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4週間のドラマ

作者: 中谷工場

その日、東京のとある郊外で事件が起きた。


その事件とは2人で同棲をしているカップルのマンションに強盗が入り、カップルのうち、男は無事、助かったが、女は殺害されてしまうという陰惨な事件であった。


そして、これはひとりぼっちになった男の物語である。


その男は事件後、小さなアパートでバイトをしながら生活をしていた。そんな生活のため、余裕のある生活は出来なかった。しかし、男は暇があれば殺された彼女を思い出しては、写真などを見て、憂愁の感慨を味わっていた。


日毎に男の憂愁の感慨は深くなっていく。そして、男は過去を捨てきれず、昔、彼女と同棲していたマンションまで足を運んだ。

すると、一緒に住んでいたマンションの部屋は廃墟となっていた。


男は管理人に頼んで廃墟となった室の部屋まで入った。入室した瞬間、男はある物に目を留めた。それは種だった。男は

『あいつ、花とか好きだったかな~。』と独り言を呟き、自然とその種を持ち帰った。男は自分の彼女が栽培したがっていた花を自分で栽培することにより、心の落ち着きを保とうとした。


そして、植木鉢に種を植え、花が咲く日を心待ちにした。男は毎日、種を植えた植木鉢に水を与えた。そして、少しずつ、芽生え成長していった。


そして、4週間が経ったある日、男は植木鉢を見た。

そして、男はこう言った。

『何だ、、。花じゃないのか。』

男が言った通り、花ではなく、何か滑稽なものが小さく咲いていたのだ、、。


その日、以来、男は植木鉢に水を与えなくなった。でも、その滑稽なものはどんどんと成長していく。たまに、夜中に植木鉢の方から人の声が聞こえる事もあった。


そして、ある朝、男に『早く起きてよ。』と女の声で囁いてきた。男が目を覚ました瞬間、男は驚いてしまった。何故なら、目の前に居る女が、殺された男の彼女だったからである。


男は『何故。お前がここにいるんだ?』と驚きながらも聞いた。すると、男の彼女は『一緒に居れるから別にい~じゃん。』と返すと、更に、男は『お前、一番、最後に見た時よりも痩せたなぁ~。』と言うと、男の彼女は『あなたがちゃんと水をくれないからでしょ。』と言った瞬間、男は気付く、植木鉢の事を。


そして、男はすぐさま、植木鉢を見に行った。すると、植木鉢の中央の部分が人間が出たかのように丸い穴が残ってあった。


男は不思議さを感じながらも、歓喜した。

そして、2人は昔の様に同棲した。2人は毎日、色々な事を話した。


しかし、1日ずつ経つにつれ、男の彼女は早いペースで老化していった。男は彼女に

『お前、あまり、時が経っていないのに老けていってないか?』と聞くと彼女は

『仕方ないわ。私は植物だもん。』と答えた。

男は彼女の命が長くない事を感じた。

男は彼女が少しでも長生きするように、毎日、生温い水をかけてあげた。


それから、4週間後、男の彼女はもう会話が出来ない程の老婆になっていた。でも、男はずっと彼女を見守った。

そして、数日が経ったある日、彼女は小さな声で

『ありがとう。』と言って、息を引き取った。老衰による自然死だった。


植物の種類でも何千種類とある。そして、1種類で世界で1つしか咲かない植物がある。それは、男の彼女だった。男はその植物に彼女の名前をつけた。


いつの日か、その植物に出逢うために…。(終)

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