表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
義妹ハーレム  作者: ひだまりのねこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/113

第二十一話 魔璃華


 私は魔王の娘らしい。


 十歳の誕生日の日に両親からそう告げられた。


 待って、私は中二じゃないんだよ? 百歩譲ったとしてももう少し無理のない設定があるんじゃない?


 信じられなかったわけじゃない。


 信じたくなかっただけだ。


 思えば私は周囲のみんなと違っていた。


 私は夜目が利くけど友だちはそうじゃなかった。


 体力測定や球技大会はぶっちぎりだった――――まるで本気を出していなかったのに。


 母上からは絶対に本気を出したら駄目だと育てられた。


 それじゃあ……私はどこに本気をぶつければ良いの?


 一人で野良猫に愚痴る。私は人間以外の生き物と話が出来る。



 うん、普通じゃない。


 受け入れるしかない。


 それじゃあお父さんが魔王なの?


 違う? 母上が魔王? なるほど、たしかに魔王――――何でもないです、ごめんなさい。


 え? お父さん勇者なの? 魔王と結婚したの? 設定的に大丈夫?


 父親は別の人? でも俺の中で生きてるから本当の父親で間違いない? えっと……それは思い出的な? 違うの? 本当に生きてる? ごめん意味が分からない。


 どうやら魔神との戦いの中で瀕死になった父上を救うため、父上が父上を融合して取り込んだらしい。ややこしいな。


 でも納得したかも。時々父上が二重人格じゃないかって思う時があったから。


 そっか……私には父上が二人いるんだ。なんだかちょっと得した気分。



 中学に入る頃から破壊衝動が抑えられなくなってきた。


 魔族は思春期になると経験することらしい。ただ――――魔力量が多ければ多いほどそれは強く表れるとのこと。生まれつき飛び抜けた魔力を持つ私のそれは――――言葉に出来ないほど苛烈で私を蝕んでゆく。


 この衝動を解消する方法は二つだけ。


 一つは恋をすること。


 魔族は自分よりも優れた魔力を持つ異性に惹かれる。


 恋の魔法は残忍な破壊衝動すら溶かしてしまう――――ロマンチックだと思うけど、私より魔力量が多い人などいない。というかこの世界に魔力は存在しない。


 母上もそれで苦しんだらしい。魔力が一番なのが魔王なのだから当然だ。


 現実的に魔王が恋する可能性があるのは皮肉なことに勇者だけ。女性が魔王の時は勇者は男性、魔王が男の場合は勇者は女性――――と決まっているのは、神さまが魔王を救済するためじゃないかと疑っている。


 でも勇者がいつ現れて、いつ魔王の元へやってくるのかなんてわからない。歴代魔王の中には五百年以上待ったケースもあるのだとか。


 だから――――子どもが欲しかった母上は――――恋を知らずに子を成した。


 そのすぐ後に勇者と出会う悲劇のおまけつきで。


 

 もう一つの方法は、文字通り自らが破壊されること。


 つまりボコボコにされることで破壊衝動が解消されるということ。


 これは――――めちゃくちゃ気持ちが良いらしい。


 なるほど、だから母上は毎晩父上に激しく攻められて――――え? それは違う? 違わないけど違う? ごめんなさい、わかりません。


 

 私の破壊衝動を解消してくれたのは母上。父上は――――私よりも魔力量が多い男性ではあるけれど、実の父が融合しているのなら父上なのだ。大好きだけど恋愛対象にはならない。


 私は出してはいけない本気を勉強に向けた。


 その甲斐あって、名門星彩学園中等部へ通うことになった。


 入学した後は勉強だけでなく選挙戦へと身を投じ、生徒会長として学園に君臨することになった。


 智謀を巡らせ他人を手足のように動かすのは楽しい。


 エリートが集まる星彩学園なら私の期待に応えてくれる人がいるかもしれないという淡い思惑もあった。


 でも――――現実はそう甘くは無かった。


 私は、自分で言うのもなんだけど美少女だと思う。魔力の高さはそのまま外見の美しさに関係があるそうだから当然なのかもしれない。言い寄ってくる男子は掃いて捨てるほどいた。


 いちいち相手をするのも断るのも面倒だったので、付き合いたいなら拳で来いと宣言した。私に勝ったら付き合ってあげると。


 これで少しは落ち着くかと思ったら、むしろ増えた。近隣の腕自慢たちがこぞって挑戦してくるようになったのだ。反省。


 もちろん全員返討ちだ。欠伸をしながらでも問題なく蹴散らせるから退屈しのぎくらいにはなる。



「え!? 私に兄上がいるのですか!!」


 父上でない方の父上の息子だから、私とは血が繋がっていないそうだが、それでも勇者と聖女の息子、期待できる。私の胸は狂いそうになるほど騒めいた。


 すぐにでも会わせて欲しいと頼んだのだが、生まれつきある程度の力を持っている魔族と違って人間は十六歳の成人を迎えなければ本来の力は覚醒しないのだとか。だから会わせるのは彼が十六歳になってから。


 残念だ。その日がくるのが待ち遠しい。



「魔璃華、俺たちは世界を救ってくる。克生、それから妹たちを頼んだぞ」


 危険だからと早くに事情を説明してもらった私と違って、他の兄妹たちは異世界のことや力のことを知らされていないらしい。え……もしかして私が全部伝えるの? 


 あ、紗恋さんがいる? 良かった……私そういうの苦手だから。


 すぐに戻ると言ったのに、両親は戻ってこなかった。


 プランB――――つまり予想の悪い方になったのだろう。


 あの化け物みたいに強い両親が死ぬはずない――――とは思ってるけど、こちらから連絡手段も無いし待つしかないのが辛い。


 今の私を支えているのは――――兄上が十六歳の誕生日を迎える四月二日。


 ようやく会える。


 そろそろ限界だ……私の破壊衝動を解消してくれる両親は居ない。


 だからお願い――――


 そんな私をねじ伏せて欲しいの。


 そして――――惚れさせてみせてよ――――ね? 兄上。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