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独白。  作者: 周写楽
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 いつもは気の向くままに出かけていましたが、今日という日は行く先を決めていました。


 家から少し離れたところに夜桜が美しい丘があるのです。ですが、そこは綺麗に整備されているわけでもなく、地元の人間しか知らないような、いわゆる穴場でした。


 実は以前、二人でその場所に訪れた時「こんな場所でプロポーズをしたら素敵だと思わないか」という話をしていたのもあり、今日という日にふさわしい場所だと思ったのです。


 丘に到着した私たちは、眼前に広がる夜桜の美しさに圧倒されていました。


 照明に照らされることはないものの、月明かりに照らされて青白く咲いている桜と目の前で行儀よく手をそろえている真黒いドレスを身にまとった彼女の対照的な風景に息を吞みました。ですが、すべてはこの日の、この瞬間のために準備してきたのです。ここで怖気(おじけ)付くわけにはいきませんでした。


 しばらく彼女と見つめ合った後、片膝をつき、彼女の手のひらに指輪を置いて、今まで胸の内に秘めていたものを、思いの丈をすべて打ち明けました。


 ──彼女はベール越しに微笑んでいました。


 私は指輪を持つ彼女の手を両手で包み込むように握り、彼女の傍でしばらく桜を見上げていました。



 帰る頃には、桜の花びらを散らすように大粒の雨が降り始めてきました。徐々に強まる雨音に耳を傾けながら安全運転で帰りました。


 助手席では慣れない服装での外出に疲れたのでしょう。指輪を大事そうに握りしめながら眠っている彼女の姿が見えました。私は彼女を起こさないようにそっと手を重ねながら、今までのことを振り返っていました。


 家に着いた私は、彼女をベッドに寝かせ、最期の準備をし、今この手紙を書いています。この手紙を残すのは、別にこれを読んだ誰かに覚えていてほしいとか、赦してほしいというわけではありません。

ただ、彼女との想い出を何かしらの形に残しておきたかったのです。


 それに彼女の返答がどうであれ、こうすることはずっと前から決めていました。


 この最期を選んだのは、決して私自身が楽になるためでもありません。彼女一人を残してしまうことが耐え難いのです。


 さて、これ以上彼女を待たせるわけにもいかないので、この手紙もそろそろ締めようと思います。


 今までありがとうございました。

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