへ」

「私が行きたいのはダサラ大森林です、森ではありません」


「おい、貴様ら嫌がっているのがわからないのか?」

「ああん? って、また美少女キターーーーーー!!」


 ……チッ、成人した女性に美少女とは褒め言葉ではないのだぞ? 面倒だな。斬り捨ててしまえれば楽なんだが……さすがに他国で問題を起こすのはな。


「その子は私の連れだ、悪いが他をあたってくれ」


 チラリと視線を送ると、彼女はすぐに意図を察してくれた。


「ごめんなさいね、行きましょう、サラ」

「ああ、行こうか」


 男たちは舌打ちをして去っていった。思ったよりも賢明な奴らだったな。ん? 今、サラって言ったのか……? 



「助けてくれてありがとうございます。困っていたので助かりました」

「それは良いんだが、なぜ私の名前を?」

「え? もしかして覚えていないのですか……私、ミルキーナですよ~!!」


 ミルキーナ? あっ!!


「思い出したぞ、竜皇国のミルキーナか!!」

「はい!! お久しぶりですサラ!!」


 竜皇国と騎士国は初代剣聖の頃から縁が深く、今でも定期的に交流会がある。前回会ったのは五歳の時だったはずだがよく覚えていたものだ。


「ところで巫女さまが一体どうしてこんなところに?」


 ミルキーナは竜皇国の竜巫女だったはず、なぜ護衛も付けないで一人で行動しているんだ?


「あはは、まだ成人していないので正式には竜巫女ではないですよ。実は至急ダサラ大森林に行かなくてはならず、護衛兼案内してくれる人を探していたのです。それよりサラ、貴女こそどうしてこんなところに一人で?」 

「ははは、奇遇だな、実は私もダサラ大森林に向かっているところなんだ。それなら同行しようか?」


 多少移動ペースは落ちるだろうが彼女一人をこのまま放ってはおけない。何か訳ありのようだし。


「本当ですか! ぜひお願いします!」


 本当に困っていたようで安堵の表情を浮かべるミルキーナ。


「実は連れがいるのです。必要なものを買い出しに行ってくれているので、私の泊まっている部屋に行きませんか? 大事なお話があるのです」


「わかった」


 連れがいるのは当然として、大事な話か……悪いことではないことを祈るが、憔悴した彼女の様子を見る限りあまり期待は出来そうにないな。



「サラ、竜皇国は壊滅しました」


 部屋に入るなり、とんでもない言葉を発するミルキーナ。


「なっ、そんな馬鹿な」


 あり得ない、竜皇国は人口こそ少ないが、大陸最強の戦力を誇るのだ、たとえ全ての国が一斉に襲い掛かったとしても負けることはないだろうと確信できる。


「残念なことですが、事実です」


 ミルキーナはぎゅっと掌を握り締める。


「魔神が滅んだ今、竜皇国を脅かすことが出来る勢力など想像も出来ないが? そもそも守護竜はどうしたのだ?」


 竜皇国には守護竜と呼ばれる古代竜が四体存在する。神が天地創造をした際、それを補佐するために産み出された存在だ。そして代々竜と交わってきた皇族は半竜半人の英傑揃い、勇者とともに魔神と戦った竜王と竜の巫女が居なくなったとはいえ、布陣は盤石のはず。


「……竜皇国に突如巨大な植物が出現しました」

「……植物?」

「はい、最初に発見したのは守護竜です。魔力の流れがおかしいことに気付き、異変の発生源に向かったところ、見たことのない植物が生えていたのです。本能的に危険だと判断した守護竜はブレスで焼き払おうとしたのですが……逆に取り込まれそうになり――――他の竜たちが現場に到着した時には瀕死の状態だったそうです。総攻撃で何とか助け出すことは出来たのですが……当方の被害は甚大、その植物は、土、石、金属、木、生き物、魔力、文字通り全てのものを吸収しながら現在も成長を続けています」


 な……なんだそれは!? 守護竜がまるで歯が立たないのならもうどうにもならないではないか……。


 背中に冷たい汗が流れる。



「理解したくはないが状況はわかった」


 戦える者は全員動ける状態ではなく危険な状態らしい。竜の血を引くものは恐るべき自己治癒力を持っているのだが、何故か謎の植物にやられた傷や破損部位は元に戻らない、厳密に言えば極度に回復が遅いらしいのだ。回復するとわかっているからこその勇猛さだが、今回はそれが仇になった形だという。


 やむなく皇国は放棄せざるを得ない状態になり、多少動ける者は国民を避難させたり怪我人を移動させるのに手一杯、未成人であったために戦闘に参加しなかったミルキーナが勇者一行に会うためにダサラ大森林へ向かうことになったというわけだ。


「勇者パーティには歴代最強と名高い竜の巫女クララがいるのだろう? ミルキーナの親族か?」 

「はい、叔母になります。私が産まれる前に異世界へ行かれてしまったので面識はないのですが、もはや頼れるのは現状勇者さましか考えられません」


 勇者か……女神より遣わされた使徒。


 超常の力を持つ最強の存在、魔神との戦いにさえ生き残ってみせた文字通り生ける伝説。もし勇者ですら敵わぬのなら……それはこの世界の破滅を意味する。


「わかった、それで連れというのは戦力に数えても良いのか?」 


 ミルキーナは成人前、ステータスやスキルが使えない以上ほぼ戦力外が確定している。


「ただいま戻りましたミルキーナ」

「あ、お帰りなさい、紹介しますね、彼女はハクア、白竜の幼体です」


 白竜ということで期待したのだが、ミルキーナと一緒で戦闘には向かないらしい。


「「ご安心を、私たちとっても丈夫ですから!!」」


 まあ……丈夫なのは良いことだ、命は大事だからな。



 というわけで、旅は道連れ、新たな仲間が増えた。


 

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