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義妹ハーレム  作者: ひだまりのねこ


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第三十八話 帰還と秘密兵器

 

「それじゃあみんな、まずは初歩の初歩、ウォーターボールからよ」


 紗恋が以前見せた魔法だ。水質が悪いこの世界ではこれが使えるだけで仕事に困らない。正確にコントロール出来るようになれば、戦う際には相手を窒息させることも出来る。


「え~、もっと大規模殲滅級魔法使いたいですわ!!」


 焔は不満そうだが――――


「何事も基本が大事なのよ、発動するなら今の貴女にも出来るでしょうが、制御できなければ敵味方関係なく破壊することになるわ。街を灰にしたいなら別だけど?」


「……ごめんなさいですわ、基本からお願いします」


 焔も反省して――――紗恋の魔法教室が始まるのであった。




 一行は現在、獣人国家マグネシアの国境を抜けて三か国目――――大陸南部最大の商業都市国家プロヴァンシア上空を飛行している。


「プロヴァンシアを抜ければいよいよ大陸中央部に入るわ。まだまだ先は長いけど、このペースなら一月とかからず到着出来そうね。明日から学校が始まるし、今日は無理せずナシテの街で降りて、一旦日本へ戻りましょう」


 これは予定通りの行動だ。


 元々今回は異世界の状況を見ることが主目的であった。そのための一泊二日の行程、週明けからはいよいよ高等部が始まる。


 当然、両親たちを助けに行きたいという焦りはあるのだが、女神からも焦るなと言われているし、紗恋も大丈夫だと言っている。


 世界喰いはたしかに脅威そのものではあるが、現状は被害を最小限に抑えるための受け身の戦い、肉体的、精神的な疲労や消耗は激しいだろうが、命の危険があれば撤退することも出来るはずだと。


 克生たちも完全に納得したわけではないが、焦っても仕方がないことは理解している。



「さあ、それじゃあ戻りましょうか」


 ナシテ近郊の森――――クロエはすでに竜化を解いて服を着終えている。


「ちょっと待ってください、紗恋さん。戻る前に試しておきたいことがあるんです」

「試しておきたいこと? 何かしら克生くん」


「これがこの世界でも上手く機能するかの実験です」 

「これは動画撮影用の小型カメラ……?」 


「はい、ただし俺の創造スキルでちょっといじってありますけど」


 克生の固有スキル『創造』は、文字通り無から創り上げることが出来る神級スキルなのだが、ゼロから生み出すよりはすでにあるモノを改良する方がはるかに簡単だ。


「これをハーピーたちに装着してもらいたいんだけど頼めるかな魔璃華?」

「もちろんです兄上」


 魔璃華がハーピーたちと話をして、群れのリーダーに小型カメラを装着する。


「これでどうするんですか克生お兄さま?」

「次にこの世界に来るの次の週末だろ? だからその間、ハーピーたちに頑張ってもらおうかと思ってさ」

「どういうことですか……?」


 イマイチ克生の意図が理解できないクロエ。


「おそらく、ハーピーたちの撮影した映像をゲートに連動させるおつもりかと、違いますか克生さま?」

「うん、さすがだな聖。実はさ、日本に居る時、動画を観てその場所へゲートで行けるか試したんだよ。そしたら――――見事成功した」


「そ、それはすごいですわ!!」

「……もう何でもアリね」


 賞賛する焔と呆れる紗恋。 


「だからさ、俺たちが居ない間にハーピーたちには北へ向かってもらって、次に来たときには一気に距離が稼げるんじゃないかなって」


「なるほど、さすがですね克生お兄さま!!」


 というわけで、一応実証実験。


 魔璃華の指示でハーピーたちに少し離れた場所へ飛んでもらい、送られてきた映像を元にゲートを使って移動する。


 結果は――――無事成功。


 克生がスキルでバッテリーの持続時間とデータの送受信距離、そしてカメラそのものの強度を強化しているので仮に落としたり魔物に襲われたとしても、ちょっとやそっとでは壊れることはない。


 あまり考えたくないが、万一ハーピーたちに何かあった場合でも、データの送信は常に自動で行われているので、克生はいつでもカメラがある場所へゲートを繋ぐことが可能だ。受信機はここに埋めて隠しておく。当然隠蔽の結界を張ることも忘れない。


「まあ……さすがに異世界から日本へデータを送ることは出来ないから、次回は一旦ナシテに来てからハーピーたちの居るところへゲートで移動するつもりだよ」


 これで少しはクロエの負担が減らせるかな。克生は頑張り屋の妹がかなり無理をしていることを知っている。やめろと言ったところで聞かないことも。


「その分ハーピーたちには負担とリスクをかけることになってしまう。魔璃華、これをハーピーたちに。隠蔽、気配遮断、魔法耐性強化、物理耐性強化を付与した首輪だ。気休めかもしれないけど、少しでも生存確率を上げたい。それに従魔の首輪のデザインをそのまま使っているから冒険者たちに間違って攻撃されるリスクも軽減できると思う」

「あ、ありがとう兄上……そこまでハーピーたちのことを――――」


 置いてゆくことになるハーピーたちを心配していた魔璃華が感極まって克生に抱きつく。



「えっと……ハーピーたちはなんだって?」

「命に代えてもカメラを守り抜きます、お任せください魔王様と言ってる」


 魔璃華は誇らしそうに胸を張る。


「あはは……無理はしないでね? あと……俺は魔王じゃないんだけど」


「何を言っているんですか!! 克生お兄さま以外に魔王などおりません!!」

「そうですわ!! 一番強い者が魔王!! となればお兄さまが当然魔王なのですわ!!」

「魔王の娘である私の伴侶である兄上が魔王なのは当然の既成事実!!」


 克生は困惑するが、妹たちはそうだそうだと譲らない。


「助けてくれ聖」

「私も他に適任者は居ないと思いますよ、魔王お兄ちゃん?」


「あはは!! ずいぶん可愛らしい魔王ね、私も眷属に加えて~!!」



 ここに史上最年少の魔王が誕生した。


 これは後に世界を支配することになる魔王克生の英雄譚――――

 

「勝手なナレーション付けない!!」

「あはは、ごめんなさいですわ~!!」


 逃げる焔を追いかける克生であった。

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