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義妹ハーレム  作者: ひだまりのねこ


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第四十五話 生徒会副会長の憂鬱 後編


「桐ケ谷くん、ちょっと良いかな?」


 突然、背後から会長のお兄さまに声を掛けられて悲鳴を上げなかった自分を褒めてあげたい。  


「お兄さまでしたか。はい、構いませんが」

「あはは、そのお兄さまっていうの止めてくれないか? 克生で良いよ」


 たしかに私がお兄さま呼びするのは変でしたね。思った以上に動揺していたようです。


「失礼しました。それで克生さま、何かお話でも?」

「ああ、魔璃華のことなんだけど――――」


 まあ……そうでしょうね、それ以外に考えられません。


 一体何を言われるのでしょうか? 他校を攻め落とせとかならまだマシな部類……全国制覇までならギリギリ想定内ですが――――世界征服とか言われてしまうとさすがに手に余ります。


 くっ、まだ何も言われていないというのに胃が痛くなってきました……。


「色々苦労かけているとは思うけど、これからも力になってやって欲しいんだ。俺に出来ることならなんでも協力する。もし何か困ったことがあったら言ってくれ」


 …………え?


「どうしたんだ!? 俺、何か変なこと言ったか?」

「あ……いえ、そうではないのです」


 えっと……もしかして……お兄さまって妹想いの優しいお兄ちゃんで常識のあるめっちゃ良い人?


「は、はい、この不肖桐ケ谷、この命に代えても会長を支えることを誓いましょう!! まあ……守る必要は無さそうですが」

「あははは、たしかに。でも安心したよ桐ケ谷くんがいるなら安心――――」



「てめえだな!! 会長に馴れ馴れしく近づいた野郎ってのは?」


 こいつら……朝の話し合いに参加していなかった連中ですね。マズいな……よりにもよって精鋭揃い……しかも二十人強、武器まで装備しているとなると……本気で克生さまを拉致するつもりだ。


 退路は――――駄目だ、別動隊が塞いでいる。逃げ場は……無い。



「桐ケ谷くん、こいつらやってしまっても問題は無いのかな?」

「ま、まあ……正当防衛ですので、で、ですがさすがに死人が出るのは学園としてちょっと――――」

「あははは、そんな物騒なことしないって。ちょっと意識を奪うだけ――――あ、でも武器を持っているのは駄目だよな、ちょっと反省してもらう意味でも多少痛い目にあってもらおうかな」



 ……ええ、間違いなく会長のお兄さまでした。


 ははは……瞬きしている間に全員倒されていたんですけど……?


 えっと……武装した腕自慢たちが別動隊含めて三十人はいたんですが……


 ヤバいヤバいヤバい!!! この人マジで会長より怖いんですけどっ!?


「桐ケ谷くん」 

「ひゃ、ひゃい!!」


「こいつらとちょっとお話したいんだけど良い場所あるかな?」


 とても良い笑顔の克生さまに私も精一杯の作り笑いで答えます。


「生徒会室は現在会長たちが使用中ですので……多目的ホールを使いましょう。あそこなら生徒会の権限で自由に使えますので」

「迷惑かけてすまない」

「いえ、こちらこそ事前にこうなる可能性があることを想定しながら徹底できなかったこと、痛恨の極みです」

「どうせ今朝魔璃華に言われたんだろ? そんなの誰にだって防げるわけないし、そもそもこれは魔璃華自身の個人的なトラブルだし俺の行動が招いた結果だ。桐ケ谷くんが気に病むことも責任を感じる必要もないさ」


 はああああああ!!! なんてお優しいお言葉……不肖、桐ケ谷健人、一生克生さまに付いて行きます!! あの会長がデレる理由がわかった気がします。男の私ですら惚れてしまいそうです。


「これだけの大人数です、運ぶ人手が必要でしょうから、すぐに生徒会メンバーを集めます」


 まったく……手間を掛けさせてくれますね。まあ……逃げられるよりはマシですか。


「いや、その必要はない。悪いけど少し目をつぶっていてくれるかな?」

「……目をですか? わかりました」


 克生さまが無駄なことをさせるわけがない。何か意味があるのでしょう。



「目を開けていいぞ」


 ……へ? え……? いつの間に多目的ホールに? しかも全員?


