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第6話 彼女の本音

「なるほどねぇ……遥香のそこが許せないわけだ」

「……うん。 だから、ついキツい言い方になっちゃって」


 そう言って、しょぼんと肩を落とす松永さんを眺めながら、私はしっかり情報を整理していく。


 とりあえず、松永さんが遥香の事を嫌ってる、って言う噂は、どうやら誤解のようだ。


 むしろ――


「松永さん的には、そこを直して、胸を張って部長になって欲しい、と」

「各務さんってさ、私なんかよりずっと努力家で、他の皆の上手いところを徹底的に真似して、どんどん苦手を克服していくの。 私はシュートが苦手だからってドリブルばっか磨いたから、各務さんのそうやって逃げずに取り組む所は凄く格好いいと思うし、尊敬もしてる。 だから、私のドリブルが凄い、参考にする、って言われた時、めちゃくちゃ嬉しくて――って……その、ごめん……」


 ――先輩達に対してと同じくらい――


「――遥香の事好きすぎんか?」

「――っ!? す、す、好きとかじゃないし! いや、まぁ、嫌いでも、ないけど……」


 先輩達の凄さを語ってくれた時みたいに、めちゃくちゃ早口で友人の良さをこれでもかと語られて、何て言うか、あたしゃ嬉し恥ずかしですよ、うん。


 ついでに、「やっちゃった~!」って感じで、耳まで赤くして両手で顔を隠してる松永さんにちょっと萌えた。


 しまったな……


 もっと早く、仲良くなるべきだったかもしれない。


 まぁ、それはさておき。


「そうやって努力して、自分や先輩達に認めて貰ってるのに、自己評価が低くて、自分なんかが部長は無理だー、もっと他にふさわしい人がー、みたいに言ってるのが許せなくて、『ハキハキ喋れよグズ!』とか『日和(ひよ)ってんじゃねぇぞボケェ!』とか言っちゃうと」

「いや、そこまでは言ってないよ!? ……でも、まぁ、そんな感じ」


 ちなみに、これに関しては松永さん自身も、言っちゃった後に毎回自分で落ち込むらしい。


 それで注意力散漫になった結果起こったのが、昨日の接触事故だったのだそうだ。


「それに、鳴海部長が次の部長は各務さんにして欲しいって話をした後くらいから、私が各務さんの事嫌ってるって噂まで出始めて、ますます声かけにくくなっちゃって……部内の雰囲気もあんまり――」

「ちょい待って! 今なんて?」


 今の言い方だと例の噂、松永さんが全くノータッチの所から突然出て来たように聞こえたんだけど?


「――え? いや、だから、部長が次の部長を各務さんにって言った……次の日くらいからかな? 『各務さんの事嫌いだったんだって?』とか『部長は各務さんより松永さんの方がいい』とかって急に言われるようになって……」

「それって、特定の誰かから?」


 もし、単に松永さんの部活内での態度を見てての発言ならまだ良いんだけど――


「ううん……結構色んな人から言われた。 女バスの子だけじゃなくて、クラスメイトとかからも」

「……なるほど」


 ――うん、ですよねぇ。


 松永さん自身が遥香を嫌ってはいないと言う事は、日常生活においては、これと言って遥香が松永さんをイラつかせることは少ないのだろう。


 もし日常的にイライラさせられてるなら、もうちょっと嫌っててもおかしくないのだ。


 さらに言うなら、“次期部長”の話が出たからこそ、遥香の直して欲しい所が気になり始めただけで、それまでは普通に接していた可能性が高い。


 それなのに、そう言う話がいろんな所から出るって事は――


「ねぇ、女バスの2年って今何人? あと、それぞれの得意なプレーは?」

「えっと……私を入れて6人だね。 得意なのは――」


 ――意図的に、噂を流した奴がいる可能性があるって事だ。


 私は、松永さんが話してくれる部員達の特徴を手帳にメモしながら、自分の考えも纏めていく。


 とりあえず怪しいのは、2年生部員の6人だ。


 1年生は、2年生の足を引っ張ったところで、自分達が部長になれるわけではないから、メリットがない。


 そして、メリットがないのは3年生も同じで、こちらは大会が終われば引退なのだ。


 どちらも、今回のような噂を流してまで、部内の空気を悪くする理由がない。


 もちろん、単なる嫌がらせの可能性もないとは言わないけど、そこまでされる程、遥香も松永さんも人当たり自体は悪くないし、ただの嫌がらせにしては綿密に仕組まれてると言うか、しっかりした目的みたいなものがあるように感じるのだ。


「――だいたい、こんな感じかな。 詳しく知りたかったら、鳴海部長の方がもっとよく見てると思うけど……」

「いやぁ、充分だよ。 松永さんも皆のプレーやクセをしっかり見てるじゃん」


 そして、2年生が怪しいと言っても、松永さんや遥香の自作自演の可能性は低いと思う。


 この2人には、どちらかと言えば迷惑――要するにデメリットが発生しているのだから、そのまま続けている意味が分からないのだ。


 そうなると残りの4人に、噂の大元がいるかもしれない訳なんだけど……



 そのヒントは、松永さんに聞いた2年生部員の特徴にあった。



 女子バスケ部の2年生には、松永さんと遥香の他に、インターセプトやドリブルが上手い子や高身長でゴール下でのプレーが得意な子等、聞いた限り、2年生だけで組んでも行けるんじゃないかってくらいにバランスが取れている。



 でも……



 そのお陰で気づけた事もあった。



 もし本当に、この中に嘘の噂を流した犯人がいるとしたら……それは、たぶん――

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