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義妹ハーレム  作者: ひだまりのねこ


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第二十九話 世界の危機


『うんうん、それじゃあ早速だけど、ここへあなた方を呼んだ理由を説明しますね』


 女神は克生たちがリラックスしていることを確認すると、自らケーキを頬張りながら話を始めた。


 克生は食べながら話すなんてお行儀が……と一瞬思いかけたが、神さまなのだし自分たちをリラックスさせるための演出なのだろうと納得して神妙に耳を傾ける。


『まず……ことの発端は十六年前。勇者冬人がゲートを使って元の世界へ帰還したことです。その際、ほんの一瞬ですが異なる二つの世界を繋ぐために空間に穴が出来るのです。その穴から世界喰い(ワールドイーター)の種が侵入しました。あ、勇者冬人に落ち度とか責任はありませんよ、こんなことが起こるのはそれこそ天文学的な確率ですし、そもそもゲートは私が与えた正当な対価です。まあ……本人はそれでも責任を感じているようですが……それはさておき、問題は世界喰いの方です。発芽した世界喰いは世界そのものを養分として成長し――――やがて文字通り世界を喰い尽くすまで成長を続けるのです』


 世界が喰い尽くされる、あまりのことに実感が湧かないが、女神がわざわざこうして話をしている時点で冗談なはずもなく、それだけ深刻なことなのだと理解できてしまう。


「あ、あの……その世界喰いって女神さまの力で何とか出来ないのですか?」

『我々が世界に直接干渉することは出来ないの。侵入する前だったらどうにでも出来るんだけど……まあ――――世界ごと破壊してリセットすることは出来るけれど、せっかくここまで育てた世界をそうしてしまうのは、やはり――――とても辛いのですよ……ですが……私が手を下さないとしても、結局は喰い尽くされるまで延命するだけであって根本的な解決にはならない――――私が破壊するか、世界喰いに喰い尽くされるかの違いでしかない』


 少し落ち込んだ声色で話す女神。


「そ、そんな……緊急事態でもですか?」

『そうよクロエちゃん、女神だからこそ誰よりもルールに縛られるの。神とはいっても好き勝手出来るわけではないのです』


 それはたしかにそうなのかもしれない。だけど……もし本当に手が無いのならこんな話をわざわざする意味がわからない。それにさっき父さんのことを――――あ……!!


「女神さま、もしかして――――父さんたちが戻って来れないのは、世界喰いと戦っているから――――ですか?」

『さすが克生くん。その通りよ。彼らは世界喰いの種子がこれ以上拡がらないように頑張っているわ』


 父さんたちが生きている!! 他でもない女神の言葉だ。これ以上ない吉報を聞いて抱き合って喜ぶ一同。


「それでも――――やはり世界喰いは倒せないのですね……女神さま?」


 紗恋は冬人たちの生存を喜びながらも深刻な表情は崩さない。


 女神の言葉通りであれば――――冬人たちのやっていることはいわば延命措置であって治療ではないからだ。


『世界喰いは強力です。世界のバランスを保つために成長上限が定められている人間では歯が立ちません。それは――――異世界から召喚された勇者であっても同じ。勇者の役割はすでに世界を構成する要素、後から私がそれを変えたり覆すことは出来ないのです』


 世界とは定められたルール、理によって成立しているものなのだと女神は言う。一度生み出された世界にたいして出来ることは、ルールの範疇であれば多少の干渉は構わないが、基本的には見守る事しか出来ないということらしい。


「なるほど……それじゃあ俺たちをここへ呼んだのは――――何か出来ることがあるから、ですか?」


 克生の頭の中でこれまでの話と女神の加護のスキルが結びつく。勇者でもない自分がゲートを持っている意味もそれならばしっくりくる。女神が――――自分たちに何かさせたいのだと。



『その通りです。何事にも例外というものはありまして……異世界で生を受けながら――――生まれたのは別の世界であるあなた方は――――厳密にはどちらの世界にも属さない想定外の存在なのです。つまり――――世界のルールの対象外、というわけですね』


 イレギュラーな存在である克生たちならば世界喰いに対抗出来る可能性がある。女神はそう考えてあらかじめ準備をしていた。


 それは――――成長の上限が無いということを利用した対世界喰い戦力の育成。強力な世界喰いとはいえ、神とは違いあくまでこの世界の理の範疇に収まる物質的な存在であることに変わりはない。十分な力があれば駆除することも理論上不可能ではないのだ。


『もちろんだからといってあなた方に強制することは出来ません。あくまでお願いということになりますが』


 女神はそう言うが、克生たちに断るという選択肢は当然ない。


「わかりました、俺たちにしか出来ないことであれば逃げるわけにはいきません。全力で世界喰いを駆除してみせます!!」


 克生が勇ましく応えれば――――妹たちも当然だと応じる。



「どうやら私は役に立てそうも無いわね……」


 盛り上がる克生たちを横目に俯く紗恋。イレギュラーな存在ではない紗恋では限界があるからだ。少なくとも対世界喰い戦力にはなれないだろう。


『紗恋ちゃん、貴女に出来ること、期待していることはたくさんあります。彼らは異世界のことを何も知りません。どうか導いてあげてくださいね。それに――――同じように、とはいかないでしょうけれど、それでも貴女には強くなる方法がある。わかりますね?』


 落ち込む紗恋に女神は優しく声をかける。


 強くなる方法――――克生の英雄スキルによるステータス上昇のおすそ分け。たしかに女神の言う通り克生の成長の上限が無いのであれば、理論上は紗恋も上限無く強くなれる可能性はある。


『克生くんの所有スキルはすべて特別仕様なのですよ。だから特別なんです、ギリギリ合法の範囲で』


 内緒ですよ、とこっそりウインクする女神であった。

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― 新着の感想 ―
[一言] デカいお話になってきましたねぇ。 というかローどころかハイなファンタジーに移行し始めている!?
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