「あの……これは一体?」

「あはは、ちょっとした手品さ。悪いけどタネは教えられないけどね」


 ……聞くなということですね、承知しました!! 私は何も知らないし、見てもいない。


 でも――――一つだけわかったことがあります。


 この方絶対に人間じゃないですよね? 神さまがお忍びで人間の振りをしていると言われても信じますよ!! うん、間違いないですね、信じる者は救われる。疑ってはいけないのです。



「う、うう……こ、ここは一体……?」


 どうやら連中意識を取り戻したようですね。


「ようやくお目覚めか?」

「て、てめえ!! 俺たちに何をしやがった!!! 卑怯だぞ!!!」


 やれやれ、大勢で武装して取り囲んでおいて卑怯とか――――どの口が言っているのやら…… 


「別に何もしてないけど? まだね。さっきは他の生徒の迷惑になりそうだったから場所を変えさせてもらっただけだ。俺のことが気に入らないのなら好きなだけ相手してやるからかかってこい」


「どうせ汚い手を使ったんだろうが、その綺麗な顔をぐちゃぐちゃにしてやるよ、己の甘さを後悔するんだな!!!」


 はあ……克生さま、武器を取り上げなかったから連中ヤル気ですよ? 負けるとは思いませんが、多目的ホールを壊されると困るんですけどね……。


「ああ、一つだけ言っておく。魔璃華は俺のものだ、今後指一本触れさせないから覚悟しておくんだな」


 か、カッコいい……!! ですけど煽り過ぎじゃないですか!?


「「「「やっちまえ!!」」」」


 三十人の荒くれ者どもが武器を手に一斉に克生さまに襲い掛かります。


 まあ……そうなりますよね。普通に考えれば負ける要素なんて無いんですから――――普通なら、ね。




 ……ははは、まさか避けもせずに全部受け止めるとは思いませんでしたよ……まあ、かすり傷どころか表情も身体も一ミリも動かさずに平然としてましたけど……。

 

 連中も何が起きているのか一瞬わからずに呆けていましたが、理解した瞬間半数は悲鳴を上げて逃げ出しました。残りの半数は半狂乱で攻撃してますけどまったく効いてないですね……あ、金属バットが折れた……。

 先に逃げ出した連中は――――ああ、ボコられていますね。


 今にして思えば、会長はあれでも相当優しかったんだなと思わざるを得ません。


 ああ、そんな縋るような視線を送られても無理ですよ? 私に出来ることは万一にも巻き込まれないように机の影に隠れていることだけですからね。



「ごめんね桐ケ谷くん、部屋を汚してしまった。清掃費用と修繕が必要なら全額支払うから言ってくれ」


 三十人を相手に立ち回ったというのに汗一つ、呼吸一つ乱れていない。私も一応、柔道と剣道の段持ちですが――――理解の範疇外です。考えても無駄――――なのでしょうね。


「ご心配なく、その点はこいつらに支払わせますので」

「あはは、さすが桐ケ谷くん、頼りになる」

「お褒めに与り光栄です」


「じゃあついでにもう一つ、他にも不満持っている連中っているんだよね?」

「そうですね、会長からの通達が十分に行き届いているとは言えませんから、かなりの数が」


「そうか……わかった。悪いんだけど、魔璃華と俺の仲を宣伝して欲しいんだ。それでもまだ挑戦してくるヤツがいるなら――――いつでも俺が相手になるってな」

桐ケ谷副会長「会長、実は克生さまがこんなことを……」

魔璃華「はうっ!! にゃ、にゃにゃにゃ、にゃんだとっ!? お、おい副会長、その台詞録音はしていないのか!!!」

桐ケ谷副会長「(……会長かわいいです)動画でしたらありますが……克生さまを怒らせたくはありませんし、さすがにタダというわけには……」

魔璃華「くっ、当然だな、わかった、私に出来ることなら!!」

桐ケ谷副会長「休暇を下さい(必死)」

魔璃華「休暇? まだ初日だぞ?」

桐ケ谷副会長「今日一日で十年分働いた気分なのです……」

魔璃華(ふむ、副会長が居ないと生徒会は回らないが……聖と焔に手伝わせれば良いか。いや、待て、兄上に手伝ってもらう口実でイチャイチャ出来るチャンス)

魔璃華「わかった、任期が終わるまで休暇取って良いぞ」

桐ケ谷副会長「そ、そんなっ……!?」

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