第三十九話 星彩学園高等部 ~隆道という男~
星彩学園編スタートです。
異世界編と交互に展開する感じで楽しんでもらえれば。
星彩学園高等部――――
それは限られたエリートのみが通うことを許された神々の園ヴァルハラ。
まあ……それは言い過ぎかもしれないが、政財界、芸能人や著名人の子女、代表クラスのアスリートが数多く在籍している。将来この国の未来を支える人材が集まっていると言っても過言ではないだろう。
俺は腐りきったこの国を変えるためにこの学園に入った。
嘘です。女の子にモテたいから死ぬほど頑張りました。学園のブランド力があれば合コンし放題、そもそも学内には美少女があふれているし、ただの庶民の俺にとって逆玉のチャンスしかない!!
そう――――思っていたんだが、現実は厳しい。俺程度のスペックでは見向きもされない。
そこで俺は作戦を変更した。ずばり友だち百人計画だ。
小学生みたいだなって思うなよ?
星彩学園には高校受験が存在せず、基本的に全員中等部からのエスカレーター。当然仲良しグループや派閥のようなものが自然と――――いや、この場合は思惑が絡み合って、だな。つまり人間関係が自然固定化しやすい環境なのだ。
だが、生徒たちは優秀、対人スキルが高いものが多いし、人間関係の重要性を嫌というほど知っている連中ばかり。学園側も流動性を高めるために交流を深めたり協力し合うような課題が多く用意されていて星彩学園生としての誇りと自覚を育てることが推奨されている。
そう――――すでに将来を見据えた戦いは始まっているのだ。
イケメンだから? 美少女だから? そんな表面的な理由だけで人気になれるほど甘くはない。いかに自分の利益になるか? 相手の役に立てるか、それがこの学園における絶対的な真理。
だから、家柄も後ろ盾も何も無い俺のような庶民は、自分で付加価値を付けるしかない。
そこで俺はひたすら交友範囲を広げ、情報網を構築することに全力を注いだ。情報を持っている、顔が広いことは武器になる。これといって特徴が無い俺は、あまり警戒されることなく懐に入ることが出来る。プライドなんてこの学園に入学した時には捨ててしまったし、幸い俺は良い意味で憎まれないというか、エリートだらけのこの学園においては丁度良い塩梅の癒し――――まではいかないが、それなりに安心できる存在なのだろう。
庶民であることがこの俺最大の武器。
使える武器はすべて使う。それが俺の主義だ。
ところで――――そんな俺が今一番注目していることがある。
なんと今年、高等部に中途入学する生徒が三人もいるのだ。
ああ、もちろん中途入学そのものは過去にもあったから史上初というわけではないが、極めて稀であることは間違いない。
だが、珍しいから注目しているわけではないのだ。
学園生であってもほとんどの者は知らないだろうが、中途入学というのは非公式の推薦枠によって決まっている。俺も詳しいことは知らないが、たしかな筋の人間から入手した情報なので間違いないだろう。
つまりそれが意味するところは――――中途入学する生徒というのは普通ではないということ。中高一貫という学園のポリシーを曲げてでも入学させる価値を持っているということに他ならない。
これはなんとしてもお近づきにならねばなるまい。
まずは情報収集、全ての力を駆使して先手必勝あるのみだ!!
えっと……一人目は……クイーンズランドの王女殿下? ははは……留学ですか、そうですか。
無理!! 御近づきどころか話しかけるのも無理!!
護衛も伴っているみたいだし、下手なことをすれば不敬罪で物理的に……!?
次だ、次!!
二人目は……黒崎クロエ……?
良かった……日本人だ。って、ええええええええっ!!!?
く、黒崎クロエって……今一番勢いのある超人気モデルだよね? え……マジで? 俺……めっちゃファンなんだけど? いや、たしかにこの学園にも現役のモデル結構いるけど……正直格が違う。
やったああああ!!!! 星彩学園生であることをこれほど誇りに思ったことがあるだろうか? いや、無い。
…………。
お近づき……出来る気がしない……っていうかたしか学園にファンクラブがあったよな? 下手に近づいたらあいつらに殺される可能性も……!? プライベートは完璧にガード固いらしいし……護衛が付いていてもおかしくない。常に人の輪が出来るだろうしな……。
う、うん……とりあえずは遠くから見守ることにしよう。ワンチャン知り合いになれたら幸せで死ねる。同じクラスになれように礼拝堂で祈っておくか。あ……駄目だ、たぶん芸能科クラスだから可能性ゼロだった。今からでも芸能人になれないものか? ……無理だな。
くっ……さすが特別推薦枠……想像以上にヤバかった……俺クラスがお近づきになれる相手ではなかったか……。
いや、諦めるな、まだもう一人いる。
えっと……三人目は……香月克生?
……誰? プロフィールからは特に特別なものは感じないが。
へえ……学生なのに小説家でイラストレーター? 聞いたこと無いけど。
たしかにすごいっちゃすごいけど、他の二人に比べると普通というか……。
うむ、なんか行ける気がする。同性同士だしな。
「やあ!! 初めまして。俺は高槻隆道、わからないことがあったら何でも聞いて欲しい」
ふふ、中途入学してきた生徒は不安で一杯のはず。そんな時に颯爽と現れた気安い男、当然仲良くしたくなるのが人情というものだ。それにしても、まさか同じクラスになるとは俺も持ってるぜ。
「初めまして、俺は香月克生、えっと……隆道で良いかな?」
「ああ、隆道で構わない。えっと……俺は何と呼べば?」
「あはは、名前と苗字が同じ音だからね、好きに呼んでくれ」
「ははは、たしかに。じゃあ克生で。よろしくな」
おお……なんかめっちゃ良い奴じゃないか。イケメンなのに気さくで飾ることもない。
これ――――絶対モテる奴……。なんか克生の周りだけ爽やかな風が吹いているように感じるのは気のせいか? ちょっと後光差しているように見えるのは俺の劣等感の産物なのか!?
イケメン――――なのは許せんが、ま、まあ……我慢だ。とにかく仲良くなるんだ、目的を見失ってはいけない。
それにしても綺麗な顔してるな……王子さま系ってやつか。女装させたら結構いけるかも……? それに……どこかで見たことある気がするんだけど気のせいか?
「ん? どうした隆道、俺の顔に何か付いてるのか?」
「あ、いや、何でもない。それより学園内を案内してやるよ」
ヤベえ……女子どもの無言の圧が凄い……こいつら全員克生のこと狙ってやがるのか?
とにかく場所を変えねば……。
お友だちになる計画始動だぜ!!




