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独白。  作者: 周写楽
4/10

 朝起きて、出勤して、家に帰って眠っていても、一日中彼女のことが頭から離れませんでした。


 会社、自宅、街中。


 日中、どこにいても蔑むような眼で見られ、後ろ指を指されているような気がしてなりません。

夜は瞼の裏であの日の光景が明滅し、脳裏に焼き付いて眠れないのです。


 彼女をどこか遠く離れた山や海にでも捨ててしまおうか。

死体を持ち運ぶのにいつ、どこで、誰に見られるか分かったものじゃありません。

もし見られていなくても、いずれは誰かに掘り返される可能性は?

どこかの海岸に打ち上げられる可能性もゼロだとは言い切れません。見つかってしまえば元も子もないのです。


 それこそ推理小説やサスペンス映画のように、風呂場でバラバラに解体してしまう方がいいのだろうか。

しかし、人一人をバラバラに解体してしまえるほどの知識や道具。

ましてやそんなことが出来てしまえるほどの勇気や度胸。

そんなものを持ち合わせていないことは、自分が一番よくわかっています。


 そんなことを逡巡し、孤独と不安に押しつぶされそうな日々を過ごしていたある日のことでした。


 その日はいつも通り人目を避けるように帰宅して、真っ暗な部屋の中、沈み込むようにソファに腰掛け、月明かりを頼りに煙草に火をつけました。

煙を二口三口と大きく吸って、月を眺めながら余韻に浸っていると、肩にふっと淡く柔らかい重みを感じたのです。


 私は恐る恐る傍に視線を向けました。

彼女が私の肩に頭を預けるようにしなだれかかっていたのです。


 その日は、彼女と出会ったあの日のように月が青く綺麗な夜でした。

煙草が指の間ですべて灰になる程の間、私の意識は彼女に吸い寄せられていました。


 私には彼女の生前の仕草や表情なんてものは分かりません。

ですが、月明かりに照らされた彼女の表情は、まるで童話に出てくる眠り姫のように穏やかに微笑んでいました。


 そんな彼女を見ていると、一人の女性として意識せざるを得なかったのです。


 所謂、一目惚れでした。

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