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義妹ハーレム  作者: ひだまりのねこ


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第五十四話 ある受付嬢のつぶやき


「ねえサティ、仕事終わったら新しく出来たお店行ってみない?」

「良いわね、私も行きたいと思っていたのよ。楽しみだわ」


 冒険者ギルドの受付嬢というのは女性にとっては花形であこがれの職業。可愛い制服を支給してもらえるし街のほとんどの店や施設、他のギルドでの割引やサービスも充実している。お給料も一般的な飲食店店員の十倍以上軽く稼ぐことが出来るしね。


 もちろん、その分競争率は高く、求められる条件も厳しい。


 容姿端麗であること、最低限の礼儀やマナー、計算能力など、必ずしも必須ではないものの、どうしても平民よりは貴族の子女が多くなる。


 貴族家は病気や戦争などによって血が途絶えてしまうリスクと常に隣り合わせだ。だからこそ家の存続のために子をたくさんもうけることに血道を上げる。


 しかし、上手くはいかないもので、そういう子だくさんの家ほど不幸が無く、はっきり言ってしまえば子が余るのだ。後を継ぐことが出来る長男と保険の次男、縁に恵まれて他の貴族家に嫁に行ける娘以外は自分で仕事を探さなければならない。男子ならば幼少から鍛えられた剣技を頼りに冒険者に、女性ならば教養が活かせて出会いの多い受付嬢が人気。

 

 他の受付嬢たちは、少しでも良い条件の結婚相手を探すことに仕事以上の情熱を注いでいる。受付嬢の賞味期限は短い、どんどん新人が入ってくる以上、うかうかしていると婚期を逃してしまうし、一番高く売れる時に頑張る気持ちは理解できる。


 でも――――私の場合はちょっと事情が違うかな。私は自分で言うのもなんだけど容姿には自信がある。良い縁談の話は断ることが難しいほどいただいていたし、このギルドでもほとんど前には出ていないのに一番人気の受付嬢としてナシテでもちょっとした有名人だ。


 良い条件の結婚がしたいわけじゃない。


 私がこの人だと思った人と結婚したいのだ。だから――――家を出た。一度きりの人生後悔なんてしたくなかったから。伝説の英雄たちみたいに世界中を旅してみたいけど、私には戦う力なんて無いから。せめて命懸けで戦う人たちを支えてあげられたら素敵だなと思った。


 ギルドには世界中から情報が集まってくる。私は街に居ながら想像する。遠い知らない街の景色、そこに暮らす人々の息遣い――――賑やかな市場の喧騒。


 まあ……なんだかんだで結構この仕事も気に入っているということ。このままずっと働かせてもらうのも最近は悪くない気がしてきている。


 ちなみにパオラと約束しているお店だが、受付嬢として街のことを知ることはとても大切なことなのだ。単なる興味本位や気晴らしというだけではないと自己弁護しておく。ギルドは夕方以降酒場に変わるので、私たちの業務は基本的に残業が無い。本当に良い職場だと思う。



 受付嬢の仕事をしていると、毎日様々な人々と接する機会がある。老若男女、様々な種族、いかにも訳ありな怪しげな連中――――


 でも、今日はなんかすごいのが来た。

 

 男一人に女性が五人という明らかにバランスがおかしいグループ。まあ……それだけなら珍しいとまではいかないくらいだが、全員美男美女!!! しかも超絶レベルが高い!!!



「冒険者登録したいのだけれどお願い出来るかしら? 後、登録後、魔石の買い取りも合わせて頼むわ」


 代表で話しかけてきた女性……おそらくはエルフだと思うが、私が知っているエルフとは何かが根本的に違っている気がした。まさか……噂に聞くハイエルフ!? 私も貴族家の娘だからわかる。眩しい!! 高貴なオーラをひしひしと感じる。絶対にただ者じゃない。詮索はマナー違反なのでしないけど。



「はわわ……全員魔力を扱えるのですか!? えっと……あ、いえ、何でもないです。カードが出来ましたらお呼びしますのでしばらくお待ちください」


 え……何この人たち……六人全員魔力が扱えるとか……。しかも扱える魔法属性がおかしい。不具合を疑うレベルでおかしい。


 精鋭揃いの近衛騎士団だって魔力を扱えるものは三割程度だと聞いている。


 そうか……さっきのエルフの女性が王族で、他のメンバーは護衛かしら? お忍びで行動するために冒険者の身分を利用することは珍しくないけれど……一応ギルドマスターに報告しておいた方が良いだろう。



「なんだサティ? お前も知っているだろう、今死ぬほど忙しいんだ」

「わかっておりますが、お耳に入れておきたいことがあります」


 ギルドマスターへ簡単に事の経緯を報告する。






「あら、貴方がギルドマスターになってたの? ずいぶん出世したのね」

「ははっ、サレンさまもお久しぶりでございます。行方知らずと聞いておりましたが――――」


 私の勘は当たっていたらしい。それも、あの大国シルヴァニア公国の公女サレンといえば、あの勇者パーティの一人で英雄だったはず。まぎれもなく本物のハイエルフ、そして伝説的な人物に会えるなんて信じられないくらい幸運だ。意外だったのはギルドマスターと顔見知りだったこと。なんでも勇者一行の道案内をしたことがあるんだとか。ちょっと見直してしまったのは内緒だ。

 

「それで、サレンさまが動いていらっしゃるということは……やはり勇者一行に関係があるのでしょうか?」


 勇者一行といえば、一年ほど前に再び表舞台に現れた後、北の辺境へ向かったと聞いていますが……。


「そうよ、彼らに合流するために北上しているところ。冒険者ギルドの方では勇者一行の動きは把握しているのかしら?」

「ダサラ大森林へ向かったというのは間違いないのですが、それ以降新しい情報は入っておりません」

「そう、なら良いわ。他に変わったことや気になる情報は入っているかしら?」


 うわあ……本当に綺麗な人だなあ……これだけ差を見せつけられると嫉妬する気にもならない。


 それにしてもお仲間の男性……目立たないようにしているけど、絶対どこかの王子様で間違いない。はうう……カッコイイ……何とかお話出来ないかしら? あ……目が合った!! きゃああああ!!!


「実は……一年ほど前から各地で地下迷宮が大量発生しているのです。ここナシテ近郊にも先日迷宮が――――」

「なるほど……それは興味深いわね」


 何か気になることがあるのか少し考え込むサレンさま。その姿もお美しい!!


「あの……実はその迷宮なのですが――――調査していただくわけにはいかないでしょうか?」


 ……さすがギルドマスター抜け目がない。解決のめどが立たずに頭が痛かった問題を丸投げするつもりですね。


「そうね……どうするカツキくん?」

「俺は構いませんよサレンさん、ギルドマスターも困っているみたいですし」


 カツキ……さま、わあ……なんて優しそうで温かい声……!!


「あ、それなら私が迷宮までご案内いたします!!」


 このチャンス、逃してなるものですか!!


「サティ、残業になってしまうが良いのか?」

「大丈夫です、お任せくださいギルドマスター!!」


 ごめんねパオラ、今度奢るから。


サティ「街のご案内もお任せください!!」

克生「ありがとう、助かるけど仕事は大丈夫?」

サティ「これも仕事なんですよカツキさま!!」


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